MICEの展望と協会運営 日本コンベンション協会 代表理事 近浪弘武氏に聞く


日本コンベンション協会 代表理事 近浪弘武氏

MICEは知的生産の場 次世代育成と継承が課題

 一般社団法人日本コンベンション協会(JCMA)の代表理事に、副代表理事で日本コンベンションサービス社長の近浪弘武氏(60)が6月15日付で就任、抱負を聞いた。

 ――就任の経緯は。

 「コングレの武内紀子社長と私が2年交代で務めてきた慣例により拝命した」

 ――新型コロナはMICE市場にも大きな痛手となった。

 「厳しい3年間だった。リアル開催を生業としているわれわれはどう乗り越えていけばいいのか、非常に戸惑った。しかし、新たな発見もあり、功罪相半ばというところか」

 「オンラインによる会議は使い勝手がいい。リアル時は会議に欠席すると、講演内容やどんなことが話し合われたか後でレポート等を読んで知るしかないが、配信すれば好きな時に見ることができる。また、ハイブリッド開催は会議の一つの在り方として今後も残るのではないか。リアルの価値も一層高まり、顔を合わせて会議ができることの良さが再認識された」

 ――行動制限がなくなり、水際対策も緩和され、感染症法上の位置付けも2類から5類に移行するなど業界を取り巻く環境が好転している。MICE市場も動きだしているか。

 「先般広島で開催されたG7サミット、そして各地での閣僚会議の成功が象徴的な出来事だ。MICEが持つ本来のパワーを日本から発信するいい機会になり、『日本は安全だ』というイメージが世界中に発信された意義は大きい。国際的なイベントのリアル復活につながるのではないか」

 ――代表理事として、取り組むことは。

 「まず、国や自治体にMICEの重要性を説き、振興のための投資をしてもらうことだ。1月に『ポストコロナに向けて~一丸となって取り組むMICE再起動のための提言』を観光庁に提出した。インバウンド増加は成長戦略の柱の一つだが、MICEはまさしくそれにのっとった市場だ。観光だけでなく、有識者が集い、さまざまなことを議論する知的生産の場であることを理解していただきたい」

 「この業界にはさまざまな組織があるが、そうしたところと連携を強化し、国等に働きかけていく。1組織では活動に限界がある。力を合わせてMICE産業の地位向上を図りたい」

 「実際動きも活発化している。昨年12月の『MICE EXPOinKANSAI』(主催・大阪国際経済振興センター等)では特別協力団体としてJCMA主催セミナーを開催したほか、日本イベント産業振興協会とSDGsの取り組みで情報交換やセミナーの相互参加を行っている」

 「また、いくつかの海外の組織とMOU(覚書)を交わしており、今後も国際交流活動の一環としてMOUの動きを強めていく」

 ――現在、会員数は。

 「260ほど。会員数の減少に悩む組織は少なくないが、JCMAは右肩上がりで増えている。会員数はパワー、事業基盤の源であり、さらに入会促進に取り組む。JCMAに入ってよかったと思えるような魅力ある組織にしなければならない」

 ――委員会活動も活発なようだ。

 「人材育成、会員交流、広報、ダイバーシティ推進(旧女性委員会)、国際交流推進、次世代、SDGsの七つの委員会があるが、勉強会や交流事業を活発に実施している。ただ、JCMAがさらに発展するためには若手の台頭が欠かせない。『次世代育成と継承』を掲げ、若手の自主的な取り組みを促し、意見を求めるなど、環境作りを進めている」

 ――25年4月には協会設立10周年を迎える。

 「記念事業を検討するためのプロジェクトチームを立ち上げる予定だ。25年は大阪・関西万博の開催年であり、初めて大阪で社員総会を開催する予定だ。29年ごろにはIRも開業される予定で、MICE市場に注目が集まることはうれしい限りだ」

 ――MICEは経済効果も高く、国の力、都市の魅力を伝える場ともなる。それだけに競争が激しい業界だ。日本が世界で勝負するには何が必要か。

 「多くの国や地域はMICEを国策と位置付け、誘致に余念がない。韓国はMICE協会に一本化し、億単位で投資している。日本はそうではない。予算は少なく、支援体制が確立していない。これでは勝負にならない。MICEの重要性を理解し、国策として推進してほしい」
【聞き手・論説委員 内井高弘】

日本コンベンション協会 代表理事 近浪弘武氏

 
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