先日、また行ってみたい、と思えるお店に久々に巡り合った。表参道のタイ料理店「タヒチ」だ。根津美術館近くの閑静な住宅街に位置し、迷路のような細い路地裏に入って行くと、突如として白い一軒家が現れる。アクセスが良いとはいえないのに、満員の盛況、人気のほどが分かる。会食にお誘いいただかなければ知らなかった。南国リゾートをイメージして作られたから、店名が「タヒチ」らしい。
今回は、白ワインに合うというテーマでアラカルトのおススメ料理を選んでくださった。最初の一品は「あぶり帆立のレモングラスソース」。大きな帆立貝柱がミディアムレアに炙られ、特製レモングラスソースで仕上げてある。「レモングラスは、召し上がりやすいように細かく刻んであります」とサービスの女性。世界三大スープの一つとされる「トムヤムクン」に欠かせないハーブ、レモングラスは、確かに繊維が強く結構硬いので、細かくないと口当たりが悪くなる。このソース、パンチが効いたピリ辛ながら、うまみもあり香りも爽やかで、クセになる味だ。帆立のジューシーさ、香ばしさと相まって、超美味♪ 冷えたシャブリが、唐辛子で火照った舌に優しい。う~ん、完璧!
続いて、青パパイヤのサラダ「ソムタム」。ソムは酸っぱい、タムはたたくという意味で、本場タイでは臼を使ってたたき潰しながら味をなじませる。なので、千切りにした青パパイヤに潰したトマトやニンニク、干しエビなどが混ざっている感じ。だが、同店の盛り付けは、パッと見ソムタムに見えない上品さ。皿のように敷いたチコリの上に、1人分ずつのソムタムが載せてあり、上に小口切りの青唐辛子と刻んだトマトが飾られ、白・緑・赤と彩りも鮮やか。横に添えられた胡瓜のスライスで辛さを調整するそうだが、辛過ぎず優しいお味。
お次はタイ風春雨サラダ「ヤムウンセン」。ヤムは和える、ウンセンは春雨を意味する。コレは大好物で自分でもよく作るが、サスガにプロの味。タイ料理の要とされる、酸味、甘み、辛み、塩味、うま味が見事に調和して、むちゃウマイ。
そして同店一番人気という「ポークのタピオカ包み」。バイトゥーイという天然ハーブで色付けした、奇麗な翡翠(ひすい)色のタピオカの粒々で、甘辛く炒めた豚ひき肉餡(あん)を、一つずつ手で包み、丸く形を整えて蒸すそうだ。モチモチ食感で、手間が掛かっている分美味。
この後は、各自食べてみたい料理を申告。6人全員一致で注文したのは、生春巻き「ポピア・ソッド」。ここでチョットおさらい。生春巻きって、どこのお料理でしょうか? 実は、タイ料理ではなくベトナム料理。タイでも人気料理となったが、本来「ポピア・ソッド・ユアン」と呼ぶそうで、ポピアは春巻き、ソッドが生、ユアンはベトナム風を意味するらしい。つまり、タイ人にとっては「ベトナム風生春巻き」というワケ。
タイとベトナムの生春巻きの違いや、同店のこだわりなど、続きは次号で!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。