ホテル関係事業が4期連続過去最高、インバウンド追い風に905億円——森トラストグループが2026年3月期業績を発表


 森トラストグループは5月21日、2026年3月期(2025年4月1日〜2026年3月31日)の連結業績を発表した。

 グループ全体の営業収益は前期比14%増の3,210億円と過去最高を更新。なかでもホテル関係事業は前期比13%増の905億円となり、4期連続で過去最高を記録した。2027年3月期の同事業の予測は1,000億円で、さらに5期連続での過去最高更新を見込む。

インバウンド2年連続過去最高が後押し

 ホテル関係事業の好調を支えたのは、インバウンド需要の力強い回復だ。

 2024年に続き2025年も、訪日客数と訪日消費額の両方で2年連続の過去最高を記録。シティホテル、リゾートホテルともに高水準の稼働率と客室平均単価を達成した。

 前期に続き東京のラグジュアリーホテルが好調だったほか、2025年10月に取得した米国・マンハッタン所在のラグジュアリーライフスタイルホテル「エクイノックス・ホテル」(Equinox Hotel New York)と、老舗ベーカリー「ブランジェ浅野屋」を運営する株式会社浅野屋の収益寄与もあり、業績を押し上げた。

マンハッタン「35 ハドソンヤード」取得——米国不動産12棟目

 2025年11月、森トラストの米国子会社・森アメリカ社(MORI America LLC)を通じて、米国・マンハッタンに所在する大規模複合ビル「35 ハドソンヤード」(35 Hudson Yards)の区分所有権(1階から30階部分まで)を取得した。

 同社にとって米国における不動産投資実績としては12棟目、マンハッタンでは2棟目となる。

 「35 ハドソンヤード」の15階から29階に入居する「エクイノックス・ホテル」は、高級フィットネスを北米中心に展開するエクイノックス社が運営するウェルネスに特化したラグジュアリーライフスタイルホテル。世界で唯一、ハドソンヤードにのみ所在する施設だ。

 2027年3月期の賃貸関係事業の業績予測においても、「東京ワールドゲート赤坂 赤坂トラストタワー」の通期稼働とともに、この「35 ハドソンヤード」の通期収益寄与が柱に据えられている。

国内外35施設、新規16プロジェクト

 森トラスト株式会社のホテル&リゾート事業では、2026年3月時点で国内外に35のホテル施設を展開し、16件の新規プロジェクトを推進している。

 国内の既存ホテルは東北から沖縄まで幅広く展開。主要施設を挙げると以下のとおりだ。

  • 東京エディション虎ノ門、東京エディション銀座、コンラッド東京、1 Hotel Tokyo、東京マリオットホテル(関東)

  • 翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都、紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良、JWマリオット・ホテル奈良、琵琶湖マリオットホテル(近畿)

  • イラフ SUI ラグジュアリーコレクションホテル 沖縄宮古、シェラトン沖縄サンマリーナリゾート、ヒルトン沖縄瀬底リゾート(九州・沖縄)

  • エクイノックス・ホテル(ニューヨーク)

 新規プロジェクトは、軽井沢(塩沢、長倉、東雲)、箱根(強羅、中強羅、強羅北)、京都祇園、京都四条、金沢広岡、飛騨高山、熱海来宮、白馬咲花、元赤坂一丁目、品川三田、沖縄冨着、札幌大通公園など、国内各地の観光地・都市部に及ぶ。

 インバウンド需要の受け皿拡大や旅行者一人当たりの消費単価向上を見据えた取り組みとして位置づけられている。

「1 Hotel Tokyo」開業——東京ワールドゲート赤坂に新展開

 2026年3月には、米国発のサステナブルラグジュアリーホテル「1 Hotels」(ワンホテルズ)のレジデンスブランド「1 Homes」(ワンホームズ)を冠した「1 Homes Tokyo」が「東京ワールドゲート赤坂」の上層階にアジア初上陸した。

 「東京ワールドゲート赤坂」は2025年10月に第2期竣工を迎えており、「赤坂トラストタワー」「NTT赤坂ビル」「ATT EAST」の3棟で構成。敷地面積は約1万7,980平方メートル、延床面積は約23万6,200平方メートルで、オフィス、ホテル、ブランデッド・サービスレジデンス、店舗、クリニック、歴史文化発信施設などの主要用途を持つ複合街区だ。所在地は東京都港区赤坂二丁目。

 2026年2月から順次オープンしたショップ&レストランでは、4つの新業態を含む14店舗が加わり、全18店舗の構成となった。東京ワールドゲート赤坂のオフィスで働く1万人超のワーカーをはじめ、ホテル・サービスレジデンス利用者、近隣の方々にとって「日常的なランチ利用から、仕事終わりのひととき、同僚とのコミュニケーション、取引先との会食まで、多様な食のシーンを支える商業エリアの形成を目指している」としている。

 2027年3月期のホテル関係事業の業績予測では、この「1 Hotel Tokyo」の収益寄与と「エクイノックス・ホテル」の通期収益寄与が加わることで、5期連続過去最高となる1,000億円の営業収益を見込む。

全体業績——営業収益3,210億円、過去最高更新

 グループ全体の連結業績を改めて整理すると次のとおりだ。

 2026年3月期の営業収益は3,210億円(前期比14%増)。営業利益は605億円(同12%増)。経常利益は645億円(同7%増)。親会社株主に帰属する当期純利益は392億円(同6%増)。

