【地域創生と観光ビジネス100】「産官学金労言士」韓国ソウルで日本の地方創生をテーマに講演 千葉千枝子


 ゴールデンウイーク前半の4月30日、韓国ソウルの国際展示場COEX(コエックス)で開催された旅行博「All That Travel」で、「日本の地方創生の現在と未来―政策、トレンド、そして成功事例―」と題して講演をした。

 主催はイーデイリー新聞社。今、韓国では、首都ソウルの人口一極集中と少子高齢化から、消滅可能性自治体や地方創生に高い関心が寄せられ、特に日本の成功事例に興味があるという。

 というのも韓国では、「人口減少地域支援特別法」が23年に施行され、ソフト面での対応が喫緊の課題となっていた。それまでは集客施設や道路、橋梁などを建設する、いわばハード支援が主体だったものを、日本を例に、ソフト転換させたいとする考えが有識者の間で広まり始めていた。

 わが国の「まち・ひと・しごと創生法」の施行は14年。25年には「地方創生2.0構想」が閣議決定され、関係人口の量的目標も示された。私たちには耳慣れた造語だが、関係人口、交流人口、そして定住人口の説明の場面では、熱心にメモをとる人の姿も。さらに「産官学金労言士」は、翌朝のニュースに取り上げられた。

 さて、今回の講演オファーは、昨年の統営や公州の講演で一緒した嚴相鎔(オム・サンヨン)博士からの依頼。それが「もう1人、地域で実際に地方創生を手がける人をお呼びしたい」との注文があり、登壇者の推薦リストを提出したのが1月末のことだった。

 そのリストのなかで白羽の矢が当たったのが、群馬県・片品村役場の地方創生室長・高橋祐介氏だった。実は高橋氏とは、今から35年前に同じ旅行会社の某支店で共に働いた仲でもある。

 高橋氏の講演パートでもっとも聴衆の興味を引いたのが、総務省「地域活性化起業人」の制度説明だった。彼自身、最初は旅行会社からの企業派遣で村に赴き、任期満了後は役場に残って、村の発展のために今も尽力する。正真正銘の公務員なので、今回は私費で参加してくれた。ありがたいことだ。しかも講演時には、村が作成した「るるぶ片品村(特別編)」を配布して熱弁を振るい、村の大きなPRにもなった。

 その片品村では、23年から、梅澤志洋村長をトップに、村内事業者や尾瀬高生、一般村民らで構成する「尾瀬かたしな未来構想委員会」を定例開催している。筆者は委員長を、全体の進行役は立命館大学ビジネススクール教授で経営コンサルタントの宮口直人氏が担う。傍聴席はいつも満席。熱量たっぷりに真剣な議論が交わされる。わが村を”誇り”に感じているのが伝わり、いつも感動する。

 ところで今回は、24年開業の共立メンテナンス「ドーミーインEXPRESS SEOUL 仁寺洞(いんさどん)」に宿泊した。大浴場があり、朝食ブッフェもおいしい。手配してくれたのは、YHP社の山本宏史氏。高橋氏とは旅行会社時代の同期の仲で、筆者の先輩”指導社員”である。今は独立して、日韓の架け橋としても活躍する。私たちの渡韓にあわせて、ソウル入りしてくれた。

 講演を成功させて最終日、私たち3人は、東大門(とんでむん)にある巨大スパ・サウナで垢すりに興じた。かつて一緒に海外添乗をしていた、若いころを思い出した。
(観光ジャーナリスト・淑徳大学経営学部観光経営学科教授 千葉千枝子)

 
 
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