伊豆長岡温泉 三養荘は5月13日、日本に古くから受け継がれてきた観月文化における「月見台」を新館に復元し、日本庭園が織りなす四季折々の景色とともに月を眺める滞在体験の提供を開始した。お茶会やジャズイベントなど、季節ごとの体験プログラムも順次展開する。「庭園と月が織りなす静謐なひとときを」——歴史ある建築空間に再び息吹を吹き込む試みだ。
開業当時の設えを復元、「往時の趣を現代に甦らせる」
三養荘は静岡県伊豆の国市に所在し、1947年10月に開業した老舗旅館だ。旧三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎氏の長男・久彌氏の別邸として、壮大な日本庭園の中に建てられた。歴史と格式ある数寄屋造りの本館は有形文化財に登録されており、新館は文化勲章受章者の建築家・村野藤吾氏の設計によるもの。近代日本庭園の先駆者とされる京都の庭師・小川治兵衛氏の手によるおよそ3,000坪の日本庭園が広がる。
月見台を復元したのは、この村野藤吾設計の新館だ。三養荘によると、開業当時、日本庭園を望む位置に月見台が設けられていたが、「時代の変遷とともにその姿は失われていた」という。このたびの復元は、「創業当時の設えと思想をもとに」実施されたもので、「往時の趣を現代に甦らせるとともに、月と庭が織りなす静謐なひとときを、改めてお楽しみいただける空間として整えた」としている。

奈良・平安の宮廷文化に起源、月を愛でる日本独自の美意識
月見台とは何か。三養荘の説明によれば、月見台とは「日本に古くから受け継がれてきた観月文化の中で、月を鑑賞するために設けられてきた空間」だ。庭園や池を望む場所に設けられることが多く、自然とともに月を眺めながら静かな時間を過ごす、日本ならではの文化として親しまれてきた。
観月の文化は奈良から平安時代にかけて宮廷文化の中で広まったとされる。月を眺めながら和歌を詠むなど、月は日本人の美意識や季節感を象徴する存在として受け継がれてきた。三養荘は、この文化的背景を持つ月見台を、庭園と建築が調和する村野藤吾の設計空間に復元することで、「静かな庭園の景色とともに月を眺める、唯一無二の空間が生まれる」と述べている。

四季折々の体験プログラム、外来利用も可能
三養荘は月見台を舞台に、季節ごとの体験プログラムを展開する方針だ。春は「自然の音に耳を傾けながら楽しむお茶会」、夏は「月夜とともに楽しむ音楽の夕べ」、秋は「名月を愛でる観月会」、冬は「星空の下でこたつバー」と、四季それぞれの楽しみ方を設定している。
これらの体験は宿泊客に限らず、外来利用も可能だ。現在発表されている体験は以下の2プログラム。
お茶会
月見台にて立礼式のお茶振る舞いを開催する。6月より不定期開催。時間は正午から午後2時まで。料金は2,500円、定員は15名。

月見台ジャズイベント
2026年7月10日(金)、夕食後に月見台にてジャズナイトイベントを開催する。時間は午後5時30分から午後8時まで。料金は3万2,000円(夕食、ジャズ鑑賞、消費税・サービス料込み)。内容は夕食と月見台でのジャズ鑑賞。雨天時は館内にて実施される。内容は変更になる場合がある。

「プリンスシグニチャー体験」の一環、グローバル展開を視野に
今回の月見台復元・体験提供は、西武プリンスホテルズ&リゾーツが2026年4月から展開を開始した「プリンスシグニチャー体験」シリーズの1つとして位置づけられている。
同社はこのシリーズについて、「日本をオリジンとしたグローバルホテルチェーン」への成長を掲げ、「五感を揺さぶる体験創造」をテーマに、「記憶に残る旅の喜び」の創造に取り組む中で展開するものだと説明している。全国各地で同社が運営するホテル・スキー場・ゴルフ場のそれぞれにおいて、施設の「顔」となる象徴的な体験価値を「プリンスシグニチャー体験」と名付け、2026年4月から数年かけて順次発表・提供を開始していく方針だ。
第一弾として、晴山ゴルフ場での「ワンちゃん同伴ラウンド」と、三養荘の「月見台」を皮切りに展開。その施設・その季節ならではのサービスを拡充し、「施設独自の個性と魅力を体現する『ここでしか味わえない特別な体験』や『多様化する需要にお応えする体験』を提供していく」としている。同社はこれにより「ホテルでの滞在そのものが旅の目的となり、国内外のお客さまから選ばれるグローバルホテルチェーンとして差別化を深化させ、世界中から愛されるブランドの確立を目指す」と述べている。

「日本の伝統文化の継承やその価値発信に取り組む」
三養荘は今回の取り組みについて、「歴史ある建築と庭園が織りなす空間の魅力を大切にしながら、日本文化の美しさや魅力を感じていただける滞在体験を提供することで、日本の伝統文化の継承やその価値発信に取り組んでまいります」と表明している。
村野藤吾設計の新館という、建築そのものが文化的価値を持つ空間に、観月という日本古来の文化を再び宿らせた月見台。庭園と建築と月——三養荘が現代に問いかける「日本の趣」の形だ。

施設概要
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施設名:伊豆長岡温泉 三養荘
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支配人:吉浦 正博
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所在地:静岡県伊豆の国市墹之上270
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開業:1947年10月
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お問合せ:TEL 055-947-1111
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アクセス(電車):伊豆箱根鉄道 伊豆長岡駅からタクシーにて平常時5分(予約制シャトルバス有)
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アクセス(車):伊豆中央道 伊豆長岡北I.C.より平常時5分






