【私の視点 観光羅針盤 155】小さな村の底力 清水慎一


 不順な天候が続く中、奇跡的に晴れ間が広がった7月6日、北海道鶴居村でNPO法人「日本で最も美しい村」連合総会が開催された。2008年に連合に加盟した鶴居村は人口2500人ほど。特別天然記念物タンチョウと共生する、自然豊かな酪農地域だ。

 加盟町村・地域の代表230人やサポーター企業の参加者は、まず歓迎行事「タンチョウソーラン」を楽しんだ。青空の下、鶴居村総合センター前庭の芝生で繰り広げられる鶴居小学校児童の踊りは実に伸び伸びとしていて、小さな村の息吹、心意気を感じさせた。

 総会は、連合の創始者で、昨年亡くなった松尾雅彦さん(カルビー元社長)に対する黙とうで始まり、浜田哲会長(北海道美瑛町長)による力強いあいさつで幕が開いた。初めて総会に参加した筆者は、その場で理事に選任された。

 「日本で最も美しい村」連合は、05年に松尾さんの発議に基づき美瑛町など7町村により「フランスの最も美しい村」協会をモデルに発足した。7町村は、国が進めてきた市町村合併を拒み、地域の誇りを守ろうとしてきたところばかりだった。

 その目的には、「失ったら二度と戻せない日本の農山村の景観や環境、文化を守り、将来にわたって美しい地域を守り続けることで、地域資源の保護と地域経済の発展に寄与するとともに自然環境の保護に寄与する。」(定款第3条)という高い志を掲げている。

 現在は人口1万人以下の町村・地域63が加盟する。美しい景観に配慮したまちづくりや住民による工夫した地域活動、地域特有の生活様式を頑なに守っているなどの厳格な評価基準による審査を経て、加盟を承認された地域だ。

 しかし、連合加盟自治体といえども、急速な人口減少、高齢化の影響をもろに受けている。美しい地域を守り続けることを、いかに観光的付加価値などにより地域経済の発展を図り、自立した地域づくりにつなげていくか、苦闘しているのが現状だ。

 筆者は、小さな村の自立には農林漁業などの生業や地元に伝わる伝統文化、さらには住民の元気な活動を基軸にした多様で生き生きとした交流スタイルの確立こそが重要だと考える。幸い、高い志と強い自立意識に支えられた加盟地域には交流をもっと活発にする下地は十分にある。

 「連合の最大の特徴は、加盟地域の活動資金が国などの補助金ではなく、企業などのサポーターと住民により賄われていることだ」(加藤俊宣理事「農業経営者」18年6月号)という原点に立ち返って、加盟地域の新たな飛躍に大いに期待したい。

 新任理事として、微力ながらその底力を自立につなげるお手伝いをしたい。

(大正大学地域構想研究所教授)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