
先日、ゼミの男子学生A君から、プロジェクトに関する報告電話があった。A君は用件が終わった途端、筆者よりも先に電話を切ったので、慌ててかけ直し「電話は、目上の人や上司が切る前に切ってはいけない」と教えたところ「あぁ、そうですよねぇ。バイト先ではちゃんとやってまぁ~す」と悪ぶれるふうもない。また、プロジェクトメンバーがそろって仕事をしているときでも、A君は1人だけヘッドホンを外さない。外すよう注意すると「俺、音楽あったほうがシゴトはかどるんで」と一言。周りでは重要な情報が飛び交っているにも関わらず、A君にとっては自分の仕事をやり遂げることが重要で、周囲の余計な情報は必要ないと考えているようだ。
彼の武勇伝は、まだ続く。彼を含む学生4人と食事に行ったときのことである。学生たちには日頃から「食事をごちそうになるときは3回、お礼を言いましょう」と大人社会のルールを教えているのだが、A君はここでもやらかしてくれた。
ちなみに3回のお礼とは、1回目は「会計の段になったときに席でお礼を言う」である。上司が「ここはいいよ」と言葉やジェスチャーでごちそうする意思を示すまでは、自分の財布を出して支払う素振りを見せるのがマナーだ。端から財布も出さず、おごってもらうモードを全開にするのはよろしくない。
2回目は「上司が会計を済ませて、店から出てきたときにお礼を言う」だ。間違ってもレジの数字をのぞき込んではいけない。レジ係が「お会計は2万円です。Tポイントカードはお持ちですか」と言ったのでお金とカードを出そうとすると、突然、A君が「Tポイントカードあります!」とグイッと自分のカードを差し出してきた。恥ずかしさを抑えつつ制するとA君は「2万円分のポイントがたまると思ったのに」と吐き捨てた。
そして、3回目は「上司を見送ったあとお礼のメールを送信する」だ。A君以外の学生からは、別れた直後にお礼メールが届いたのだがA君からは一向に届かない。翌日お礼メールの送信を指示したが、返事はするもののお礼メールが送られてくることはなかった。
実は、A君は成績優秀者で、身だしなみにも問題なくファッションセンスも悪くない。顔立ちもイケメンと言われるほど整っている。しかし、突然大声で叫び出したり、コンテストの休憩時間に「休み時間だから」とゲームに没頭したりするなど常識では考えられない行動を取ることがある。
最近、人の気持ちが読み取れない、オトナの発達障害が話題になっているが、A君もそうなのかもしれない。ただ、大学には内申書がないため、就活では本人が申し出ない限り会社側には発達障害のようなデリケートな情報は伝わらない。
もし、新卒採用の学生が発達障害だったら…。カンヨウニナルコト。呪文のように唱え続けるしかないのだろうか。