 各事業の営業収益内訳は、賃貸関係事業が1,021億円(前期比5%増、4期連続過去最高)、ホテル関係事業が905億円(同13%増、4期連続過去最高)、不動産販売事業が1,004億円(同17%増)、その他事業(請負工事等)が279億円(同41%増)。

 前期(2025年3月期)との比較では、営業収益2,816億円から約394億円増加した。

 連結貸借対照表では、資産合計が1兆8,225億円、負債合計が1兆1,352億円、純資産合計が6,873億円(2026年3月31日現在)。

「Advance2030」目標に向け着実な進捗

 森トラストグループは2023年11月、2016年に策定した中長期ビジョン「Advance2027」を改定し、「Advance2030」として新たな目標を設定している。

 2030年度に向けて1兆2,000億円の投資目標を掲げるとともに、2031年3月期の目標として営業収益3,300億円、営業利益700億円を設定した。

 「Advance2027」策定時にあたる2017年3月期の実績は営業収益1,402億円、営業利益303億円。今回の2026年3月期実績では営業収益3,210億円、営業利益605億円と、約9年間で両指標ともに約2倍の水準に達した。

 「Advance2030」のアクションプランは不動産事業(賃貸および分譲)、ホテル&リゾート事業、投資事業の3本柱。ホテル&リゾート事業においては、「ジャパンブランドの発信」「グローバルスタンダード」「イノベーション」「観光先進国へ」の4項目を行動指針として掲げている。

新規投資——映画ファンド、サーモン養殖、物流施設、蓄電所

 ホテル関連以外でも、2026年3月期は新規領域への投資が相次いだ。

 2026年1月には、株式会社K2 Picturesが運用する映画製作ファンド「K2P Film Fund I」に3億円を出資。「映像コンテンツが、制作過程や公開後において、ロケツーリズムなど新たな観光資源として機能することに期待を寄せ」、保有施設のロケ地提供にも協力していくとしている。

 2025年6月には、三重県津市においてアトランティックサーモン養殖を実施するピュアサーモンジャパン株式会社の運営ファンド「8F Aquaculture Fund Japan I LP」に出資し、サーモン陸上養殖プロジェクトに参画した。

 2026年3月には、グループのエスリードリアルティ株式会社と共同で、兵庫県神戸市の六甲アイランドにおいて冷凍・冷蔵機能を備えた賃貸物流施設「神戸六甲 MT Logi Cold」を開発。グループにとって初の物流施設事業となる。

 また、2026年2月には系統用蓄電所の開発・事業運営を目的とした特別目的会社を設立。滋賀県守山市にて2026年夏に建設を開始し、2027年下期に運転開始を予定する「琵琶湖蓄電所プロジェクト」を始動した。

創業以来初の企業CM——「可能性デベロッパー」

2025年12月には、1951年の創業以来初となる企業CMを制作した。森トラストグループが所有・運営する、1894年創業の日本有数のクラシックホテル「万平ホテル」を舞台としたもので、「不動産デベロッパーの枠を超え、あらゆる可能性をデベロップメント(開発)していく」という想いを込めた新たなブランドメッセージ「可能性デベロッパー」を発信した。

サステナビリティ——再エネ電力100%、健康経営ホワイト500に初認定

 2026年3月期のサステナビリティ活動においても各種実績が報告されている。

 賃貸オフィスビルへの再生可能エネルギー電力導入率は2024年度に100%を達成し、2025年度も100%を維持した。ホテルで使用するアメニティのプラスチック削減量は2025年度に20.9トン(前年度比1.00トン増)。賃貸オフィスビルの環境認証では、赤坂トラストタワーにてWELL Core Gold認証を取得した。

 職場環境に関しては「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に7年連続で認定されるとともに、2026年3月期に初めて「ホワイト500」に認定された。育児休業取得率は合算93.8%(女性100.0%、男性91.7%)。

 TOKYO WORLD GATE CoCo Loungeの延べ年間利用実績は7万3,521名。外国人居住者向けコンシェルジュ対応件数は1,793件(前年度比49.9%増)。神谷町・御殿山・丸の内・仙台エリアにおけるエリアマネジメントイベント実績は45回。2025年10月の東京ワールドゲート赤坂第2期竣工に伴い、2,000平方メートルの帰宅困難者スペースも整備された。

2027年3月期予測——営業収益3,470億円、3期連続過去最高へ

 2027年3月期(予測)の連結業績は、営業収益が前期比8%増の3,470億円(3期連続過去最高)、営業利益が同15%増の700億円を見込む。

 一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は同10%減の350億円となる見通しだ。

 各事業の営業収益予測は、賃貸関係事業が1,200億円(5期連続過去最高)、ホテル関係事業が1,000億円(5期連続過去最高)、不動産販売事業が1,000億円、その他事業が270億円。

 賃貸関係事業では「東京ワールドゲート赤坂 赤坂トラストタワー」の通期稼働と米国・マンハッタン「35 ハドソンヤード」の通期収益寄与が、ホテル関係事業では「1 Hotel Tokyo」の収益寄与と「エクイノックス・ホテル」の通期収益寄与がそれぞれ業績を牽引する見通しだ。

 
 
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