【KNT-CTパートナーズ会総会特集2026】特別対談 KNT-CTホールディングス代表取締役社長・小山佳延氏×KNT-CTパートナーズ会会長・堀泰則氏


固い握手を交わす2氏

固い握手を交わす2氏

 国内の人口減少に伴う既存マーケットの縮小など、かつてない勢いで旅行業界を取り巻く環境が変化している。KNT―CTホールディングス(HD)ではこうした変化にいち早く対応し、持続的な発展をさらに強化するべく、来年4月に傘下の中核3社と統合する方針を固めた。一方、宿泊・観光施設、運輸事業者などが加盟するKNT―CTパートナーズ会(KCP会、3196会員)もこうした未来を見据え、会社と一体となった地域共創を本格化させている。今回、KCP会の堀泰則会長(ひだホテルプラザ会長)とKNT―CTHDの小山佳延社長の対談を通して、グループが目指す将来像や両者の連携方針について話を伺った。(KNT―CTHD本社で。司会は本社メディア局編集部記者・水田寛人)

昨年度の総括

万博特需の一方、二極化が進行 宿泊業は売上増も人口減が影響

 ――昨年は、大阪・関西万博などの目玉イベントが多くあった。会社としての昨年度の総括を伺いたい。

 小山 2025年度は当社の創立70周年という節目の年だった。改めて当社の歴史を知る機会になった。

 大阪・関西万博については、パビリオン運営や関係者の宿泊手配などの特需によるプラスがあったものの、国内旅行で見ると大阪地区に相当数のお客さまが集まったのは事実だが、万博に需要が集中した分、需要が少なくなったエリアもあり、全体では横ばいとなった。これは、宿泊料金の高騰や物価高の影響も大きい。旅行に積極的な層とそうでない層の二極化が、国内旅行・海外旅行ともに起きている。

 万博以外だと、近畿日本ツーリスト(KNT)が「東京2025世界陸上」の取り扱いをしたのも大きな出来事だった。スポーツ関連のイベントはKNTの強みだ。イタリアでの冬季五輪大会や東京マラソンなど、昨年はイベントが豊作で業績もプラスになった。

 昨年は「JUNGLIA OKINAWA」(ジャングリア沖縄)の開業もあった。教育旅行や募集型旅行で一定の送客ができ、責務を果たせた。アトラクションに長時間並ぶことや、強い日差しを避けられる場所が少ないといった問題も起きているが、運営側にはしっかりと対応してもらい、われわれも寄り添いながら送客を続けていきたい。

小山佳延社長
小山佳延社長

   昨年度は「万博プラスワントリップキャンペーン」を実施し、万博に合わせて近隣県に泊まっていただこうと企画したが、お客さまの行動が万博に重点が置かれたことで、大きな成果を出すことはできなかった。周辺エリアの国内旅行は若干減少した、というのが実情だ。

 昨年の宿泊業界は、売り上げベースでは単価が上がっている分で伸びたが、人員ベースでは少子高齢化が影響して減少した。これは数字で明らかになっているため、業界としてしっかり注視していく必要がある。

堀泰則会長
堀泰則会長

 小山 昨年はクマによる被害も大きな社会問題になった。紅葉シーズンに大きく影響したほか、今年の春先も東北エリアへの旅行需要が芳しくない。われわれ旅行会社にできる対策は限られるため、受け入れ側である自治体には具体的な対策を可視化してもらいたい。

 訪日旅行も、日本で大地震が起こるとの予言が一部の市場で流行し、夏の需要が落ち込んだ。秋口には台湾有事問題で中国が反応するといったこともあり、翻弄(ほんろう)された。ただ全体としてはそれほど大きな影響は出ておらず、他のエリアがカバーした。こういった外的要因は過去を振り返っても必ず起きている。それに惑わされることなく、訪日旅行全体という視点で取り組んでいけばよいと考えている。

 ――KCP会は昨年に8連合会体制へ移行したほか、本部委員会に「地域共創委員会」を立ち上げた。

   現行体制に特に大きな問題はない。明確なテーマを持った連合組織として「事業軸」でしっかり取り組むことが大事だ。懸念点として感じているのは、地域によって旅館・ホテルの軒数に大きな差があることだ。県内に旅館が20軒弱程度しかないエリアもあれば、100軒以上あるエリアもある。地域差も踏まえた施策検討は今後の課題だ。

 地域共創委員会については、本部委員会だけではそれほど機能しないことが分かった。今年度は各連合会でも実施し、地域ごとにしっかりと展開させる。若手メンバーも含めて、次世代の新しい商品づくりをしっかりと進めていきたい。

 KCP会の最大のテーマは地域共創だ。そこに向けて会社といかにグリップできるかが重要だ。そのための施策を行っていきたいし、訪日旅行に関しても地方誘客の仕組みづくりを一緒に考えていきたい。

