「共創と加速」が重点テーマ  JTB取締役常務執行役員 エリアソリューション事業部長 森口浩紀氏に聞く


JTB取締役常務執行役員 エリアソリューション事業部長 森口浩紀氏

観光地の面での活性化を推進

 ――22年度の取り組みは。

 「中期経営計画の現在のフェーズでは、会社としては『回復と成長』というテーマだが、エリアソリューション事業は新しい事業分野のため、『開発と成長』をテーマに事業を推進した。三つの事業領域があり、観光地デジタル化支援領域では、さまざまなデジタルソリューションの提供で、導入事業者数、導入自治体数の拡大に注力した。観光地整備・運営支援領域では、グループ内の連携強化により、ふるさと納税領域や商事領域の拡大に努めた。旅ナカコンテンツ提供領域では、地域の魅力向上に向けたコンテンツの拡充、ケイパビリティ(企業の組織的な能力)の獲得と推進スキームの確立に取り組んだ」

 ――観光地デジタル化支援領域の具体的な取り組みは。

 「21年度に開発した一元的に予約、決済などが可能になるソフトウェアサービス『Tourism Platform Gateway』では、共通券の作成を通じた地域での周遊を促進するとともに、導入拡大に向けたユーザーインタフェース基盤の開発、インバウンドの需要回復を見据えた多言語対応の追加開発を進めた。旅ナカ事業者向けのソリューションでは、JTB BOKUNにおけるアクティビティコンテンツ、施設の入場チケットを多様なルートで販売できるGFJチケットプラットフォームにおけるチケットコンテンツの営業に注力し、導入実績は21年度末の2077事業者から3709事業者に拡大できた。GFJチケットプラットフォームは10月から、クーポンの金額入力・発券を電子化する団体向けの新機能もリリースした」

 「地域共創基盤としては、6月に包括連携協定を締結した九州エリアをはじめ、自治体、DMOへの提案を推進し、データ基盤の導入件数は21年度末に比べて150%超となった。また、データ連携・分析をはじめとした導入後の伴走支援によるデジタルマーケティングの強化に取り組んでいる。宿泊事業者向けのソリューションについては、多言語での情報発信・コミュニケーションツール『Kotozna In―room』の導入拡大を進めた結果、トライアル中を含めた導入客室数が約2万8千室と21年度末の5倍を超えた。21年度から実証を進めてきた宿泊施設のPMSと、自動チェックインなどの宿泊施設向けの複数のマイクロサービスを連携させる『JTBデータコネクトHUB』も11月に正式リリースした」

 ――観光地整備・運営支援領域については。

 「ふるさと納税領域では、個人版ふるさと納税の契約自治体における納付額の最大化に向けた取り組みの強化と有力な自治体への新規獲得営業の推進に注力した結果、寄付額は21年度に比べて120%を超える成果につながった。商事関係では、宿泊施設のアメニティグッズをリサイクルする仕組みを持つ『アメニティ・リサイクル協会』が設立され、JTB商事が加入した。協会と連携してSDGsを意識した商品ラインアップを広げていく」

 ――旅ナカコンテンツ提供領域については。

 「23年度から『エリア開発領域』に改称したのだが、22年度には、地域共創型のエリア開発の加速に向けて、『ALL―JAPAN観光立国ファンド』を運営する地域創生ソリューション株式会社に出資、参画した。JTBは地域開発においては黒子の立場だが、ファンドへの出資などを通じて地域開発に関わっていく」

 ――23年度の事業で重視する取り組みは。

 「23年度は『共創と加速』を重点テーマに、引き続き経済・環境両面での地域の持続的な発展に向けて、グループの内外との共創による事業展開を加速し、観光地を面で活性化するビジネスを進展させる。23年度の重点実施事項は、(1)地域による持続可能な観光地経営に資する提供ソリューションの高度化(2)各サービス・ソリューションの磨き上げと共創による収益の最大化(3)積極的な投資拡大によるエリアの発展に資する事業開発の加速―の3点となる」

 「エリアソリューション事業は、『多様な事業者との共創によりエリア・地域の持続的な発展を希求し続け、それを実現する存在となる』をビジョンとして、『地域・エリアを一つのテーマパークのようにつなげ、価値を高める』を目指すべき姿に定めている。具体的には、それぞれを結び付けることでコンテンツが増え、旅行者の体験が深くなり、滞在日数が増え、付加価値が高まり、消費単価が上がる、このような流れをつくりたい。これを具現化する領域がエリア開発領域だ。JTBグループの新たな領域として先行して沖縄北部エリアで取り組んでいるが、23年度はこれを加速させる。このエリア開発領域に加えて、観光地デジタル化支援、観光地整備・運営支援の二つのソリューション領域を用いてエリアの付加価値を高める流れをつくる」

 ――JTB旅ホ連との連携については。

 「JTB旅ホ連の皆さまは、地域でエリアソリューション戦略を進める上での最大のパートナーだ。エリア開発領域では、会員旅館・ホテルの皆さまのご理解が欠かせないので、ご協力をお願いしたい。一方で、人手不足対策や生産性向上といった施設の課題に対しては、Kotozna In―roomやJTBデータコネクトHUBをはじめとするデジタルソリューションをご提案している。自治体やDMOと一体となったDXやハード整備にも取り組んでいくので、皆さまのご参画をお願いしたい」

 

 
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