プロが伝える「飲料サービスの極意」
お客さまへの”心づかい”が重要
日本料理の食卓作法やサービスマナーの講師を務める日本料理マナー・サービス研究所の保田朱美さん(日本ホテル・レストランサービス技能協会日本料理テーブルマナー・マスター講師)に、旅館・ホテルや飲食業におけるサービスのポイントを聞いた。
──料飲サービスで心掛けておくべきことは。
「まず、料理についての基本知識を持っていないといけません。お客さまに料理のことを質問されて、いちいち板場に行って聞くようでは困りますよね。今、地産地消で、地場の食材を使った料理がよく出されますが、地元のものについて説明できるのはもちろん、味についても献立が変わるたびに試食をして、どんなものかを確認する必要があります。もし、お客さまから『うちは塩分控えめがいいんだよ』とか言われた場合は、『あっ、少し(塩分が)強いな』とか、すぐ板場に伝えるなどの連携プレーも必要です」
──サービスで最近、「乱れている」と感じることは。
「器ですね。器には柄がある方が正面とか、お出しする際の伝統的な決まりごとがありますが、無視されていることがあります。ただ、最近はそういう伝統を無視したような器がよくデパートでも売られているので、時代の流れで仕方がないのかなとも思います」
「日本では、食卓作法は神事から来ています。祝い箸(柳箸)の両端が細いのは、片方で神様が召し上がり、もう片方で私たちが神様からのお下がりをいただく、という神事に基づいています。そういう日本の伝統文化は時代が変わっても大切にしたいと思います」
──自分が旅館の宿泊客になった場合、接客係に求めるものは。
「心づかいですね。私はよく、気配りと心づかいは違うと、サービスマナーの講師をしている時に、生徒に伝えています。気配りは誰もができることですが、心づかいは教えてもできるものではないんです。方程式があるわけではなく、自分で生み出し、磨くものなんです。お客さまが求めるものは、お客さまごとにすべて違います。お客さまがいま、何を求めているかを即座に感じて、対応するのも心づかいのひとつだと思います」
──心づかいを磨くコツは。
「お客さまの情報を事前に知ることがひとつです。一度いらしたお客さまなら、以前に店でどんなことがあったかを調べて、再度来店された時にその時のことをひと言添える。そのひと言によって、お客さまの店に対する印象はぐっと変わるものです」