TCVB三木次長
観光事業者のデジタル活用支援
東京都と公益財団法人東京観光財団は6月4日、都内の観光事業者のデジタル活用を支援する事業を発表した。「デジタルシフト初級セミナー」と「社内研修サポート」で構成される。東京観光財団観光産業振興部次長の三木元氏に、事業の背景と概要を聞いた。
――都内観光事業者を取り巻く現状をどのようにとらえていますか。
宿泊事業者を中心に慢性的な人手不足と生産性向上の必要性が指摘されており、業務の効率化・生産性向上へ向けたデジタル化は不可欠となっています。しかし現状では、他の産業に比べて観光業のデジタル化は進んでいないといわれており、その背景にはデジタル化への必要性に対する理解や人材の不足があります。
観光業、特に宿泊業には「おもてなし」の文化が根付いており、人が介在するからこその価値も多々存在します。全ての業務をデジタル化すればよいということではなく、業務を効率化する一方で「人の価値」を最大化する工夫が重要です。各事業者の実情に合わせてデジタル化を進め、観光業全体のデジタル化の底上げを目指すことが大事だと考えています。
――現場からはどのような声が届いていますか。
昨年度に実施したセミナーの相談会では「作業時間を減らしたい」「予約書や請求書の手動送信をやめたい」「問い合わせ対応の負担を減らしたい」「生成AIの活用事例を知りたい」といった具体的な悩みが届いています。
――「デジタルシフト初級セミナー」の概要を教えてください。
都内の観光業の中でも、特にデジタル化に取り組めていない、もしくは進みきれていない中小事業者を主な対象として、年2回(第1回は7月8日、第2回は11月予定)セミナーを開催します。内容は「基調講演」「取組事例紹介」「補助金の紹介」「個別相談会」の4部構成です。
第1回セミナーの基調講演には、観光業界のデジタル化に精通したトラベルボイス株式会社代表取締役社長の鶴本浩司氏が登壇します。鶴本氏からは、「観光とデジタルは、最も親和性が高い分野であり、デジタル活用が世界的に大きく進展している一方、日本はその潜在力を最大限に生かしきれていない。いま世界から最も注目される旅行先だからこそ、このタイミングでデジタル化を推進できれば」とメッセージが寄せられています。
事例紹介では、都内中小観光事業者自らがデジタル化の導入過程や成果、直面した課題を語ります。第1回セミナーでは、多言語対応のセルフチェックイン端末やスマートロックなどの導入で省人化運営を実現した宿泊施設OTHER SPACE Asakusaが登壇します。
また、「観光関連事業者デジタルシフト応援事業補助金」(1事業者最大200万円の支援)の紹介や個別相談会では、ITの専門家と財団職員が具体的な相談に対応します。
――「社内研修サポート」はどのような取り組みですか。
今年度から始まる新規事業で、都内の中小宿泊・旅行事業者の中から5社程度を対象とします。観光とデジタルの両面に知見のある講師を派遣し、各事業者の課題や要望に合わせたオーダーメイドのカリキュラムで実施する個別研修です。
経営層には「DX戦略の策定」や「人材育成」、リーダー層には「推進役としての役割認識」、現場スタッフには「実務のツール活用」など、立場ごとに最適化した内容を提供し、講師とのマッチングも重視しながら現場課題の解決や実装まで伴走します。
――これまでの支援事業との違いはどこにありますか。
これまで財団の支援は資金面が中心でしたが、昨年度から開始した「セミナーによる普及・啓発」「個別相談」に加えて、今年度からは「社内研修による導入支援」を追加し、知識普及と人材育成、さらには具体的なデジタル実装までを一気通貫でサポートする点が大きな違いです。
――対象事業者へのメッセージをお願いします。
「デジタル化は難しそう」と感じている方も、どうぞご安心ください。各事業者の特徴に応じて、基礎から実践まで段階的に、しかも途中でつまずくことがないよう、継続した支援を提供し、「自分にもできそうだ」と感じていただける内容にしています。この好機に、ぜひ一歩を踏み出していただきたいです。
▷「令和8年度観光関連事業者向けデジタルシフト初級セミナー及び社内研修サポート事業」の詳細

三木氏
【kankokeizai.com 編集長 江口英一】




