【本だな】夜明けのバッティングセンター 3・11で7人の家族を失った息子と私の15年  千葉清英 著、藤澤志穂子 協力


 「僕はお父さんに連れてきてもらえるからいいけど、バッティングしたくてもできない友だちが、たくさんいるんだ。近くにバッティングセンターがあればいいのに……造れないかな」。東日本大震災で7人の家族を失い、絶望の淵にいた父に、幼い息子がかけた何気ない一言。本書『夜明けのバッティングセンター』は、この言葉をきっかけに止まっていた時間が動き出し、失われた日常を取り戻そうと立ち上がった父と息子の15年間の記録である。

 2011年3月11日、東日本大震災の津波は、宮城県気仙沼市で暮らしていた著者・千葉清英氏から家族7人の命を奪った。生き残ったのは、著者と幼い息子の瑛太さん、たった2人だけだった。あまりにも大きな喪失感に「すべてを終わらせたい」と思ったこともあったという。それでも、生き残ってくれた息子のために、父であることをやめるわけにはいかなかった。

 そんなある日、息子の言葉が著者の心を動かす。子どもたちが笑える場所を、この町に残したい。その思いを胸に、牛乳販売店を営む著者はバッティングセンターの建設を決意。建設資金を集めるため、ヨーグルト飲料「希望ののむヨーグルト」を開発し、全国で販売した。多くの人々の支えを受け、ついに「気仙沼フェニックス・バッティングセンター」を完成させる。

 本書は、震災の記録であると同時に、喪失の底から「生き直す」ことを選んだ父子の物語だ。絶望の中でも人はもう一度立ち上がれるということを、静かに、そして確かに教えてくれる。また、著者の歩みに共感した王貞治氏、掛布雅之氏、小久保裕紀氏、池山隆寛氏ら、プロ野球界のレジェンドたちの言葉も収録されている。

 著者の千葉清英氏は1969年東京都生まれ。株式会社千葉一商事代表取締役社長、「気仙沼フェニックス・バッティングセンター」運営者。1998年に結婚し、妻の実家がある宮城県気仙沼市へ移住。2011年の東日本大震災で家族7人を亡くし、2014年にバッティングセンターをオープン。自身の体験を基に講演活動も行う。

 協力の藤澤志穂子氏は1967年東京都生まれ。ジャーナリスト、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。産経新聞社で社会部、経済本部などを経て、秋田支局長を最後に退社。現在は外資系コンサルティング会社で危機管理広報などに従事しつつ、執筆を続けている。

 定価1800円+税。

 発行=草思社。


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