【高校教育旅行特集2026年】墨田区教育旅行座談会 江戸東京博物館がリニューアル、今後の誘致施策を聞く


(写真左から)墨田区観光協会・森山育子理事長、墨田区・山本亨区長、江戸東京博物館・藤森照信館長

(写真左から)墨田区観光協会・森山育子理事長、墨田区・山本亨区長、江戸東京博物館・藤森照信館長

 「東京都江戸東京博物館」(東京都墨田区、愛称=えどはく)が3月31日、約4年にわたる大改修を終えてリニューアルオープンした。東京都墨田区は、東京スカイツリーの開業以降、教育旅行の誘致に力を入れてきた。「えどはく」のリニューアルオープンを契機とした墨田区における教育旅行の可能性について、墨田区の山本亨区長、江戸東京博物館の藤森照信館長、墨田区観光協会の森山育子理事長に語り合っていただいた。

両国エリアは欧米客に人気 産業観光も魅力

 ――はじめに墨田区の観光の現状についてお聞かせください。

 山本区長 コロナ禍から回復し、国内外から旅行者が戻ってきて、データを見ても墨田区の観光客数は増加しています。墨田区の街を歩いていても、飲食店に入ってみても、インバウンドの方々が非常に多く訪れていることを実感します。

 リニューアルオープンを迎える江戸東京博物館がある両国エリアには、特に欧米の方が多いようですね。国技館での大相撲、すみだ北斎美術館、旧安田庭園など、海外からの旅行者を魅了する観光資源が非常に豊富です。両国エリア以外にも、東京スカイツリー、向島花街、向島百花園、隅田公園など、魅力的な観光スポットがたくさんあります。また、墨田区は、ものづくりの街で、「下町企業」の町工場、伝統工芸の工房も多くあり、産業観光も魅力となっています。

 墨田区は、「人がつながり 夢をカタチに」のキャッチフレーズのもと、2035年に本区が目指す姿をとりまとめた新しい基本構想を策定しました。この基本構想においても、墨田区ならではの魅力の創出、観光振興が重要なテーマです。初年度となる2026年度には、江戸東京博物館のリニューアルがありますし、東京23区で初めての取り組みとなる総合芸術祭「すみだ五彩の芸術祭」を9月から約4カ月間にわたって開催します。11月には、すみだ北斎美術館が開館10周年を迎えますので、記念の企画展を行います。

 特に、江戸東京博物館のリニューアルオープンによって、国内外の観光客、修学旅行生の皆さまには、江戸・東京の歴史や文化に触れていただく機会が大幅に増えると思います。すみだの街の魅力もより一層高まり、区内の人の流れにも回遊性が出てくると期待しているところです。江戸東京博物館、そして墨田区観光協会と連携して観光施策をさらに推進し、墨田区ににぎわいをつくっていきたいと考えています。

墨田区の山本亨区長
墨田区の山本亨区長

江戸東京博物館が改装 見学利便性やバリアフリー向上

 ――江戸東京博物館のリニューアルのコンセプトや見どころは。

 藤森館長 江戸東京博物館は、江戸・東京の歴史と文化を振り返り、未来の都市と生活の在り方を考える場として、1993年3月に開館しました。開館から約30年を経て、初めてとなる大規模な改修工事を実施しました。改修工事には約4年かかりましたが、いよいよオープンです。今回の改修により、施設、設備の老朽化への対応だけでなく、見学の利便性、バリアフリー、ユニバーサルデザインの機能強化など、来館者の安全・安心を向上させました。省エネルギー化など、環境負荷への対策も進めました。

 藤森館長 そして何といっても、空間演出と展示のアップデートで、さらに魅力的な東京の新しい文化創造の拠点となりました。1階西側からのアプローチに鳥居をモチーフにした工作物を設置し、その内側に現代から江戸にさかのぼる映像を投影して没入感を高めます。最新の映像技術を活用した演出も新たな魅力の一つで、3階の江戸東京ひろばでは、天井や壁面に大型映像が投影され、江戸やかつての東京の街を歩いているような体験をもたらします。

 展示も大きく変わります。常設展示室内に設置している大型模型「朝野新聞社」を、史実に基づき「服部時計店」へと改修しました。また、来館者から寄せられた声に応え、芝居小屋「中村座」を内部に入ることができるような仕様へとリニューアルしました。

