宮田氏
生活者と事業者が共に生き続けるために
能登半島地震から2年半を迎える。インフラはおおむね復旧し、日常生活は平時に戻ったかのように見えるが、和倉温泉は今なお公費解体など再建への歩みが続いている。北但大震災からの城崎温泉の再生に象徴されるように、先代たちが幾多の困難を乗り越えてつないできた復興のバトンを次世代へ渡すためには、地域の担い手による決断を支えていく必要がある。
2024年6月に設立された和倉温泉創造的復興まちづくり推進協議会は、単なる復旧を超えた創造的復興のかじ取りを担ってきた。
一方で、復興が遅いのではないかといったご意見をいただくことも否めない。震災前からの構造的課題に加え、人材不足や国際情勢の影響なども重なり、災害固有の問題にとどまらない複合的な要因が絡み合っているため、その解決は単一の施策や短期的な対応で成し得るものではなく、「早く震災前に戻る」ことだけを目標とする復旧では、かえって時代の変化に取り残されかねない。
能登半島のような過疎地域においては、個別企業の再建を超えた、面的な連携こそが解決の鍵である。物価高騰や人口減少といった厳しい現実のなか、自社の利益を超えて地域全体の永続を優先する利他の姿勢が持続可能性に直結する。この考えに共感した地域内外の企業や観光庁をはじめとする行政から、被災直後より継続的な支援をいただいている。
協議会の取り組みは、地域に暮らす人々の豊かさを追求する自治そのものであり、希薄化していた地域コミュニティの再構築にもつながっている。まちの景観の議論や防災計画の整備といった地道な積み重ねは、生活者と事業者が共に生き続ける基盤を築く挑戦である。地域資源や暮らす人々の豊かさに対価が払われる産業であるからこそ、こうした課題に平時から向き合う体制構築が重要である。
コンセプトである「能登の里山里海を”めぐるちから”に。和倉温泉」には、観光で得た外貨を地域内に循環させる責任への覚悟が込められている。域内消費を優先するバイローカルの推進はその実践であり、地域のオーセンティックな体験を求める観光客のニーズとも合致する。さらに今年採択された脱炭素先行地域の取り組みもその延長にある。温泉熱の再利用や共同メンテナンス化により、コスト削減と資源維持の両立を図る。
担い手たちは今も、忘れ去りたい震災という現実に向き合い走り続けている。和倉温泉の今を、ぜひその目で見ていただきたい。

宮田氏




