【にっぽん銘菓の旅22】花に彩られる古都・鎌倉(神奈川県) バター風味サクッと「鳩サブレ―」 中尾隆之


黄色いパッケージが特徴

黄色いパッケージが特徴

 梅、桜、桃、レンギョウ、雪柳…早春から順次、古社寺が花に包まれる古都・鎌倉。4月は源氏の守り神として祭られたシンボルの鶴岡八幡宮の参道・段葛の桜並木が美しい季節。

 その道沿いに白壁の大きな店を構える豊島屋は、創業132年の菓子の老舗。看板菓子の「鳩サブレー」は全国的人気の洋風菓子である。

 原材料の小麦粉、砂糖、バター、鶏卵の配合を、そのつど見極めて丁寧に練った生地をハトの形にして焼いた大きなビスケット。

 サクッとした歯応え、風味豊かなバター、おだやかな甘さが一つになってふんわりとした美味に満たされる。形も色も食感もシンプルなのにふくよかで飽きないおいしさ。

 製造販売は豊島屋の初代が、店に来た外国人からもらったビスケットがきっかけという。

 バター風味に心ひかれ、これはイケると、当時の日本では希少なバターを探し回り、3年後に商品化する。欧州航路から帰国の友人の船長に食べてもらったところ、「フランスで食べたサブレに似ている」の言葉。意を強くして本格的に取り組んだ。

 サブレはフランス発祥の焼き菓子のこと。ビスケットやクッキーは小麦とバターの比は1:1だがサブレは1:2。バターを多く使っている。

 ハトの形は店のすぐ先にある崇敬する鶴岡八幡宮の額の“八”の文字のハトにちなむ。「鳩三郎」の漢字とゴロ合わせして大変気に入っていたという。

 当初は「バタ臭い」など売れ行きはサッパリだが、後年、高名な小児科医の「離乳期の幼児食に最適」という新聞記事で売れた。

 明治後期に大船―横須賀間に鉄道も開通し、鎌倉には政界や財界人、外国公使、文化人らが居宅や別荘を構え、みるみる広まった。

 このサブレから全国各地の菓子店が「〇〇サブレ」という焼き菓子を製造。今は閉店したが、市内由比ヶ浜の風月堂にはかつて「千羽鶴サブレー」があった。

 鎌倉は武家政治の中心地として140年続いた古都だけに餅、団子、饅頭(まんじゅう)、煎餅など和菓子が多いが、130余年続く人気銘菓の「鳩サブレー」は、洋風ながら古都の「味の歴史遺産」になっている。

(紀行作家)

【メモ】
「鳩サブレー」=豊島屋(0467.25.0810)手提げ4枚入り税込み610円。取り寄せできる。

黄色いパッケージが特徴

 
 
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