【焦点課題】農林水産省 農村振興局 都市農村交流課長  荻野憲一氏に聞く

  • 2021年5月18日

萩野氏

農泊推進の取り組み

全国に554の「農泊地域」 新規にワーケ対応など

 ――課として観光との関わりをどう捉えているか。

 「国土全体の発展を考えた時、東京など大都市への一極集中はリスクが高く、現在のコロナ禍はそれを証明していると思う。是正するには田園回帰が重要であり、それを進めるには農山漁村の地域資源を活用した観光振興が欠かせない」

 「観光立国推進基本計画で『農山漁村滞在型旅行(農泊)をビジネスとして実施できる体制を持った地域を創出し、2020年までに500地域を目指す』との目標が示され、受け入れ態勢の整備に努めている」

 「具体的には宿泊、食事、体験の三つを提供できる形を備えていること。宿泊を提供することで旅行者の地域内での滞在時間を延ばしつつ、滞在中に食事や体験など地域資源を活用したさまざまな観光コンテンツを提供して消費を促すことで地域が得られる利益を最大化するのが狙いだ」

 ――農泊推進体制は。

 「農家や宿泊業、旅行業、市町村などで作る『地域協議会』に対して、農泊推進対策である農山漁村振興交付金による支援を行い、体制作りを進めている。20年度末時点で目標を上回る全国554の農泊地域(協議会)が採択されており、47都道府県全てにおいて農泊の取り組みが展開されている。農泊の延べ宿泊者数は19年度で589万人泊となり、17年度と比べ約1・2倍増えている。インバウンドは約38万人と全体に占める割合は小さいものの、着実に伸びている」

 ――宿泊施設の状況は。

 「例えば、国が支援して整備した古民家は17年度で16軒にすぎなかったが、19年度には100軒と大幅に増加。個人旅行者のニーズに対応した農家民宿の数は17年度の3175軒から19年度は3715軒と1・2倍ほど増えている」

 ――21年度の施策は。

 「農山漁村振興交付金については、21年度予算案に98憶円を計上。その中に『農泊地域高度化促進事業』として、ワーケーション対応と高付加価値対応(食・景観)―の二つを新たに盛り込んだ」

 「ワーケーション対応はコロナ禍でマイクロツーリズムやリモートワークの目的地として農泊へのニーズが高まっていることを踏まえた施策で、Wi―Fi整備や受け入れ施設に導入する机や椅子、感染対策としてのアクリル板設置、企業向けのPR費用などを対象に環境整備費の半額を助成する」

 「また、高付加価値対応は地域の食や景観を生かしたコンテンツ開発等の費用について半額助成する。地元食材を活用した食事メニューや農業遺産などを活用した体験プログラムの開発のための費用などが対象。ワーケーション、食、景観のうち、1項目取り組む場合の国費による助成額は上限100万円、2項目以上取り組む場合は同150万円となる」

 ――具体的な事例は。

 「ワーケーションについては宮城の蔵王農泊振興協議会、長崎の雪浦ニューツーリズムなどがある。蔵王の場合、無線LANやリビングなどを備えた空き別荘を民泊に活用しており、コロナ禍の中で、昨年4月から8月にかけて、ワーケーションを目的で6組(計340人泊)が滞在した実績を上げている」

 ――教育旅行で農泊は大きな役割を占めているが、感染防止対策は。

 「日本ファームステイ協会や都市農山漁村交流活性化機構が農泊独自のガイドラインを作っている。手指消毒や検温など一般的な対策に加え、宿泊、食事、体験それぞれのガイドラインの内容を網羅し、高齢者の経営者にも使いやすいようチェックリストの作成や研修も実施している。コロナ禍にあって教育旅行の受け入れを工夫している農泊地域もあり、三重県鳥羽市や春蘭の里・里山ステイ推進協議会(石川県能登町)では実績を上げている」

 ――農泊推進のためには受け入れ先が安心して事業を営めるようにする環境作りも重要だ。

 「宿泊費をとって安定した営業ができることが重要と考えている。このため、ハード対策の一環として、20年度より旅館業法の営業許可取得を促進するための後押し支援を実施している。具体的には国費で施設整備費の半額を助成することに加え、1経営者当たり最大100万円を追加支援し、施設整備に係る自己負担分への充当のほか、農泊推進に係る幅広い利用が可能となっている。支援件数はまだ少ないが、各地域でぜひ活用していただきたい。このほか、都市部の企業に対し、企業版ふるさと納税などを通じて農泊を応援してくれるよう働きかけていく方針だ」

(参考URL=https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/nouhakusuishin/nouhaku_top.html

おぎの・けんいち=東大農卒。1991年農林水産省入省。設計課技術調査官、地域振興課中山間地域・日本型直接支払室長などを経て、2020年8月から現職。兵庫県明石市出身、52歳。

【聞き手・内井高弘】

     
 
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