2030年に「温泉文化」をユネスコ無形文化遺産に登録されることを鑑み、先日、とある省庁の皆さんと「温泉地が元気になるための課題」を話し合う機会がありました。
「山崎さんは、全国の温泉地の現状を知っているから」というご指名でしたが、私も各所に事前リサーチをしました。
私の認識以上に、好調な温泉地とそうでない温泉地の二極化を目の当たりにしました。でも、好調なところは多くはなく、皆さんが厳しい現実と、非常に苦しい状況を教えてくださいました。
「料理人、とりわけ和食の職人確保が難儀である」
「DMOは常に財源と人材不足である。DMOに財源と裁量を持たせなければ、前向きな事業ができない」
「自然災害によるキャンセルの苦しさ、2次交通が不便な温泉地の苦悩…」など、抱える悩みの深さが伝わってきました。
そんな中でも、課題は「人材確保」「財源」「2次交通」の三つに分類されました。
「人材確保」に関しては、「外国人の労働をあてにしなければ宿が回らない現状だが、紹介料が高い。事業承継者を探すのも一苦労で、人のマッチングを公的に支援してほしい」という声が。
「財源」に関しては、「宿泊税導入の流れはあるが、訪日客が来ない地域は、さらに税金を課せられるという印象を受けている」
「宿泊税だけでなく観光税として広く徴収することも考えてほしい」という意見がありました。
「2次交通」は想像以上に、問題が複雑に絡み合っていました。
旅する立場として申し上げれば、県をまたぐ公的移動手段は電車ならあるが、バスなどは便数が少ないため、旅がしにくいです。行きたくても、そのアクセスの不便さで、断念してしまうこともあります。
また2次交通が不便な事業者さんからは、「いま人手不足で夕食を出せない。けれど夕食を取るために、お客さんに外に出かけてもらうにも、足がない。ライドシェアなど、2次交通さえあれば素泊まりでお客さんを受けられる。加えて、足さえあれば、町からアルバイトも呼べるから人手確保にもなる」といったリアルな声を聞きました。
行き詰まりを吐露した言葉もいただきました。
「売り上げが好転すればいろいろ策が練れる。でもその起死回生の策がない。どんどん悪く回転していく」
そんな話を聞けば、いかに現場が切羽詰まった事態であるかが分かります。
2030年以降、「温泉文化」が世界から注目され、訪日客がこぞって来てくださる時期に、肝心の体験場所としての温泉地や旅館が日本人が経営できない事態に陥るかもしれない…。そんな想像が的中しないように、地域にとって生産性が上がる策をいち早く考えなければなりません。
とある事業者さんはおっしゃっていました。
「特に訪日客がそうですが、お客さんは、本当に見たいもの、体験したいコンテンツがあれば、2次交通がなくても来てくれる。訪日客に強く刺さるコンテンツは、なんなんだろう」と。
ひとまず、「選ばれる温泉地、観光地」になるために、貴重な成功事例を地域の枠に留めず、全国で共有できるような、いわば横軸での「仕組み」が必要ではないかと感じました。
(温泉エッセイスト)




