【地域創生と観光ビジネス105】東商「東京三昧ツアー第1弾」江戸東京博物館と神田明神へ 千葉千枝子


 先日の熊本・阿蘇視察に次いで、東京商工会議所「トラベル&ツーリズム委員会」が主催した「東京三昧ツアー第1弾」に参加した。

 集合場所は、今年3月末にリニューアルオープンしたばかりの「江戸東京博物館」。会議室で、佐々木秀彦参事官によるレクチャーからスタートした。

 都庁が新宿に移転したバブル末期、「下町にも、にぎわいを」と、両国の旧国鉄用地に建てられた同館は、1993年の開館である。近ごろの大規模改修にかかった年月は約4年と長く、新生”えどはく”は初めての訪問だ。 

 それが迫力満点。原寸大の「日本橋」を渡って芝居小屋「中村座」で江戸歌舞伎の熱気を感じ、明治の文明開化をほうふつとさせる「服部時計店」の脇を抜けると、昭和の文化生活の憧れ「代官山同潤会アパートメント」が再現されていた。近ごろはやりの没入感すら漂う。学芸員としても著名な佐々木参事官のご案内は、説明も面白く、文化施設の新たなあり方を学びとることができた。

 外は梅雨明けの炎天下。一行は観光バスに乗り込んで、江戸総鎮守「神田明神」へと移動した。かつて神田鍛冶町に勤務したころは、仕事始めに毎年、参拝したから懐かしい。本殿で、商売繁盛・社運隆昌のご祈祷をいただいた。祭主が若き女性で驚いた。

 祈祷後に巫女(みこ)さんから龍角散のど飴、そして山本海苔(のり)店のおのりをいただいた。いずれも氏子総代からのご奉納だそう。

 2018年、境内に誕生した「神田明神文化交流館EDOCCO(エドッコ)」は、創建1300年記念事業として建てられたMICE施設である。窓外の緑が映えて採光がよい会議室で、菊池重光禰宜(ねぎ)の講話に耳を傾けた。そこで「20年後には約4割の神社が消滅するかもしれない」と聞かされて、会場はどよめいた。参拝者の世代交代・新陳代謝を促して、情報を積極的に発信し、神社が存在することの意義や価値向上を目指していきたい。そうした思いがエドッコには込められていた。稼働率は8割を超えているらしい。 

 そのエドッコ1階には、御朱印をはじめ、お守りやお札、神棚などが売られている。しかも一角には、外貨両替機やセブン銀行のATMが設置されていた。若者のまち・秋葉原が近い地の利を生かして、若年層やインバウンドへの訴求を忘れない。

 例えば、みくじもカプセル・トイのガチャと、これまた斬新だ。縁起物シリーズを引いてみると、「まさかどさま」のキラキラシールとアクリル製のキーホルダーがゲットできた。武士の先駆け・平(たいらの)将門命(まさかどのみこと)を祭っているのである。ご利益がありそうだ。

 日帰り旅の締めくくりは外神田の老舗「うなぎ久保田」で、ウナギづくしで精をつけた。冷えたビールや日本酒を酌み交わして、東商会員の経営者の皆さんと意見交換をしながら交流を深めた。

 「灯台下暗し」とは、このことだ。都民でありながら、知らないことがたくさんあることに気づかされた。それに、時代に合わせて博物館も神社も変化を遂げているのである。安全な港にいかりを下ろしてただ停泊するのではなく、果敢に大海に出帆しなければならない。そもそも、その港が安全かどうかも分からない。神の啓示を感じた一日だった。

(観光ジャーナリスト・淑徳大学経営学部観光経営学科教授 千葉千枝子)

 
 

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