竹内氏
前回の続き。蒸留所見学の後、われわれは2階のセミナー・ルームヘ。グループごとにテーブルがセッティングされ、教材として使うであろうウイスキーが3種並んでいた。お口直しのクラッカーまで用意され、至れり尽くせり。奥にはガラス越しに、先ほど見学した蒸留設備が見え、上から見た様子をしばし撮影タイム。そして全員が着席した絶妙なタイミングで、ハイボールがサーブされた。大げさでなく、今までの人生で一番おいしいハイボールだった。ウイスキーでも焼酎でも、割らずにロック派の筆者、あまり好みの飲み物ではなかったのだが、コレは別格。聞けば、1階のバーで作って下さったそうだ。先生に配合を尋ねると、ウイスキー1に対して炭酸が3と教えて下さった。グラスの冷やし方や氷の形状、ステアのあんばいなど、匠の技が詰まっているのだろう。奥が深いなぁ…。
われわれが受講したのは、初級の「TASTING 101」。基礎を知るというテーマだ。教材の内容も、講師のお話も、初めてのことばかりでとても興味深い。まずは、1~3のグラスに入ったウイスキーの香りを確認したが、普段飲み慣れているワインとは全く違う。顎の下位にグラスを持ち、まずはそこで香りを嗅ぎ、徐々に鼻に近づけるのだ。さらに、コレはワインではあり得ないことだが、スポイトでほんの数滴加水することで、香りがガラリと変わるのにも驚いた。かんきつ系の香りがすると感じたウイスキーに加水したら、バニラっぽい香りに変化したのだ!
アロマの違いの次は、色の違い。ニューメイクと呼ばれる出来たての無色透明のウイスキーは、樽(たる)熟成を経て琥珀(こはく)色に変わる。最も多く使われるのは、アメリカンホワイトオークのバーボン樽。実はアメリカでは、バーボンは新品のオーク樽の内側を焦がしたもので熟成することが法律で定められているという。だから、一度バーボンの熟成に使った樽は、バーボン用としては使えないのだ。必然的に他の酒類の熟成に使われることになる。次いで多いのは、シェリー樽。スペインの酒精強化ワイン、シェリー酒を熟成した樽だ。バーボン樽に比べて色が濃く、重厚な味わいになりやすいとされる。
筆者の個人的好みだったウイスキーは、スモーキーな香りが強いタイプ。コレが「ピート」の成せる業だったのだ。ピートとは泥炭とも呼ばれる化石燃料で、スコットランドに多い。特にウイスキーの聖地といわれるアイラ島には、森林や木材が少なく、薪(まき)を使わずピートを燃料としてきた。ピートで麦芽を乾燥させると、薫香がつくのだ。ピートの現物も見せていただき、貴重な体験ができた。
2021年、日本洋酒酒造組合がジャパニーズ・ウイスキーの自主基準を設け、品質は各段に良くなった。日本全国の蒸留所は、2026年4月時点で約120カ所に及ぶという。そんな中、小諸蒸留所の目指す、ウイスキーツーリズムに寄与する体験型施設としての魅力に、今後も期待したい。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