昨今の旅行市場

訪日市場が変化、顧客の多様化へ ストーリー性高い個人旅行も人気

 ――昨今の旅行市場の状況と今後の課題についてどのように見ているか。

 小山 いよいよ「旅行代理業」から、本来の旅の価値を作る「旅行業」に転換するタイミングを迎えていると実感する。旅行代理業は手数料で稼ぐコミッション商売だが、この分野はシュリンクしている。旅に価値をつけて団体・個人を取り扱うことに活路を見いださない限り、会社としての将来性はなくなってしまう。顧客の二極化が進む中で、どうやって付加価値を提供して会社を成長させるか。本気で考えていかなければならない。

 訪日旅行も、国内での営業では限界があり、海外の拠点をベースに営業する形にしないといけない。2030年までに海外拠点30カ所開設の方針を掲げているが、そこに共感する新入社員もたくさん入社している。人材活用を含めてしっかりと取り組んでいきたい。

   大きな変化として感じているのが、コロナ前と比べて大型団体がほぼ消えてしまったということだ。団体旅行の需要が減った分、個人旅行へのシフトが進んでいる。社内旅行やインセンティブ旅行なども、コロナ禍を機に市場が大きく変貌した。こうした需要は今後も復活は期待できない。MICE誘致にシフトし、団体客の獲得に努める必要がある。訪日旅行も、昨年は4千万人の訪日外国人観光客が来た中、中国からのお客さまが激減した。特にこの市場に依存していた関西エリアはある程度影響が出ただろう。

 ただそれほど大きく落ちたかというと、その分他の国・地域からの数が上回ってきたというのが実情だ。訪日客の国・地域別第1位が、今や中国から韓国にシフトしている。そして欧米各国からの訪日客がこの2、3月でも目立っている。円安が大きな要因だと思うが、日本の魅力が特に欧米に対してしっかり情報発信できていることもあると思う。昔ながらの伝統芸能だけでなく、アニメやキャラクターといった新しい文化を海外にしっかり発信できていることは大きい。

 私のいる岐阜県高山市の数字を見ても、昔はアジア客が6割を占め、欧米客は4割程度だったが、昨年度は逆転した。国も訪日外客数を今後6千万人にすると掲げており、地方誘客も推進している。ここで大手旅行会社が具体的な施策を実行すると、効果も大きくなるだろうと思う。

 ――欧米豪をはじめとする訪日客は、テーマ旅行に加え、ストーリー性のある商品にも強い関心を示している。

   まさにその通りで、クラブツーリズム(CT)が持っているテーマ旅行を海外のお客さまにしっかりアピールできれば、そのマーケットは間違いなく広がっていくと見ている。熊野古道が世界遺産になったように、欧米の方にはストーリー性や文化的な背景のあるコンテンツが響く。ここはしっかりと発信していく必要がある。

 小山 ゴールデンルートから、地方にどうやって誘客していくかは、OTAではなくわれわれリアルエージェントが担うべき領域。そういう使命感を持ちながら事業展開していきたい。中国市場についても、今年は「劇的に何か好転することはない」という前提で考えていった方がよいだろう。去年の状態が今年も続く前提でさまざまな施策を打ち、訪日客の多様化を進めていかなければならない。

   テーマ旅行は本当に伸びている分野だ。旅行に行く方も目的が明確化しており、「なんとなく旅行に行こうか」という感覚がなくなってきている。CTの強みであるストーリー性・テーマ性の部分を組み込んだ個人旅行を提案することで、OTAとは違う形で個人旅行市場に対応していくことができる。

 国内旅行は少子化の中で間違いなく縮小していく。それを受け入れた上で、どのように商品造成し、誘客していくのかが大事だ。

グループ3社統合への対応

組織再編で個人・団体旅行強化 将来見据えた改革に会員も期待

 ――来年4月の1社化について、その背景と狙いを教えていただきたい。

 小山 旅行業を取り巻く環境は、人口減少に伴う国内市場の縮小、交通機関や宿泊機関による直販化の進展やAIの台頭など構造的な変化に直面しており、ビジネスモデルの抜本的な転換が重要な経営課題となっている。

 当社は、2013年にCTの経営統合以来、持株会社体制によりグループ全体の経営管理を担ってきたが、持続的成長を実現するためには、戦略の意思決定から実行まで一体で推進する体制のもとで、成長領域や新規事業への取り組みを加速させるとともに、各社に共通する部内の再編を通じて、業務の効率化を進める必要があると判断して、来年4月をめどに1社化することを決定した。

