【口福のおすそわけ595】海のミルク!~その5~ 竹内美樹


 さて、海のミルクの物語も、いよいよ大詰め。英語圏では、Rの付かない月に牡蠣(かき)を食べるなと言われるそう。つまり、5月(May)、6月(June)、7月(July)、8月(August)は牡蠣を食べない方が良いという意味。実はこの言葉、フランスで牡蠣が大流行し、乱獲で資源が枯渇してしまったことに端を発しているとか。この時期はちょうど牡蠣の産卵期にあたり、味が落ちる上、傷みやすい季節でもあり、何より資源回復には産卵期の漁を制限する必要があったという。そこで、ナポレオン3世時代の1852年、水産資源を管理する法律が整備されたそうだ。

 日本では元々、夏に旬を迎える「岩牡蠣」が存在するので当てはまらない。どうして岩牡蠣は夏に食べられるの? 真牡蠣が水深50センチ~5メートル程度の浅瀬で養殖されるのに対し、岩牡蠣は5メートル?10メートルの深い海の岩場で、3~5年かけて育つ。産卵期は同じ夏だが、真牡蠣は産卵期に一気に栄養分を使い果たし、身痩せして味が落ちるのに対し、岩牡蠣は少しずつしか産卵しないので、むしろタップリ栄養を蓄えた産卵期が美味になるようだ。近年技術が発達して養殖物も出て来ているが、天然物が多いとされる。さらに、イマドキ真牡蠣でも夏に食べられるモノがあるのだ!

 その正体は、「三倍体」牡蠣。普通の生物は染色体が2セットだが、養殖技術で染色体を3セットにしているため、産卵しない。だから夏でも身痩せすることなく、通年流通が可能なのだ。産卵にエネルギーを使わないため、成長速度が速く、1年中クリーミーで濃厚な味わいが続き、品質も安定するという。牡蠣生産量日本一を誇る広島県では、県水産海洋技術センターで「かき小町」という三倍体牡蠣を開発。殻に対して可食部が多く、身がぎっしり詰まっているそう。

 養殖の方法も、各段に進化した。ホタテ貝の殻に牡蠣の稚貝をつけて海面からロープで垂下させる従来の「カルチ式」から、牡蠣を1粒ずつバラバラにして、バスケットに入れ育てる「シングルシード式」にすることで、牡蠣の形や身入りを良くし、見た目と味の完成度を高めたブランド牡蠣も増えているそう。

 ところで、牡蠣の可食部って、臓器で言うと何?

 殻の中の牡蠣の一番外側にある、黒っぽいヒラヒラの外周部分は、「外(がい)套(とう)膜(まく)」。その内側にヒダヒダの「エラ」があり、グルタミン酸などアミノ酸が豊富なのだとか。われわれがウマっ!と言いながらかぶりつく、一番目立つ白っぽい部分が「生殖巣」。ミルキーなのは、脂質やグリコーゲンが豊富だから。黒っぽい部分は「消化腺」で、苦味の正体。そして「貝柱」は甘味や余韻を生むという。つまり牡蠣の可食部とは、内臓と筋肉の塊なのだ。完全栄養食といわれるのもうなずける。亜鉛や鉄分、ビタミンB12も多く、肝機能を助けるタウリンも豊富だから、お酒のお供にピッタリ!

 海のミルク、牡蠣。冷やしたシャブリと一緒に、食べたくなっちゃった♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
 
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