「世界のキャッシュレスの今に対して日本はどこまで対応できるのか」 第9回JARCゼミ開催


講師の渡邉氏(左)

 宿泊施設関連協会(JARC、林悦男理事長)は2月21日、第9回JARCゼミナール「世界のキャッシュレスの今に対して日本はどこまで対応できるのか」を東京都千代田区の同協会事務所で開いた。講師は、三菱UFJリサーチ&コンサルタントの渡邉睦シニアコンサルタントが務めた。

 渡邉氏は日本のキャッシュレス環境について、「クレジットカード、デビットカード、電子マネーと決済カードサービスが浸透している。電子マネーは交通系、流通系など非常に多くのサービスが乱立しており、認知・普及も進んでいる」と述べた上で、「支払いベースでは、キャッシュレス比率は20%程度と伸び悩んでいる。普及は都市部が中心でエリア的な限定がある」として、サービス提供事業者は多いものの、全国的に見れば利用率は高くないと指摘した。

 各国のキャッシュレス決済比率は2015年のデータで韓国89.1%、中国60.0%、英国54.9%、米国45.0%、フランス39.1%、日本18.4%などと紹介。「日本は先進国の中で最低レベルのキャッシュレス決済比率だ。キャッシュレス化が進まないと、流通・サービス業の生産性向上の妨げになったり、消費活性化の機会損失にもつながったりしかねないと日本国政府は危機感を抱いている」と解説した。

 また、10月の消費税引き上げ後の一定期間、中小事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元・割引を支援する政策もキャッシュレス決済比率引き上げへの政策の一環と説明した。

 キャッシュレス決済比率が高い各国の事情にも言及。韓国は、事業者、消費者へのクレジットカード利用の普及を政府主導で推進し、加盟店手数料を低く抑える規制や、クレジットカード利用時に抽選で消費者に当選金が当たるインセンティブ付与などで、世界最高のキャッシュレス比率を実現。中国は、銀聯(ぎんれん)カードが火付け役となり、その後QR決済サービスが普及。現在の取引シェアは、アリペイ31%、ウィチャットペイ22%、銀聯カード16%と説明した。

 英国の場合は、ロンドン五輪に向けて政府主導でキャッシュレス化を推進した結果、07年に38%だった比率が16年に69%に上がったとした。

 日本国内で現在急増中のQR決済サービスのメリットとデメリットも解説。メリットは(1)店舗の導入・運用コストが低廉化し、加盟店が拡大する可能性が高い(2)スマホ機種に依存せず、インバウンドにも対応(3)ユーザーアカウントごとの決済データの収集・活用により、新たな付加価値サービスに展開可能。デメリットは(1)現状、QRコードの統一化ができていない(2)決済アクションがやや複雑(3)入金スピードが翌月末ということも多い―と説明した。


講師の渡邉氏(左)

 
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