JTBは、09年度(09年4月)からの宿泊契約制度で手配旅行に可変手数料を導入、休前日の手数料を2%下げて13%にする。経営状態が悪化する旅館・ホテルが多いことから、負担を軽減し、連携パートナーとしてのより強固な関係を構築するのが大きな狙いだ。経常利益で約7億円の減少となる試算だが、連携強化による宿泊増売でこれを補う考え。併せて、企画旅行に関する宿泊施設との契約が存在しないため、コンプライアンスの観点から「企画旅行契約」を新設する。
手配旅行契約は、これまでの一律15%の手数料を見直し、10%の「基本手数料」と3%の「JTB販売ネットワーク手数料」、販売状況などに応じて加算する0〜2%の「可変手数料」の手数料体系とした。変化するマーケットに柔軟に対応できようにする。
可変手数料は、在庫消化率が低い傾向にある「休前日以外」を2%、「休前日」を0%に設定。今後、シーズンや販売実績、宿泊単価などの区分も検討する。
JTB販売ネットワーク手数料とは、1千店舗を超える販売店や団体営業社員、コールセンター、インターネットなど「JTBグループの総販売ネットワークやシステムを利用することに対する手数料」とJTBでは説明する。基本手数料と別立てて新設したことを考えれば、今後、一部利用のケースではこの料率が変わる可能性もある。
新旅行業法に対応した企画旅行契約では、旅行会社の補償、義務、責任を明確化。また、JTBが仕入額に消費税や入湯税などの各種諸税、パンフレット製作費などを加えて旅行代金を決定することを確認する。
手数料のない企画旅行だが、当面の仕入れは混乱を避けるため現行通りとした。本来の形である「原価仕入」は、一部の施設に導入して試行。徐々に拡大する意向だ。
「新たな企画旅行契約のもと、さらなる『企画性の追求』により商品力を強化し、企画商品の販売拡大を図りたい。商品力の向上は宿泊単価アップにもつながる」と田川博己JTB専務。
JTBが新宿泊契約制度をシステム上で対応できるのは10年度から。このため導入時期を一度は1年先送りする方針を固めていた。だが、JTB旅ホ連の小田禎彦会長らから「窮地に立たされている宿泊業界に活性化の糸口を与えてほしい」と強く要望され、実現性を模索。今年2月下旬、1年目は「手作業で処理する」と09年度の導入に踏み切った。「ウイン&ウインの関係」を築こうとする意気込みがうかがえる。
「あまり変わっていない」と評する旅館・ホテルもある。しかし、上がる一方だった手数料が下がったのは大きな前進だ。旅行会社最大手の決断は、他の旅行会社も巻き込んで大きなうねりとなるかもしれない。