【私の視点 観光羅針盤181】うち成功の秘訣? せとうち観光推進機構事業本部長 村橋克則


 せとうちDMOの成功の秘訣について話をしてほしい、という講演のご依頼をいただくことがある。正直、返答に困る。そんな秘訣があるならこちらが教えてほしいし、自分たちではまだまだ道半ばで成功しているという実感がないからだ。ただ、日本版DMOのフロントランナーと言われ、世の中からある程度ご評価をいただけているとしたら、このあたりが肝ではないかというポイントを三つほど挙げておきたい。

 1、成功の定義(ミッション、ビジョン、ゴール)を決めていること

 3年前に組織を立ち上げる際に、われわれは観光を通して何を実現するのか?どんな地域を目指すのかを明確にして、スタッフ全員で確認した(その後もことあるごとに確認し、軸がぶれないようにしている)。最終的に目指すのは「地域の自立的・永続的な成長」であり域内の「住民満足度」だ。

 そういう意味では、私たちの組織に完全な「成功」はなく、いつも「成功への途上」にいることになる(もちろんある一定期間の中での定量的な目標・スモールゴールをクリアしていくことは重要)。ご相談に来られるDMOや観光団体の多くは、このあたりが曖昧で、軸が定まっていない印象を受ける。「WHY(なぜ、DMOを作るのか?)」について突き詰めて議論することなく、「WHAT(何をやるのか?)」のみに目がいっていないだろうか。

 2、目指すところに沿った組織・機能がデザインできていること

 せとうちDMOは、せとうち観光推進機構と瀬戸内ブランドコーポレーションという二つの組織で構成している。前者が主にマーケティング(誘客・顧客創造の仕組み作り)、後者が観光関連ビジネスの拡大(交流人口増大をチャンスと捉える域内事業者の支援)を担っている。

 プロモーション一辺倒で、瞬間風速的な集客に終始していたこれまでの観光行政への反省を踏まえた組織体制だ。この両輪が機能することで、交流人口の増加をビジネスにつなげ、良質な商品・サービスを生み出し顧客満足を上げることで「地域の自立的・永続的な成長」を実現できる。

 3、やらないことを決めている(選択と集中)

 よその組織と比べると、せとうちDMOは事業の数が少ない。極論すれば、欧米を対象にしたマーケティング活動とプロダクト(商品・サービス)開発の支援の二つだけだ。サボっている訳でも楽をしている訳でもない。限りある資源を分散させずに、最重要なことに集中投下しているのだ(なので、それぞれの事業の中身は濃い)。

 ステークホルダーが多く、あれもやってほしいこれもやるべきだという声は少なくはない。しかし、全てに対応していては大きな成果は見込めない。だから絞る。集中する。それができるのも、自分たちのやるべきことの軸がはっきりしていて、優先順位がつけやすいからだ。

 総じて、どれも当たり前のことだ。「成功の秘訣」なんてものはどこにもなくて、当たり前をひたむきにやり抜くことでしか成功には近づけないことに気付かされる。

(せとうち観光推進機構事業本部長)

 
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