【VOICE】酒蔵を地域の観光拠点に 本家松浦酒造場 十代目蔵元 松浦素子氏


松浦氏

多様な切り口で日本酒の魅力紹介

 地方における観光振興の重要性が高まる中、地域資源をいかに磨き上げ、持続可能な形で発信していくかが問われている。私どもは酒蔵こそが磨き上げるべき資源と考える。

 酒蔵は単なる製造の場ではなく、地域の歴史や文化、風土を体現する拠点であり、日本酒は、その土地の水、米、気候、そして蔵人の営みによって生み出される。訪れること自体が地域の魅力を体感する観光体験であり、五感を満足させてくれるコンテンツになる。

 本家松浦酒造場は、徳島県鳴門市で唯一残る日本酒醸造蔵。創業1804年当時の酒蔵を直売所、飲み処などのスペースに使用。2013年に小さな直売所スペースからスタートし、自分好みの日本酒を見つけられる接客を丁寧に行うこと、さらにコロナ禍で増えたキッチンカーも呼び込み、大型イベントを実施することで集客を確実に伸ばしてきた。

 昨年末からは従来の蔵見学に加え、近年は体験型コンテンツの充実を図っている。発酵タンクを含めた蔵内見学にとどまらず、工程ごとの味わいの違いを体感するセミナーや試飲体験など、日本酒を「理解し、味わう」プログラムを展開している。 

 また、文化財である建物空間や直売所、飲食機能を生かし、滞在そのものに価値を持たせる取り組みも進めている。

 さらに、酒造り現場を体験できるプログラムや、地元ホテルでフレンチと日本酒を組み合わせたプログラムなど、日本酒に触れていただく多様な切り口を展開。来場者の方々が五感で満足いただけることで、より記憶に残る酒蔵となることを目指す。

 こうした取り組みは、酒蔵単体の魅力向上だけでなく、より地域とのつながりを深める目的もある。近隣の醤油(しょうゆ)蔵、大谷焼窯元、藍染め、宿泊施設、飲食店など観光事業者との連携や地域資源との掛け合わせにより、酒蔵を核とした地域全体の観光の可能性も見据える。

 その原点には、小布施町の酒蔵を訪れた際の体験がある。地域全体が一体となり、文化や景観、産業を磨き上げることで、訪れる人々を惹(ひ)きつけている姿に深い感銘を受けた。

 私たちもまた、そのような地域の在り方を一つの目標としながら、決して背伸びをすることなく、今できることに丁寧に向き合い、目の前にある資源を磨き続けていきたいと考えている。積み重ねの先にこそ、魅力ある地方の未来と酒蔵のさらなる100年を実現してくれると信じている。


松浦氏

 
 
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