 ――今年の4月から、すでにグループ傘下で会社分割を進めている。

 小山 1社化を前に、個人旅行、団体旅行の事業構造改革を今年4月に先行して実施した。個人旅行においては、現在、KNTとCTはそれぞれ課題を抱えている。KNTはレッドオーシャンである素材型販売の中で苦戦している。一方のCTは、メイン顧客が高齢化しており、次世代顧客へのアプローチが弱い。

 この二つの課題を、CTがKNTの個人旅行を吸収する形で解決を目指す。KNTの個人旅行の顧客はファミリー層が多い。この「ファミリー層からシニア層へ」という顧客連携のストーリーを描きながら、CTのストーリー性・テーマ性を組み込んだ個人旅行を若い世代にも発信し、新たな顧客を獲得する。仕入部門、企画部門、店舗を全て統合し、グループ全体で個人旅行を強化する体制を整える。

 団体旅行を担うKNTでは、これまでエリア軸(地域支社体制)で事業を行ってきたが、これでは横串での事業戦略実行が困難だ。特に教育旅行。昨年度は海外行きを含め大きく伸びたが、それでも学生の数は今後減っていく。法人旅行も含めて、今後は事業軸で取り組んでいく。

 4月のKCP会役員の皆さまとの会合でもその経緯を説明させていただいたが、非常に前向きな意見をいただけてほっとしているところだ。

 世の中の変化に対応できずに衰退していった事例はたくさんある。それらを教訓に、旅行という分野にこだわりすぎず、旅行外も含めて成長させていく。

 当社の社員と話をすると、1社化に向けて新たなアイデア創出など前向きな議論がたびたび起こる。これにはすごく期待している。人口減少が業績に影響し始めるのは5年くらい先だと思うが、だからこそ今から準備してそれに対応できる体制を作ることが重要。今回の1社化は非常に良いタイミングだ。

 ――KCP会としては、1社化をどのように受け止めている。

   会員一同歓迎している。より新しい、強い会社になるだろうと期待している。今後も会社と一体となってしっかり事業を進めていくことに変わりはない。今年4月には、個人旅行事業がCTに集約され、個人旅行にしっかりと注力してもらう体制づくりも整いつつある。

 「価値創造企業になる」という大きなビジョンが1社化により明確になることで、KCP会も一丸となって動いていけるということは非常に大きいし、実際に会員はそこに期待している。スピード感を持ち、今後もあらゆる部分で変化に対応していただけることを願っている。

 KCP会は宿泊施設が1915会員、運輸が544会員、観光施設が737会員と、計3196会員で構成される。会員はそれぞれの地域に根ざしている。テーマを持った商品構成をしていくためには、会社とともにKCP会が地域の商品力を高め、情報をしっかり提供しながら一緒に誘客することが大事だ。

対談の様子。会社との連携による地域活性化の将来像を語り合った
対談の様子。会社との連携による地域活性化の将来像を語り合った

今年度の注力事業

地域に入り、活性化施策を企画 DMCとしての好事例を全国に

 ――今年度の注力事業についてお伺いしたい。

 小山 昨年のような大型イベントがないため、地域との連携をより強化していきたい。昨年度は岐阜県高山市や島根県と包括連携協定を締結させていただいているが、地域への送客だけでなく、地域産業の活性化や地域課題の解決といった部分まで、連携の目的が広がっている。

 2025年の日本人の人口は、前年同様に出生者数・死亡者数の差し引きで約90万人の自然減となった。このペースで減り続ければ、将来的に自力の税収で運営できなくなる自治体も出てくるはずだ。

 10年、20年後にそうなったとき、われわれが地域のために何ができるか。誘客事業だけでなく、地域と一緒になって考えるような時代になっていく。地域に本当に役立つ会社として伴走するというのが、われわれが目指すDMCとしての最終形だ。

 方法はいろいろある。現在は新規事業として地域の伝統工芸品を海外に発信する事業に挑戦しようとしている。地域の祭りに人を派遣するような事業、旧街道を育成・再整備するような事業など、旅行業そのものだけでなく、その周辺も含めて地域の人たちと寄り添いながら実行していきたい。

 当社の成長領域である「訪日事業」「地域共創事業」については、地道な活動が必要であり、大成までの間は旅行事業が支えることになる。

 それには、価格から価値へのシフトが肝となる。当社では、入社から3年間は異動させないという条件付きの「目的採用」を訪日事業と地域共創事業で行っている。すでに優秀な人材が活躍しており、特に訪日事業では、早めに海外経験を積んでもらうことも検討している。

 また教育旅行分野では、学校向けの相談や提案をオンラインで行う専門部署「教育旅行オンラインコンタクトセンター」を今年4月、KNTに設立した。昨年、育休明けの女性社員がオンラインで学校に営業を行い、修学旅行の実施まで結びつけるという事例がいくつかあったが、こうした流れを組織として定着させるべく、新たに動き出したところだ。

