9月に、国際交流基金ブダペスト日本文化センターから招聘(しょうへい)されて、ハンガリーとチェコで日本の温泉文化を伝える講演を行い、また施設管理者や温泉医師、温泉研究所の皆さんと温泉をテーマにセッションしました。もちろん現地の温泉事情も取材してきました。
2030年の「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録を目指すいま、課題を持ち帰りましたし、ハンガリーやチェコから、日本との交流を求める希望も聞いてきましたので、追って、本紙記事として取材を受けます。写真も添えてまとめていただきます。
この依頼をいただいたのが今年の初頭。それ以来、「日本が誇る『温泉文化』とは何か―」を問い続け、日本の温泉の特質と魅力を私なりに再考してきました。
たくさんの日本の特質を見つけましたが、なかでもお湯(温泉)の豊富なバリエーションは、世界でも類を見ない日本ならではの魅力です。
日本には10種類の泉質があります。泉質名がつかないものを入れたら11種類。
お湯の色も、無色透明、乳白色、青、緑、ねずみ色、黒などなど多種多彩です。
それはどうしてでしょう。
まず日本の温泉の成り立ちから見てみましょう。
温泉は「水」と「温度」と「成分」との三つの要素で成り立っています。
温泉となる「水」は、雨や雪が地中にしみ込んで、何年か後に温度や成分などを得て、再び地上に出てきた「循環水」です。
次に「温度」とは、「水」をあたためる熱源を指します。マグマの熱であたためられたものは「火山性の温泉」、地熱であたためられたものは「非火山性の温泉」に大別できます。
「成分」とは、湧き出る場所の岩石、温泉が湧き出る経路、そして地質構造によっても異なります。
こうした三つの要素が複雑に絡み合い温泉となるのです。
特に「温度」と「成分」に日本らしい特徴があります。
日本列島は太平洋、フィリピン海、北米、ユーラシアの四つのプレートが重なり合っています。それらのプレートが沈み込む地帯に火山性の温泉が湧きます。このプレートの多さから、世界と比べると日本は顕著に火山性の温泉が多いのです。
世界を見ると、アイスランドやニュージーランドには火山性の温泉が湧いていますが、バーデンバーデンで知られるドイツや他のヨーロッパの国々に湧く温泉は非火山性の温泉が主流です。
次に「成分」ですが、日本列島は火成岩、堆積岩、変成岩が複雑に入り混じって「地質の博物館」のような構造です。火成岩はマグマが冷えて固まった岩。堆積岩は砂・泥・生物遺骸などが堆積して固まった岩。変成岩は既存の岩が熱や圧力で再結晶してできた岩。温泉が地上に湧き出る過程で、こうした多種多様な岩を通り抜けますから、多量のミネラルが溶けこむことで、泉質が豊富になりえるのです。
世界的には単一の地層が大規模に分布することが多いため、比較的、温泉は単一の泉質になる傾向のようです。
以上は公益財団法人中央温泉研究所第2部(温泉調査)主任の高橋孝行さんが、跡見学園女子大学の「観光温泉学」の授業で教えてくださったことです。私も学ばせていただきました。
(温泉エッセイスト)




