【地方再生・創生論 220】スポーツで町おこしに取り組む自治体 松浪健四郎

  • 2021年7月8日

 スポーツ施設を造って、合宿などで多くのチームを招く町おこしは各地にある。かつて長野県の菅平高原はラグビーの聖地とうたわれるほど有名だったが、昨今、北海道の網走市に食われている。まず高度治療のできる病院があること、芝生のグランドが多数あること、宿泊施設が整っていること等、網走市は他地域を寄せつけず、夏の観光の目玉としている。

 市役所内には、全国のラグビーチームを招くための人材がいる。練習試合も各チームにとっては大切なため、どんなチームが網走市に来るのかの情報が求められる。そのマッチングも必要で、社会人、大学、高校の強豪チームがオホーツクの網走市を目指す。市は補助金を出したり手厚い協力をしている。水谷洋一市長は、情報を入手すれば、すぐ実行の手腕家。改革のスピードはピカイチだ。

 バスケットボール、ハンドボール、ソフトボール等、自治体が力を入れて町おこしにスポーツを利用しているところもあるが、全国的にその存在を知られるまでには至っていない。水谷洋一市長に負けないくらいのバイタリティ持つ市長が、四国の徳島県阿南市にもいた。岩浅嘉仁前市長で、私と新進党、自由党時代の同志だ。

 岩浅市長は2010年に市役所の正規のセクションに「野球のまち推進課」を創設、マスコミを驚かせた。まさに市の顔となるセクション、阿南市の町おこしの主役が野球だと宣言した。私の手元に「野球のまち阿南をつくった男」(大学教育出版)なる本がある。著者は初代課長の田上重之氏である。読み進めていくと、「地方再生・創生」のアイデアが満載でバイブルともいえる著作だと悟る。

 特筆すべきは、田上重之課長は、身体障がい者であるにもかかわらず、野球と取り組んだのだ。宿泊観光客ゼロだった阿南市なのに、野球だけで年間の宿泊客数は5千人、日帰り客は6千人で経済効果は約1億3030万円というから、「野球のまち推進課」の活躍と貢献は想像以上であろう。市は屋内練習場も造り、どんなチームが訪れても対応できる施設を持つ。ともかく話題性十分の事業であろう。

 NHKのサンデー・スポーツも報道するくらいだから、全国の野球好きの人たちにも伝わる。市の産業部に配置された「野球のまち推進課」は、スポーツツーリズムの波に乗ってPR効果を生み、存在感を示すようになる。国土交通省の「スポーツツーリズム・コンベンション」でも発表され、観光庁幹部も注目した。

 高校野球児の聖地が甲子園なら、阿南は草野球の聖地にしようと努力された様子が本に書かれていた。少年野球全国大会、西日本古希軟式野球大会、身体障がい者野球大会、500歳野球大会、長時間野球大会等の誘致と開催、野球場が使用されない日がないくらいの多忙さだ。日本人の野球好き、全国にある無数の野球チーム、これらをまとめて阿南市に呼び込もうとしたアイデアに頭が下がる。

 また、女子プロ野球の公式戦、プロ野球マスターズリーグ戦、東京6大学オールスター、日本宝くじ協会のドリーム野球大会等のイベント事業にも積極的に対応し、開催する。審判員や放送記録員を市民の中から養成して、きちんとした大会運営を行う。場内アナウンスつきの試合、選手たちにすればしびれるに違いない。婦人会の女性たちは、合宿に来たチームのお世話をしてくれるというから、町ぐるみの野球推進課だといえる。

 そして、地元の県立富岡西高校が、2019年のセンバツに21世紀枠で出場、阿南市が盛り上がる。野球の町・阿南の面目躍如、優勝校の名古屋の東邦高に小差で敗れたものの、市民が一体になった効果は大きかったといえよう。

 さらに、野球を通じてモンゴルや中国との国際交流も盛んになり、地方自治体でありながら活発な動きをみせる。野球という身体文化財によって、予想を超す発展が現実のものとなったが、岩浅嘉仁市長と田上重之課長の歯車がきちんとかみ合っていたからうまくいったと読める。やはり地方でも人材次第という印象を持った。

 
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