楽トラ前社長の挑戦
「手数料率5%」を今後も維持 宿と真剣に向き合うOTAに
──宿泊予約サイト「ベストリザーブ・宿ぷらざ」を運営するベストリザーブの代表取締役会長兼CEOに7月1日就任した。
「昨年の6月末で楽天トラベル社長を退任し、7月1日から今年の3月15日まで楽天の顧問をやっていた。途中の副社長時代も含めて13年間、楽天トラベルのトップとして経営に携わることができたことに大変感謝している」
──なぜベストリザーブなのか。
「社長交代の時期がきて、退任したわけだが、開発者として、経営者として急拡大する日本のOTA市場にずっと関わってきた。いま54歳。あと10年は十分第一線でやれる。これからも観光業界・宿泊施設様のお手伝いをしていきたいと思った」
「楽天トラベルの基本的な宿泊サイト機能は、私が日立造船情報システム時代に立ち上げた『旅の窓口』を継承したものだ。そして、ベストリザーブも旅の窓口から枝分かれしたサイト。つまり、基本設計は同じシステムだ。ライブドアなどにオーナーが何度か変わった会社だが、今回ご縁があって、私がオーナー経営者になった」
──どんなOTAを目指すのか。
「宿泊施設様の立場に立ったより良いサイト、より使いやすいサイトを目指し、宿泊施設様と真剣に向き合えるOTAにする」
──ベストリザーブが宿から受け取る手数料率は。
「OTA最低水準の5%。旅館もホテルも同率だ。これはサイトを開設した15年前から変わっていない。今後これを引き上げることも考えていない」
「東京と大阪の十数軒くらいだが客室の買い取りもやっている。世の中、お金を払わない仕入れというのはない。リスクを伴うが買い取りも続けていく」
──利用者に対するポイントプログラムは。
「BRポイントを1%付与している。これは施設負担ではなく当社負担だ」
──現在の契約宿泊施設数と今後の目標数は。
「約1万軒で、内訳はビジネスホテル50%、旅館35%、シティホテル15%。これを今後2年で3万軒まで増やしたい」
──宿泊予約以外で今後に取り組むことは。
「レンタカー予約、高速乗合バス予約を始める。いま開発を進めている」
──楽トラ時代にANA、JALと組んだ国内ダイナミックパッケージを開始し、実績も急伸させた。
「国内、海外ともにダイナミックパッケージには取り組むつもりだが、相手もあることだし、参入時期は明言できない。実はLCCのジェットスター航空のHPに対する部屋提供は既にシステム連動で行っている」
──インバウンド(訪日外国人旅行)対応は。
「いまは英語サイトもなく、対応していないが、アウトバウンド(海外旅行)も含めて3年以内に取り組む」
──スマホなどモバイル端末からの予約比率は。
「現状は20%弱と高くない。ビジネスホテル予約をPCから行うというユーザーが多い」
──ベストリザーブは11年12月に、日本旅行の宿泊予約サイト「宿ぷらざ」とサイトを統合した。この流れの中で、12年9月からJRと宿泊のセットプランも販売している。
「JR付商品は楽天トラベル社長時代からの目標の一つだった。今後さらにJR西日本グループとの連携を深め、利便性の高い旅行商品をサイト利用者に提供できるように努力していきたい」
──ベストリザーブの完成形のイメージは。
「旅行を総合的にプロデュースするOTAを目指している。レンタカー予約、高速乗合バス予約、国内・海外ダイナミックパッケージ、インバウンド、アウトバウンド、これらを3年以内にやる。その先に鉄道を使ったダイナミックパッケージの実現という夢も持っている」
「とはいえ、当社は営業もマーケティングもこれからの会社だ。現在社員数19人。一つの事業を立ち上げるのに半年位はかかるので、新規事業をいくつも同時進行させるにはマンパワー的にも無理がある。ひとつひとつ着実に積み上げていきたい」
【おかたけ・まさし】
54歳。龍谷大学経済学部卒、日立造船情報システム入社。96年1月、プロジェクトマネージャーとして「ホテルの窓口(後の『旅の窓口』)」を開発。02年8月楽天トラベル社長就任。13年6月退任。14年7月から現職。