竹内氏
今年9月、アムステルダムで開催された「ワールド・ステーキ・チャレンジ」で、栃木県足利市のブランド牛「足利マール牛」が、世界最高賞を受賞した。世界29カ国から467点が出品され、60名以上の食肉専門家が審査する同コンテスト。国や銘柄、血統などの情報を伏せ、見た目と味で評価する厳正な審査で同牛は、穀物肥育牛リブアイ部門の世界一に輝いた。黒毛和種とホルスタインの交雑種が世界的な評価を得たのは、歴史的快挙だ。
2013年にブランド化された同牛の生産者は、長谷川農場。赤身のうまみと適度な霜降り、柔らかさのバランスを重視し、27カ月以上かけてじっくりと肥育される。特別な日に一度だけ味わうのではなく、「今日も食べたい、明日も食べたい牛肉」を目指している。
最大の特徴は、名前の由来にもなった「マール」だ。マールとは、ワイン醸造後に残るブドウの果皮や種など搾りカスのこと。ちなみに、このカスを使って醸造されるマールというブランデーの一種も存在する。
ここでは、地元の「ココ・ファーム・ワイナリー」で生じるマールを、近隣の勅使川原精麦所が乳酸発酵させ、独自の飼料としている。マールを加えることで、肥育期の牛の食欲が増進し、不足が懸念されるビタミンEも補給できる。ポリフェノールや有機酸が豊富に含まれているので、赤身にうまみやコクをプラスし、肉の色味を良くする効果も期待できる。また、ワイナリーの産業廃棄物を削減し、それを生かすだけでなく、牛の糞尿を堆肥化し、ブドウ畑や農地に還元する仕組みも整っており、ワイナリー、精麦所、畜産農家が、地域内で資源を循環させているのだ。
同農場では肥育牛約700頭の他、米麦、アスパラガス、玉ねぎを生産。近年は6次産業化を進めており、2022年にはマール牛加工品ブランド「Marc Kitchen」を立ち上げた。
筆者が役員を務めるお弁当製造販売会社が勅使川原精麦所と懇意にしていただいている関係から、先日「足利マール牛100%無添加サルシッチャ」をいただく機会を得た。サルシッチャとはイタリア語で「腸詰め」の意味。ドイツ生まれのソーセージは、腸詰めをゆでたり燻製(くんせい)したりと加熱処理するのに対し、サルシッチャは非加熱である。
指示通り、袋のままお湯で加熱して袋から取り出し、焼き色がつくまでソテー。つまみ食いしたくなるのをグッと堪えて一口大に切り、あらかじめ作っておいたブロッコリーのアーリオオーリオとサッと炒め合わせれば、たちまちワインにピッタリな一皿に。かめばジュワッと肉のうまみが口中に広がるのは、生ならでは。ほとばしり出た肉汁を受け留めたブロッコリーも超美味♪チーズやガーリックで絶妙に味付けされているからだ。ただのお肉ではこうはいかない。
それにしても…と思う。ココ・ファーム・ワイナリーの赤ワインとの相性は格別だろうなぁ。次回は絶対試したいと、心に誓った。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




