【日旅連総会特集】日本旅行 副社長 小谷野悦光氏に聞く

  • 2021年3月4日

日本旅行代表取締役副社長 小谷野悦光氏

最大のピンチを最大のチャンスに

 新型コロナウイルスのパンデミックで旅行業界はかつてない試練の時を迎えている。日本旅行も例外ではない。今年1年の取り組みと、現状を踏まえた中長期的施策を小谷野悦光副社長に聞いた。(聞き手=本社・森田淳)

 

 ――新型コロナウイルスで旅行業界が大きな打撃を受けている。御社の昨年からの対応は。

 小谷野 経営上の緊急対策に本格的に取り組み始めたのが3月下旬からだ。対策本部会議は1月下旬から行っており、当初はお客さまの安心安全のためにどう注意喚起をするか、という取り組みだった。その後、感染が深刻化するにつれ、今後の会社経営をどうするかという危機管理の段階になった。

 相当の覚悟をしなければとの意識があった。私自身は2008年のリーマンショック、09年の新型インフルエンザ、そして11年の東日本大震災を経験しており、危機に対しての取り組みを会社の中で経験してきた。リーマンも震災も100年に1度の事態といわれたが、近年は100年に1度が毎年来るような状況になった。だが、今回のコロナ禍は100年に1度どころではない。今までは厳しい経営環境の中でも、われわれがビジネスをできる場所があったのだが、今回は世界のどこにおいても旅行業が成立しない状況となった。

 私どもは今年で創業116年になるが、過去をひもとくと昭和16年から8年間、戦争でいったん営業を停止している。去年なり、今の状態は、当時と同じぐらいの危機的状況だ。

 まず、お客さま、社員がコロナにかからないことを考えた。そして、収入がゼロという状況の中で最大限雇用を守り会社を存続させるために自分たちが何をすればいいのか。参考になる事例がない中で、考えなければならなかった。

 営業的な目線で、今年と来年、われわれはどう対処すれば経営を維持できるのか、社員それぞれが仮説を立てて考えた。答えを会社全員で共有したわけではないが、できるところから実行し、成果を上げたところもあった。

 感染のリスクがあり、やみくもに行動するのは得策ではないと、在宅勤務やリモート営業を積極的に進めた。

 昨年の組織改正で「MaaS事業推進本部」とともに「デジタルイノベーション推進本部」を新設した。立ち上げの際、DX(デジタルトランスフォーメーション)は少し時間をかけながらと思っていたのだが、コロナ禍で必要に迫られ、一挙に進めた形だ。

 お客さまの価値観が変わった。今までは「大切なお客さまには直接訪問しなければ」「リモートで済ますのは失礼だ」という価値観があったのだが、今は逆にリモートでなければ話を受けてくれないところがある。お客さまの新たな価値観に対応しなければならない。

 

 ――昨年スタートした新中期経営計画「TRANSFORM2025」は、コロナ禍で見直しは。

 小谷野 現在、まさに見直しの作業を進めているところだ。3月中に概要を発表するべく準備を進めている。最大のピンチを最大のチャンスに変えていきたいと考えている。

 新中計を考えた当時は、当然、新型コロナを想定していなかった。今回、コロナ禍を受けて、世の中やお客さまの志向の変化を、それが一時的なのか恒久的なのかも含めて、しっかりと見据えて対応する。

 少し具体的に言えば、法人営業的なものがしっかり行える、あるいはインバウンドやグローバルのビジネスが今後さらに活発になる、という前提で立てた計画を、現実を見据えた形に変える。

 DXは、まず仕事を行うための基盤整備。次にサービスレベルやビジネスモデルを今まで以上にどう進化させられるかだ。

 旅館など施設さまとのやり取りも、まだ電話やファクスの利用が多い。直接お会いしてももちろんいいのだが、年1回お会いするよりも、月に1回ぐらいリモートでお互いの顔を見ながら会話をした方がお互い親密になれるのではないか。

 JRの「ウェブマル契」や航空会社の「新IIT」など、旅行会社に対する新しい仕組みもできる。われわれはそれぞれに対応して終わりではなく、全ての仕事の仕組みを根底から、この1~2年をかけて見直す。

 19年12月に宣言したSDGsの取り組みは、具体的な行動を推し進める。持続可能な取り組みを地域の皆さまと進めたい。これは次なるトレンドになるはずだ。

 コロナ禍で世の中が相当変わっている。まずはその中でわれわれがどう生き残るか。抜本的な構造改革の実行とその段階を乗り越えてからどう飛躍をするかだ。

 

 ――いつまでがウィズコロナで、いつからがアフターコロナかの想定は。

 小谷野 難しいところだが、来年まではある程度影響を受けていると見るのが現実的だ。ワクチンなど、感染症対策の有効性が見極められるまでは絶対大丈夫とは言い切れないだろう。ただ、多少の影響があったとしても、いつまでも手をこまねいて見ているわけにはいかない。

 2023年を一つの目安にして、戦いに出るとのイメージだ。

 

 ――まずは今年を乗り切るために、優先的に行うことは。

 小谷野 当面はGo Toトラベル事業に的確に対応すること。お客さまにストレスなくご利用いただくことをマストに考える。その中で親会社であるJR西日本への貢献も含めて、鉄道利用を意識した商品造成を進める。

 中計のキーワードの一つに非旅行業領域も含めた新たな事業展開がある。今年の1月1日付で「事業共創推進本部」を新設した。16年に立ち上げた「地方創生推進本部」、そして昨年からの「MaaS事業推進本部」「デジタルイノベーション推進本部」も非旅行業領域拡大の象徴だが、いずれもそれぞれの専門分野を極めることを命題としている。

 今回の「事業共創推進本部」は、会社の中で非旅行業領域の拡大をリードするけん引役を担う部署だ。案件をお客さまから「いただく」のではなく、新たに「創り出す」ことがミッションだ。

 新たな挑戦が求められる現状、当社においても企業の枠を超えたサービスを創造することが必至であり、異業種のリソースや見地を取り入れることで新たな発想やサービスを創造することに今年以降注力する。

また、従来の観光業の延長線上にも、新たな事業が生まれる可能性がある。先ほどのSDGsをテーマにした取り組みはその切り口になるだろう。

 

 ――Go To事業には世間からさまざまな評価がある。

 小谷野 われわれ旅行業や宿泊など観光事業者に限らず、地域全体がコロナで傷ついている。Go To事業についていろいろな意見があったが、観光産業にフォーカスが当たったことで置かれた状況の理解が進んだと思う。同時に、感染症対策の取り組みと合わせ、われわれ観光産業が国や地方の経済にどれだけ貢献しているかといった客観的で体系立った分析を示す必要がある。確たる論拠に基づいて話をすれば、若い人も含めて世間に理解してもらえるはずだ。

 

 ――日旅連会員へメッセージを。

 小谷野 未曽有といえる危機でも、私たちは生き残らなければならない。「大変だ」と言っているだけでは何も始まらない。困難を脱し、次にジャンプアップをするための具体的取り組みを、お互い考えていきましょう。

 

日本旅行代表取締役副社長 小谷野悦光氏

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