【令和時代における交通インフラの人材採用50】7割のバス運転手が誇りを感じています 女性バス運転手協会代表理事 中嶋美恵


 現在、当社は厚労省の人材採用支援プロジェクトを日本バス協会から受託しています。正式名称は「厚生労働省委託就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業バス運転手就職サポートプロジェクト」で、通称「バスジョブ!」です。就職氷河期世代の方(35~54歳で離職中または正規雇用経験がないなどの諸条件に当てはまる人)に大型二種免許取得の上、バス事業者に入社していただくというもの。同世代の方を正社員として就職~定着へ導き、人材不足に悩む業界の採用支援をすることで、個人と業界の双方を救済するというスキームです。11団体が参画しており、その中の1団体がバス業界です。

 プロジェクト生に応募した人のプロフィールシートのメッセージ欄を見ていると、目頭が熱くなるものが多数あります。「これまで非正規でしか働いたことがありませんが、プロジェクトを機に憧れのバス運転手として働けるなら、人生を変えたい! 世の中の役に立ちたい! 人々に喜んでもらえる仕事をしたいです!」と、熱い長い文面がつづられています。バス業界を良くすることはもちろん、個人のこれからの人生をお預かりしているのだと思うと、当社のミッションの重要性を改めて強く感じずにはいられません。

 日本バス協会が現役バス運転手に行ったアンケートでは、なんと7割もの運転手が「バス運転手という職業に誇りを感じている」と回答しています。バス運転手は公共交通機関、災害時の代替手段、人々の生活に寄り添う交通インフラ、都市と都市を結ぶ一次交通であり、観光産業に欠かせない足でもあります。日本の経済を支えていると言っても過言ではありません。そして何より、お客さまから「ありがとう」と感謝の言葉をいただける職業です。

 何らかの理由で一度バス業界を離れても「またバスの運転がしたい」と戻ってくる人が多く「いつかバス運転手になるのが夢だった」と中高年になってからチャレンジする方も最近特に増えています。決して派手な職業ではないかもしれませんが、バス運転手の存在価値は不動であるといえます。

 自動運転の技術が進むとこの職業はいずれ消滅することになります。あと20年、いや10年、5年ではという有識者もいらっしゃいますが、最後の1人が引退されるその日まで見守りたいと考えているのは恐らく私だけではないはずです。

 (リッツMC代表取締役社長兼女性バス運転手協会代表理事)

 
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