【私の視点 観光羅針盤81】観光関連の流行語大賞は 安田 彰


 今年も新語・流行語の大賞が決定した。その発表を聞くと師走になったと実感する。同時に大賞やトップ10に選ばれた言葉を改めて反すうすると、いかにもこの1年を象徴していると感じる。

 大賞獲得はともかくとして、トップ10入りした言葉を見ると、立場上なのか、観光や旅行関係の言葉が目につく。今年は「聖地巡礼」や「ポケモンGO」、特別賞の「復興城主」などである。

 解説するまでもなかろうが、「聖地巡礼」とは映画「君の名は。」に見られるように映画やアニメの舞台になった土地にファンが押しかけることを言う。「復興城主」とは地震で崩壊した熊本城の復興支援金を1万円以上支払うと名目上の城主になれるという仕組みである。

 昨年であれば大賞に選ばれた「爆買い」が記憶に新しい。ただ今年はそれも一段落、中国人観光客の買い物も落ち着きを見せつつある。

 一昨年はご記憶にあるかどうか、「絶景」が話題となった。「死ぬまでに行きたい世界の絶景」がアマゾン総合ランキング1位になったことを受け、その「日本編」が話題となった。

 その前の13年は三陸鉄道復興もあって「あまちゃん」の「じぇじぇ」と滝川クリステルの「おもてなし」が堂々の大賞となった。12年はLCC(格安航空会社)や東京ソラマチがトップ10入り、大震災のあった11年は「絆」と「風評被害」であった。

 こう見てくると、私たちの生活に旅や観光がいかに深く関わっているかがよくわかる。芸能やスポーツ関連の流行語がややもするとその年だけの一過性に終わりがちなのに対し、ここに取り上げた新語や話題性の強い言葉は「LCC」や「風評被害」のように社会に定着したり、「爆買い」や「聖地巡礼」のように市民権を得て持続したりするものが少なくない。

 ここ5、6年の流行語を追ってみても、震災やその復興へかけた私たちの取り組み、東京五輪・パラリンピック開催へ向けた強い思い、急伸するインバウンドへの注目、そしてLCCの出現や若者たちの生み出す新しい文化への動き等々、時代の着実な変化が読み取れる。

 長い景気の低迷により国内旅行も伸び悩んではいるものの、旅が人々の営みに欠かせぬ大切な構成要素となっている証といえよう。経済効果ばかりではない多様な「旅の力」を改めて考えさせられる。

 そんな中、IR(統合型リゾート)設置を目指すカジノ法案が動き出した。賛否両論真っ二つ、今後の動きが注目されるが、果たして来年の大賞を獲得するかどうか。

(亜細亜大学教授)

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