弘南鉄道は青森県のローカル私鉄で、弘前市を拠点に弘南線と大鰐線を有します。百年近い歴史を誇る老舗ですが、近年は脱線事故やレール摩耗による運休などが発生し、今年1月に国土交通省から改善指示を受けるに至りました。
規模の小さな地方私鉄ですから、もとより経営状況がいいはずもありません。心配になり、5月の連休明けに訪れてみました。
まず、弘南線。JR線も発着する弘前駅を起点に、津軽平野に点在する町を結びながら、小さな城下町、黒石までを走ります。近代的な弘前駅ホームを出発すると、車窓には新緑の田園地帯が広がります。
遠くに望む、雪をかぶった岩木山の美しいこと。速度は遅く、そのわりによく揺れ、確かに保線には課題がありそうですが、のどかな旅を楽しめます。30分ほどで到着した終点黒石駅の近くには、ご当地グルメの焼きそばの名店が待っていました。
続いて、大鰐線。弘前駅から少し離れた中央弘前駅を起点とし、津軽の奥座敷・大鰐までを結びます。中央弘前駅のターミナルは猛烈な昭和レトロで、弘前駅と好対照。中心市街地に接する立地ですが、人通りは多くありません。
出発すると、しばらくは住宅街を走り、やがて左右から山が迫ってくると、終点・大鰐。駅舎のレトロ加減では、中央弘前駅に負けません。付近は温泉地として知られ、少し歩くと立派な日帰り温泉施設で入浴が楽しめます。
どちらの列車も2両編成で、東急電鉄の中古車両を使っています。ロングシートですが、景色を楽しみながら乗っていると、終点にはちょっとした観光地が待っていて、観光路線としても悪くありません。
ただ、採算的には厳しく、両線とも沿線自治体の支援を受けながら運行を継続しています。
利用状況は、弘南線が年間120万人程度とまずまずですが、大鰐線は40万人程度と、やや厳しい状況(19年)。実は、大鰐線の支援が決まっているのは25年度まで。それ以降については、23年度までの状況を基に協議されるそうです。
弘南鉄道はJR東日本と技術支援に関する協定を締結。これから、保線状況の改善を図っていくそうです。
乗り心地を改善して、より安全で使いやすい地方私鉄として、これからも走り続けていくことを願いたいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)