 今年度の新入社員の7~8割が女性だ。今後その傾向がさらに顕著になる見込みだ。そうなると、結婚・出産・育児というイベントを乗り越え、継続して働けるような環境を作ることも新たなミッションになる。フルタイムで働けない状況でも、自宅からウェブで営業できる環境を作っていきたい。

   今年度の新しい取り組みとして、女性の経営者や若手幹部向けの講座を立ち上げる。2023年まで実施していた「女性文化講座」に代わり、経営的な視点を持つ若女将や女性幹部社員を輩出できるような、将来を語れる楽しみのある講座にしたい。宿泊施設の中には、経営体制が大きく変わる事例も出てきている。事業承継問題なども含め、まずはこうした対応策を考えるセミナーとして構築していく。

 また、地域共創委員会活動の各連合会への展開に加え、団体客の獲得にも努める必要がある。そこで今年度から、KCP会の中にホテル群も含めた「MICE委員会」を立ち上げる。大都市だけでなく地方にもMICEを誘致できるよう、会社と体制づくりを進めていく。

 先日出席したCTの全社会議では、「価値創造企業」になるというテーマが明確に示された。地域や人材など、いろいろな価値を創出する複合企業になるという大きなテーマを掲げられていた。われわれサプライヤーとしても感動したし、一緒についていきたいという気になった。

 高山市には、KNT―CTHDの地域共創事業に携わる入社2年目の若い社員が来ているが、地域でのイベントなどで汗をかいて携わってくれている。「毎日が刺激的で非常に勉強になります」と話していた。現在はCTの社員も出向で来ており、地域を盛り上げるDMCの仕組みづくりを考えていただいている。一つの成功モデルになればと期待している。

昨年10月、「秋の高山祭」(写真)の開催中にKNT-CTHDとの連携協定を締結した岐阜県高山市。会社とともに、1次産業も含めた地域経済の活性化を目指す
昨年10月、「秋の高山祭」(写真)の開催中にKNT-CTHDとの連携協定を締結した岐阜県高山市。会社とともに、1次産業も含めた地域経済の活性化を目指す

 小山 地域に出向経験のある社員は、帰任後も活躍している。地域の良さや実情を分かっているので、商品造成にも変化が起こる。現在は高山市と島根県で事業を展開しているが、これらを成功事例としてモデル化すれば、他地域にも伝播させることができるだろう。

 DMOは全国で増えてきているが、DMCがうまく機能していないというのが今の日本の課題だ。われわれは、地域活性化を担う事業者として参画していきたい。DMCとして地域に根ざしながら、どうやって旅行以外の事業を作り出せるのかを考えながら取り組んでいる。

   DMOの課題は、「稼ぐための事業軸を持っていない」ことだ。DMCとして会社には事業軸を作っていただくことで、着地型ツアーなども含めた事業を確立できる。そうすれば、地域産品の海外発信なども担えるようになる。今後はDMOとDMCの役割分担も明確になっていくだろう。

 小山 われわれが行っている旅行外の新規事業「未来創造事業」も、現在は地域に根差した事業を考えるという視点で取り組んでいる。地域の伝統工芸品を海外に発信するなど、事業としてすぐに花が咲くわけではないが、今も若い社員が地域のために何ができるのか、一生懸命新規事業を考えている。こうした活動は、今後も継続していく。

会社とKCP会の今後の連携

「会社が地域にできること」明確に 議論の場を設けて事業「継続」へ

 ――会社とKCP会、今後はどのように連携を。

 小山 今回も全く考えは変わっていない。それは「世代交代」への対応だ。

 KCP会の会員の皆さまも今まさに世代交代が始まっている。世代が変わると考え方も変わる。次世代の方々は「地域のために具体的に何ができるのか」を常に考えているし、そこを旅行会社に求めている。従来のような付き合い方ではもう通用しない。地域ごとに何をするべきかを明確にし、次世代の方々に受け入れられるような会社にする。そこは絶対にずらしてはいけない。

   地域と会社の連携では、良い事例がたくさん出てきている。観光庁の高付加価値化事業を会社と一緒に取って地域を変えていくといった事例も生まれてきている。KCP会としても情報を整理しながら、こうした好事例の発信を会員に向けて行っていきたい。

 小山 キーワードは「継続」だ。どの事業も、単年度ですべてが決まるわけではない。答えがあるものは簡単だが、われわれが取り組んでいることにはまだ、答えがない。トライしながら事業を育てていき、自分たちで答えを導き出さなければいけない。最終的には補助事業に頼らない自走化も必要で、それを証明していくことが大事だ。

   次世代の方々には、持続可能な地域づくりを一緒に作っていくという意識を持ってもらうことが大事で、そのための議論の場を設けることが必要だ。「継続」という形の中で、長期的視点で会社とともに地域共創に挑み続けていきたい。

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