【日本茶インストラクターが勧める 素敵なお茶生活 12】ツバキ科の植物 繁田聡子


 茶の木は、ツバキ科ツバキ属の常緑樹で、学名をカメリア・シネンシスと言います。椿や山茶花(さざんか)と同じ仲間です。椿の葉とお茶の葉は、緑が濃く肉厚でよく似ています。

 茶は大別して「緑茶」「紅茶」「ウーロン茶」の3種類がありますが、その違いは加工方法によるものです。つまり製造方法が違うだけで元は同じ茶の木からできているのです。

 同じ木といっても寒さに強く葉が小さい中国種の灌木(かんぼく)と、寒さに弱く葉の大きいアッサム種の喬木(きょうぼく)に大別されます。中国小葉種は緑茶の製造に向き、アッサム種(インド大葉種)は紅茶の製造に適しています。

 「緑茶」の製法は、まず生葉に熱を加え、酸化酵素の働きを止めて緑色を保たせます。加熱の方法としては、蒸気で蒸す方法と釜で炒る方法の二つがあります。日本では、蒸気で蒸す製法がほとんどで、この蒸し時間の長さの違いで、普通煎茶と深蒸し煎茶とに分類されます。

 一方、釜で炒る製法は佐賀、熊本、宮崎の各県の一部で行われているくらいです。

 平成29年に熊本の茶工場に見学に行った折、片隅に釜が置いてあり、職人さんが「釜炒り茶を製造できるのは自分1人です」と製造工程の説明をして下さいましたが、香気があり、さっぱりした風味で捨て難い魅力のあるお茶です。まったりとした風味が苦手な方や脂っこい食事の折にお勧めしたいお茶です。

 中国の緑茶は釜炒り製法で作られていて、生産量も消費量もウーロン茶より多いことをご存知ですか。10年ほど前でしょうか、「中国緑茶が日本に上陸」と釜炒り緑茶のペットボトルのコマーシャルが盛んに流れた記憶がありますが、程なく市場から消えてしまったようです。どうして売れなかったのかなといまだに気になっています。

 一方、「紅茶」は茶の葉の酸化酵素を十分に働かせて製造します。カテキン類を酸化させたお茶の水色は紅色です。緑茶のgreen tea に対して 紅茶をblack tea と言うのは、外観上黒っぽく見えるからでしょうか。そういえば、「おにぎりには紅茶(無糖)が合う。元々緑茶と同じ木でできているのだから」なんて言う紅茶のペットボトルのコマーシャルもありましたね。

 また、「ウーロン茶」は生葉の酸化酵素の働きを途中で止めて製造します。酸化酵素の働きの程度からいえば、緑茶と紅茶の中間に位置するお茶です。

 日本で生産されるお茶はほとんど「緑茶」ですが、世界で生産されるお茶の約8割は紅茶です。

 最近、日本茶の品種で紅茶を作る生産家が増えてきています。入間市(埼玉県)の長谷部氏が工夫を重ね、やぶきた種で作った紅茶を飲みましたが、なかなかの味でした。「和紅茶」ブームが起きつつあるのかもしれません。

 
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