ブッキング・ドットコムは7月23日、LGBTQ+の旅行者の意識や行動に関する最新の「Travel Proud調査レポート」を発表した。19の国と地域の13,300名を対象にした調査で、世界のLGBTQ+の旅行者の過半数が旅行中に自身のアイデンティティの開示を慎重に判断している実態が浮き彫りになった。
旅行中に自身がLGBTQ+であることをオープンにしていると回答したのは世界全体で31%にとどまり、日本ではさらに低い9%。一方で親しい友人に対してオープンにしている人は世界で68%(日本:37%)に達しており、旅行という場面での自己開示が大きく制限されている現状が明らかだ。
カミングアウトしていない旅行者のみが「不安なし」過半数
今回の調査で特に注目を集めるのが、「カミングアウトしていない」旅行者とその他のグループとの間に生じる経験の差だ。
旅行中に不安を感じなかった人が過半数(53%)を占めたのは、「カミングアウトしていない」LGBTQ+の旅行者のみ。世界全体では30%(日本:40%)、ポリアモリー(複数恋愛)の旅行者では20%にとどまる。
過去12カ月間に旅行中、自身がLGBTQ+であることに関連してネガティブな経験をしたと回答した割合も、「カミングアウトしていない」旅行者が34%と最も低く、世界のLGBTQ+の旅行者全体(62%)、トランスジェンダーと自認する旅行者(73%)を大きく下回った。
自身のアイデンティティの一部を明かさないという選択は、自らの意思による場合もあれば、環境や状況による場合もある。「人生で一度は訪れたい」と考える旅行先を訪れるためであれば、自身のアイデンティティを明かさないこともいとわないと回答した人は、世界全体で40%(日本:38%)に達した。「世界を旅すること」と「自身のアイデンティティを尊重しながら旅すること」の両立に、今なお葛藤が伴う実態を示す結果となった。
トランスジェンダー旅行者の不安、43%が「近年高まった」
安全対策への意識も高まっている。LGBTQ+の旅行者の44%(日本:29%)が、数年前と比べて旅行時により多くの安全対策を講じていると回答。具体的な行動として挙げられたのは以下の通りだ。
- 信頼できる相手と現在地を共有する(世界:25%、日本:23%)
- オンライン上の行動を保護するためにVPNを使用する(世界:19%、日本:15%)
- 予備用の携帯電話を携行する(世界:18%、日本:15%)
- 国境を越える前にマッチングアプリを削除する(世界:16%、日本:15%)
また、LGBTQ+の旅行者の48%(日本:43%)が、公共の場でパートナーへの愛情表現をする前に周囲の状況を確認していると回答した。
なかでも特有の課題に直面しているのが、トランスジェンダーの旅行者だ。旅行への不安が近年高まったと回答した割合は、世界のLGBTQ+の旅行者全体が27%(日本:18%)であるのに対し、トランスジェンダーの旅行者では43%に達する。
最も不安を感じる場面として、多くの属性で挙げられたのは「夜遅い時間帯や日没後に公共の場にいること」(世界:22%、日本:14%)。一方、トランスジェンダーの旅行者では、性別によって区分された施設(トイレや更衣室など)の利用が最大の不安要因となっており、24%が挙げた。
ポジティブな体験が上回る、AIも旅の頼れる相棒に
課題が山積する一方で、ポジティブな側面も数字に表れた。
過去1年間の旅行において、82%(日本:63%)が自身の性自認や性的指向に関連したポジティブな体験を少なくとも1回経験したと回答。具体的には次のような体験が挙げられている。
- 自身が望む呼称や代名詞を適切に使用してくれるスタッフとの出会い(世界:34%、日本:27%)
- プライドフラッグの掲示など宿泊施設でのインクルーシブな取り組み(世界:32%、日本:20%)
- ジェンダーニュートラルなトイレの設置(世界:32%、日本:20%)
- LGBTQ+コミュニティに属するスタッフの存在(世界:32%、日本:18%)
LGBTQ+の旅行者全体の58%(日本:44%)が、この数年間で社会的な受容が進んだと感じているとの結果も出た。
デジタルツールの活用も広がっている。過去1年間で、LGBTQ+の旅行者の3分の2(世界:66%、日本:60%)が旅行計画にAIを利用したと回答。43%(日本:36%)が、自身のアイデンティティに関する旅行の相談について、AIからであれば人に相談する場合と比べて客観的で偏見の少ないアドバイスを得られると感じている。
39%(日本:30%)は、一般的な検索では見つけにくいLGBTQ+フレンドリーなスポットを見つける上でAIが有効と回答。37%(日本:32%)は、現地のLGBTQ+コミュニティや事情に関するデリケートな質問について、人に尋ねるよりもAIに相談する方が安心できると感じている。また、30%(日本:21%)が、オンラインで旅行を予約する際に多様性への配慮や「LGBTQ+フレンドリー」を示す絞り込み機能があれば有用だと考えている。
Booking.com「Travel Proud」、14万2,000軒以上が研修修了
ブッキング・ドットコムの宿泊施設部門でシニアバイスプレジデントを務めるMatthias Schmidは、今回の調査結果を受けてこう述べた。
「今年の調査結果は、弊社のTravel Proudプログラムがこれまで以上に重要な役割を果たしていることを示しています。2021年の開始以降、5年間でプログラムが着実に拡大し、世界中の多くのパートナー施設にこのプログラムが受け入れられてきたことを大変心強く感じています。現在、トレーニングは11言語で提供されており、これまでに14万2,000軒以上のパートナー施設が受講しています。その結果、旅行者は世界20,000以上の都市・目的地で、LGBTQ+フレンドリーな宿泊施設を検索・絞り込みできるようになりました」
さらにSchmidは、「世界のLGBTQ+の旅行者の66%が、自分らしく過ごせる旅行を重視している」としたうえで、「自分らしさを大切にしながら、誇りを持って旅を続ける人々の存在に勇気づけられています」と語った。
ブッキング・ドットコムでは現在、「Travel Proud」バッジおよび「Travel Proud(LGBTQ+フレンドリー)」の絞り込み機能を通じて、インクルーシブな滞在先を探す旅行者がLGBTQ+フレンドリーな宿泊施設をより簡単に見つけられるようサポートしている。宿泊施設検索時に「Travel Proud(LGBTQ+フレンドリー)」の絞り込み条件を選択するか、宿泊施設ページに表示されるレインボーカラーのスーツケースアイコンで確認できる。
本調査はブッキング・ドットコムの委託により独立機関が実施。調査対象は、18歳以上で過去12カ月以内に宿泊を伴う個人旅行を経験し、旅行の計画・予約に関する意思決定に関与しているLGBTQ+コミュニティの人々。対象国・地域はアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、コロンビア、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、シンガポール、スペイン、台湾、タイ、イギリス、アメリカの19カ国・地域で、調査は2026年2月から3月にかけて実施された。





