一般社団法人サステナビリティ・コーディネーター協会(JaSCA)は2026年9月28日、Directive (EU) 2024/825(EmpCo指令)の国内実施措置が同年9月27日から適用開始となったことを受け、観光認証の信頼性と「消費者への見え方」をテーマとしたエグゼクティブブリーフ(共通版)を公表した。
EmpCo指令の適用開始は、日本の観光産業にも無関係ではない。改正UCPD(不公正商慣行指令)Annex 12aは、認証制度に基づかず、公的機関が設定したものでもないサステナビリティラベルを禁止対象とすると定める。JaSCAは今回の文書で、認証の保有情報と、その認証を支える保証の根拠は同じ情報ではないと明示。「保証の内容や対象範囲が消費者に伝わらなければ、取組の違いが理解されにくくなる可能性がある」と指摘した。
EmpCo指令とは何か
改正UCPD Article 2(r)が認証制度を定義し、Directive (EU) 2024/825 Article 4がその実施を規定する。JaSCAのブリーフは、認証制度に求められる要素として次の4点を列挙した。
- 公開された条件での参加
- 専門家等の要件形成への関与
- 不適合への停止・取消等の手続
- 客観性・力量・独立性を持つ第三者による監視
これらを満たさないラベル表示は、規制の対象となりうる。JaSCAはこの枠組みを、日本の観光産業における認証表示の点検に活用する姿勢を示した。
JaSCAが設定した「5つの接点」
JaSCAは、認証制度の信頼性と消費者情報の質を検証するための分析枠組みとして、5段階の接点を設定した。
「認証制度設計 → 認証判断 → データ流通 → OTA表示 → 消費者選択」という流れだ。
制度・認証の事実、受け渡す情報、表示、消費者への効果を段階別に検証するとしており、ブリーフは「これは分析の枠組みであり、すべてのデータが同じ経路を通るという意味ではない」と留保も付している。
BeCauseの公表承認済み回答
ブリーフには、データ仲介事業者BeCauseからJaSCAへの2026年9月28日付回答の要約が収録されている。公表承認を得た内容として、JaSCAが翻訳・掲載したものだ。
BeCauseは次のように説明している。「BeCauseは、どの事業者がどのサステナビリティ認証を保有しているかに関する情報を提供するデータ仲介者です。制度所有者、認証機関、および認証決定に責任を負う法人に関する情報を、OTA・旅行プラットフォームの顧客に提供しています」。
一方で、「現在、認定機関、認定状況、適用される適合性評価規格、第三者による監視構造については、構造化されたデータ項目として保持していません」とも述べている。
Travalyst関連のタグについては、「認証制度側の自己宣言を反映する参考情報であり、BeCauseによるECGT適合性の独立した確認ではない」と明記。どの認証情報を利用し、表示するかは「それぞれのマーケットプレイスが決定する」としている。
JaSCAはこの説明を踏まえ、BeCauseが提供している情報と、構造化項目として保持していない情報を明確に区分した表を作成。提供している情報は「制度所有者・認証機関・認証決定に責任を負う法人」、構造化項目を保持しない情報は「認定機関・認定状況・適用する適合性評価規格・第三者監視構造」とそれぞれ整理した。
断定しない分析姿勢
JaSCAはブリーフ中で、BeCauseの回答だけからは「個別制度の法令不適合、認定の不存在、OTA側の情報不足・表示上の問題を断定することはできない」と明示した。OTAが制度文書や認証機関等から別途情報を取得する可能性もあるとしている。
また、「認定がないことと、認定情報が未取得であることも区別する」と述べ、機械可読性は情報管理上の検討課題であり、全項目の表示義務や、特定の認定・ISO/IEC 17065の一律義務を意味しないとも記した。
実際の保証、環境・社会面の成果、法令適合性については、それぞれ証拠を確認するとしている。
関係者への確認事項
JaSCAは行政・DMO、認証機関・制度所有者、旅行会社・OTA・データ事業者、ホテル・観光事業者、研究者・支援者の5区分に対し、それぞれ確認したい事項を示した。
行政・DMOには「認証取得件数に加え、保証の根拠がどの経路で市場に届くかを確認する」こと、認証機関・制度所有者には「制度・認証機関・監視主体・根拠資料・有効性を説明可能にする」こと、旅行会社・OTA・データ事業者には「受領項目、別経路の証拠、更新責任、表示内容を照合する」ことを求めた。
ホテル・観光事業者には「認証書と実際の紹介・予約画面を比較し、対象範囲の誤認を防ぐ」こと、研究者・支援者には「情報項目の有無だけでなく、理解・比較・選択への効果を検証する」ことを呼びかけた。
直近90日の確認スケジュール
JaSCAは今後90日間の確認ポイントも提示した。9月末は「認証名・範囲・リンクと情報の取得元を記録」、10月初旬は「認証機関・監視・移行条件を一次資料で確認」、10〜12月は「データの補完方法と消費者理解を検証」とする3段階の工程だ。
今後の重点活動として、主要OTAの実表示と制度・認証移行の情報を日付付きで確認し、追加回答と実証結果に応じて資料を更新するとしている。
JaSCAとは
JaSCAは、自治体・DMO・事業者・住民・研究者・専門家のあいだに立ち、合意形成と実装を支えるサステナビリティ・コーディネーターの専門団体。代表理事は青木真郎氏で、理事14名が地域実務、研究・教育、観光、制度等の知見を持ち寄る体制だ。
4つの支援領域として、地域・DMOへの現状評価・観光計画支援、宿泊・旅行・関連企業への基準理解・改善ロードマップ策定支援、学習・人材育成、調査研究・制度対話を掲げる。
これまでに公表している支援実績としては、2024年に群馬県のサステナブル国際表彰・認証取得支援、那須塩原市・小豆島観光協会の持続可能な観光の国際認証取得支援、高山市のGreen Destinations表彰取得支援を実施。2023年には札幌市の持続可能な観光推進に関する調査・検討、観光庁モデル事業でのモデル地域の個別支援・集合研修も手がけた。
GSTC、JSTS-D、Green Destinations、ISO・EU制度等を目的に応じて横断的に扱い、支援と第三者による評価・認証判断を混同しないことを原則の一つとする。
今回のブリーフの基本姿勢は「信頼性に欠ける表示を減らす。同時に、信頼できる保証を見えるようにする」との一文に集約されている。




