【JTB旅ホ連 設立70周年・通常総会特集】JTB各事業・領域の現状と展望 取締役専務執行役員 ツーリズム事業本部長 西松千鶴子氏に聞く


西松氏

機構改革でマーケティング強化 ツーリズム事業は根幹も、変革必要

 ――2025年度の宿泊販売の状況は。

 宿泊販売は、上期、下期共に前年比100%超となり、前年を超える進捗(しんちょく)であった。

 領域別では、国内個人はウェブ、リアル共にさまざまな環境変化の影響を凌駕することができず、前年に一歩及ばなかった。一方で、法人は年間を通じて堅調に推移し、訪日インバウンドは第4四半期以降、中国関係の影響で鈍化したものの全体をけん引した。

 訪日インバウンドの伸長、大阪・関西万博や法人需要の伸びが見られた1年であった。個人は、訪日インバウンド領域の伸長も踏まえ、今後の成長に向けバリューチェーン全体の改革を推進していきたい。

 ――国内・訪日旅行で好調だった分野は。

 万博関係は旅行事業も非常に好調で、パビリオンの優先入場など、体験価値が伴うプランが人気だった。下期には、JTBグループの国内旅行キャンペーン「日本の旬 沖縄」を開催し、個人、団体、訪日いずれも堅調に推移した。

 ――今後の旅行市場の見通しはどうか。

 情勢の変化で予測は揺れ動くところだが、今年1月に発表した26年の見通しでは、国内旅行は人数が前年比97.8%、海外旅行は102.6%と予測している。旅行単価は物価の高騰もあって伸びる見通しだ。一方の訪日外国人旅行者数は、中国の減少などを織り込んで4140万人、97.2%と予測されている。

 ――国内旅行の販売拡大に向けた取り組みは。

 国際情勢もあり、一定数、海外旅行から国内旅行に目が向くことが予想され、国内旅行にはチャンスといえる。また、今年のシルバーウイークは大型連休が可能な日並びで、すでに好調に推移している。一方、夏の需要をいかに取り込むかが課題だ。近年の猛暑が影響する可能性もあり、例えば、避暑地、夜のテーマパークなど、少しでも旅行に目を向けてもらえる情報発信、体験コンテンツに注力していきたい。

 国内旅行では、誰とどのようなシチュエーションを体験したいか、といったニーズに合わせ、新しい体験価値をお客さまに届けたい。例えば、花火や祭りなどのイベントはJTBの得意な分野だが、3世代で混雑を避けてゆったり観賞・体験するプランや、子どもたちに特別な体験をさせるラーケーションと連動した提案など、体験価値の充実に取り組みたい。

 ――訪日インバウンドの施策については。

 ソースマーケット(発地)の多様化が顕著に進んでおり、特定のソースマーケットに集中しすぎず、幅広くお客さまを開拓していく方向でマーケティングを強化したい。訪日客向けの販売サイト「JAPANiCAN(46)com」をはじめ、提携先のトリップ・ドットコムやアゴダなど、さまざまなチャネルでアプローチしていく。

 また、政府の第5次観光立国推進基本計画では、訪日インバウンドの旅行者数、消費額に加え、リピーター数に数値目標が設定された。訪日回数を重ねるにつれ、地方に足を運ぶ割合も高くなる。各地域の魅力を市場に届けていきたい。

 大型イベントでは、愛知・名古屋でアジア競技大会・アジアパラ競技大会が9~10月に予定され、関係者の宿泊、その他関連サービスの手配をJTBグループが担う。船を宿泊施設として活用するホテルシップも予定されており、関係者と連携して成功させたい。

 ――ツーリズム事業本部は、4月1日付で機構改革を実施した。

 国内旅行、海外旅行それぞれのビジネスモデル改革の答申を踏まえ、26年度から個人事業領域の体制を大きく変えた。まず仕入商品事業部を国内旅行と海外旅行に分け、それぞれに執行役員を配置した。

 販売面では、店舗、コールセンター、JTBホームページ、三位一体でお客さまに向き合えるよう組織を再編した。プロモーション戦略部、パートナーシップマネジメント部を設けるとともに、マーケティング・MD戦略チームを新設し、分散していたマーケティングとプロモーションの機能を統合、ロイヤルティプログラムを含め、お客さまを軸にしたマーケティングを強化した。

 ――JTBグループは、2035年を見据えた長期ビジョン「OPEN FRONTIER 2035」を策定した。

 ツーリズム事業は、長期ビジョンにおいてもグループの根幹になり得る。「2035年のありたい姿」に掲げる「高い専門性と洞察力で 世界をつなぎ、つくり、つなげ、感動と幸せで人々を満たす『新』交流時代のフロンティア企業となる」のベースは、ツーリズム事業にあると考えている。

 ただし、変革が求められている。ポイントの一つが「グローバル」。これまではどちらかというと日本人のお客さまの旅行スタイルを軸にバリューチェーンを組んできたが、その良さを生かしながらも、どうしたら訪日外国人のお客さまがもっと日本を楽しめるか、よりユニバーサルに対応していくということが課題の一つだ。

 次に「ビジネスモデル」の変革だ。特に、着地におけるビジネスモデルづくりでは、日本のお客さまだけでなく、世界のお客さまをターゲットに、磨き上げた地域の素材、体験価値をしっかり流通させることが大事だ。今、宿泊、体験などのコンテンツを世界に流通させる新たなシステム「JTB TOURISM HUB」を構築しており、流通の基盤をしっかり整備していく。また、お客さまとどうタッチポイントをつくり、関係性をつむいでいくか、「情報・データ」の活用をしながら、考えていきたい。

 ――設立70周年を迎える旅ホ連会員との連携は。

 大きな節目の年に当たり、旅ホ連会員の皆さまとの連携の重要性を再認識している。販売プランや販売タームをあらかじめ示し、その時期にしっかり客室をご提供いただくことや、地域誘客拡大に向けた取り組み強化など、パートナーとの連携の重要性は一層高まっている。今後は、旅ホ連の皆さまにとって有益な価値をしっかり創出していくので、ぜひご協力、ご支援を賜りたい。


西松氏

 
 
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