【VOICE】ローインパクトの観光振興が重要 一般社団法人JARTA 代表取締役高山傑氏


高山氏

高山氏

サステナビリティ教育の義務化を

 訪日客の急増やSNSの台頭により、日本の観光は大きな転換期を迎えています。本来、地域の自然や文化といった「地域DNA」を資本としてアピールすべきですが、現状はブームに乗った無秩序な集客が繰り返されています。

 例えば、ナイトエコノミー振興による文化財のプロジェクションマッピングは、「映える映像」を求める人々を集めるだけで、本来の価値を伝えていません。また、自然信仰のもと先人から守られてきた滝も、SNS等で無配慮に発信されることで、飛び込みやBBQのゴミ放置などが起き、地域住民の反感を買っています。地域のルーツを大切にする従来の観光が失われ、誘客優先で住民生活への配慮が欠如しているのです。

 地域の資産を安売りせず、インパクトを求めない「ローインパクトの観光」を振興することこそが、日本が日本であるために最重要です。オーバーツーリズムは一極集中に限らず、少数の心無い訪問者によっても引き起こされます。「持続可能な観光地域づくり」も、地域主導の課題解決という本来の目的から外れ、表面的なオーバーツーリズム対策や都会のコンサル業者への税金流入を招いており、観光が手段ではなく「目的化」していると言わざるを得ません。

 持続可能な形で観光を発展させるためには地域全体でのマネジメントが不可欠であり、私は「点・線・面」の三つのアプローチを重視しています。

 点=観光関連事業者一人一人の意識改革と行動。宿泊、飲食、体験をサステナビリティの軸で統合すること。

 線=点在する価値ある「点」をつなぎ、旅行者に地域ストーリーを構築する旅行会社のプロセス。

 面=全体を管理し、観光を行政や地域全体の課題として位置づける強力なガバナンス。

 これらを機能させるための共通基盤が、「サステナビリティの教育」であり、幼少期の「読み書き」と同様に、観光に関わる事業者、地域住民、旅行者が初期段階で身につけるべき「基本言語」でなければなりません。共に学び、責任ある行動をとる「ツーリストシップ」の精神を育むことが、地域のDNAを次世代へつなぎ、コミュニティ全体を豊かにする鍵となります。

 全国にこの基盤を定着させるためには、教育を社会の仕組みとして明確に組み込む覚悟が必要です。具体的には、宿泊施設や旅行会社が営業許認可を取得・更新する際や、ガイドの研修プログラムにおいて、サステナビリティ教育の受講を必須・義務化すべきです。教育という根が深く張ってこそ、「点」は力強く育ち、美しい「線」を描き、持続可能な「面」として地域全体を包み込むのです。

高山氏

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