JR九州(九州旅客鉄道株式会社)は4月15日、公衆回線を使用する無線式列車制御システム(RKシステム)を長崎地区に導入すると発表した。2028年度中の一部区間への導入を皮切りに、順次区間を拡大していく方針だ。
少子高齢化や人口減少が進む中で、交通ネットワークを長期的に維持するため、JR九州は安全性を維持・向上しながら業務運営の効率化を進めている。
列車の安全を確保する設備についてはこれまで、設備点数が多く複雑な構成が基本となっていた。今回発表されたRKシステムは、こうした従来の構造を「抜本的に見直す」(同社発表)ものと位置付けられている
RKシステムとは何か
RKシステムは「無線式(Radio communication)列車制御システム・JR九州(Kyushu)」の略称だ。
現行の列車制御システムでは、指令所・駅機器室・踏切制御装置などがすべて自社自営の有線回線でつながれており、地上設備が主体の構成となっている。信号機や線路との接続も有線で行われ、設備数が多くなることが課題とされてきた。
RKシステムでは、情報伝送に公衆回線の無線ネットワークを活用する。無線中央装置を中心に、各駅機器室や踏切器具箱には「無線インターフェース装置」が設置され、車上設備主体の列車制御へと転換。地上設備の大幅な削減が可能になる。

4つの特徴
同社が発表した資料によると、RKシステムには以下の特徴がある。
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現行の列車の安全を確保する装置と同等以上の安全性を実現
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情報伝送に公衆回線を使用することで、設備削減と導入コストを抑制
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装置構成を見直し、維持更新費用を低減
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同社が有するGOA2.5自動運転等の技術活用により、早期導入と導入コスト抑制を実現
また、新規技術として「情報伝送が途絶える場合(通信途絶)に列車の安全を確保する技術」と「情報セキュリティの安全を確保する技術」の2点が採用されている。
導入スケジュール(目標)
同社が発表した導入スケジュール(目標)は以下の通りだ。
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2028年度:長崎本線 喜々津〜浦上(長与経由)
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2032年度:長崎本線 諌早〜長崎(市布経由)
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2033年度:大村線 ハウステンボス〜諫早
2年間にわたる検討・検証の経緯
RKシステムの実用化に向けては、2024〜2025年度にかけて「RKシステム実現検討委員会」が設置された。委員会は学識経験者・研究機関・関係協会等で構成され、列車制御システムとして総合的な見地から評価を行った。
検討は大きく「安全性検証」「新しい技術への対応」「安定性実証試験」の3つの柱で進められた。
安全性検証では、装置の要求仕様を委員会で合意した上でシステム仕様書を作成。FTA(故障の木解析)および試験項目の抽出を実施し、検証走行試験を行った。これらの資料をもとに公益財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)へ安全性評価を依頼。「安全性確保の考え方、試験項目と結果について安全上問題となる点は無い」との評価を得た。
新しい技術への対応については、公衆回線の使用と通信途絶を許容する中での安全確保の方法と位置付けを整理。研究機関の助言をもとにセキュリティ方針を定め、その妥当性について学識経験者による評価を得た結果、「実用化に問題無いことを委員会へ提示」している。
安定性実証試験では、沿線の無線環境の測定・試験を実施し、導入に向けた無線環境を把握。走行試験によるシステム基本機能の検証と課題抽出を行い、ブレーキ制御等を行わない状態で稼働状態を確認する「モニターラン」を実施して安定性を確認した。「安定性に問題無い」との判断が委員会に提示されている。
委員会の結論
一連の検討・検証の結果、委員会は「列車制御システムとしての機能を確認、議論の結果、導入に向けて十分な安全性・安定性がある」との結論を示した。
また、RKシステムの検討にあたっては、国土交通省委託調査「地域鉄道等における自動運転の導入を目指した列車制御システムに関する調査検討」や、国交省鉄道技術開発・普及促進制度による「地方鉄道向け無線式列車制御システム技術評価検討会」、鉄道総研の研究開発テーマ「公衆通信回線利用の統合型列車制御システムの開発」といった外部の知見も参照・反映されている。
RKシステムの導入は、生産年齢人口の減少や沿線人口の減少、行動様式の変容といった社会的背景のもと、業務運営方式の見直しによる鉄道ネットワーク維持を目的とした取り組みの一環だ。JR九州は既存技術であるATS-DK/DK自動運転と、新規技術である公衆回線を組み合わせることで、「現行と同等の安全性確保・運転保安設備のスリム化」をコンセプトに掲げている。






