【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 806】カスハラ時代に「お客さまは神様」を問い直す(2) 青木康弘


 前回コラムでは、「お客さまは神様」という発想のまま理不尽な要求にどこまでも応え続ければ、現場で最も優秀な人材から先に辞めていくと述べた。そうならないために、どこまで応え、どこで線を引くのかを経営として定めておく必要がある。今回コラムでは、その線を具体的にどこに引くのかを取り上げたい。

 線引きと聞くと、客が怒鳴っているか、態度が荒いかで見分けるものだと考えがちである。だが、現場の実情はそう単純ではない。物腰は穏やかなまま法外な値引きを最後まで譲らない客もいれば、口調こそ荒くても言い分はもっともで、対応すれば短時間で収まる客もいる。声の大きさや態度は、線を引く基準にはならない。

 判断の基準は二つある。要求の中身そのものが正当かどうか、そして、その要求の通し方が常識の範囲に収まっているかどうかである。たとえば、料理が冷めていた、聞いていた部屋と違う、という苦情は、中身としては正当だ。だが同じ苦情でも、従業員を1時間以上立たせたまま責め続けたり、落ち度に見合わない全額返金を迫ったりすれば、通し方の段階で度を越している。要求は正しくても、手段の側がカスハラに変わる。国の指針が、客の言動が社会通念上の許容範囲を超え、従業員の就業環境を害しているかどうかを問題にしているのも、この要求の通し方の部分である。

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