 この他にも、日本最初のバスである、フォードの車両をバス仕様にした「円太郎バス」を展示するほか、戦前の集合住宅「同潤会アパート」の部屋を再現し、そこでの生活状況もリアルに表現しています。

江戸東京博物館の藤森照信館長
江戸東京博物館の藤森照信館長

年間70校が教育旅行で来訪 北陸・中国地方にも発信

 ――江戸東京博物館は学びの施設で、修学旅行生も訪れそうです。墨田区観光協会では、教育旅行の誘致に力を入れていますね。

 森山理事長 当協会では、2012年の東京スカイツリー開業をきっかけとして、教育旅行の誘致を強化してきました。東京スカイツリーに来ていただくだけでなく、学生の皆さまが地域と出会い、歴史や文化、産業への理解を深められるような学びと体験が一緒になったプログラムの提供を目指しています。墨田区には江戸から続く文化、産業の積み重ねがあり、今に息づいていることから、総合学習、探究学習、社会科の学習などに適した素材が多くあります。現在、31のプログラムを用意しており、伝統工芸の工房、町工場、商店街での体験などさまざまな内容をそろえています。

 教育旅行の墨田区への来訪は年度によって変動しますが、年間70校前後、5千人ほどです。現在は中学校の修学旅行が中心で、目的地が東京であるなら、学びと体験を一緒にできる場所として墨田区を選ばれているようです。高校の修学旅行の誘致にも力を入れています。学生のキャリア形成を意識し、街づくりや産業に関わる墨田区の人たちに、高校生が話を聞いて学んでいく研修のような目的で訪れる高校が増えています。

 方面的には、東北エリア、東海エリアの学校の訪問が多いですね。東京スカイツリーや東京ディズニーリゾートとセットで計画される学校がほとんどです。今後は、北陸エリアや中国エリアなどの学校に対してもプロモーションを広げていきたいと考えています。

墨田区観光協会の森山育子理事長
墨田区観光協会の森山育子理事長

引き続き「オールすみだ」で教育旅行誘致へ

 ――教育旅行の誘致について山本区長のお考えは。

 山本区長 多くの修学旅行生に墨田区を訪れていただけることは、本当にありがたいことです。今回の江戸東京博物館のリニューアルは、修学旅行の学びのコンテンツとして大きな意味を持ちます。博物館の中を回遊しながら、江戸・東京の姿に触れ、その変容を実感する体験は重要な学びとなるはずです。

 先ほども申し上げた通り、江戸東京博物館以外にも、すでに多くの学生の皆さんに訪れていただいている東京スカイツリーは現代建築の最高峰です。その一方で、すみだ北斎美術館には200年以上前の貴重な作品が展示されています。両国エリアには、東京都慰霊堂があり、関東大震災や東京大空襲の歴史が学べる平和教育の場にもなっています。

 ものづくりの町工場、工房も多く、さまざまな体験やワークショップを用意しています。一般の方が町工場を巡って職人たちと話し、その技術に触れる「すみだファクトリーめぐり」というイベントも毎年行われているように、町工場や工房の経営者、職人の方々は、修学旅行生の受け入れに前向きで、フレンドリーに対応してくれると思います。

 引き続き「オールすみだ」で教育旅行に関する情報発信と受け入れ態勢整備に取り組み、墨田区への誘致を進めたいと考えています。

 ――江戸東京博物館の教育旅行への対応は。

 藤森館長 教育旅行には学びが必要ですから、江戸東京博物館はその役割をしっかり果たしていきたい。隅田川は東京の母なる川で、その隅田川の流れる区が墨田区です。江戸から東京へと続く歴史があり、さまざまな文化、生活、産業を育んできました。残念ながら、かつての建物などは関東大震災や戦災でほとんどが失われてしまいましたが、その上に現在の街が成り立っています。そうした江戸・東京に関するさまざまな学びの要素が当館にはあります。昔の暮らしぶりや浮世絵の製作方法といった興味を持ちやすい展示も多くあります。リニューアルによって展示物にスマートフォンをかざすと、詳しい情報が表示されるような仕組みも取り入れています。教育旅行の学びの部分を江戸東京博物館で満たしていただければと思っています。

新たな体験プログラム 博物館の展示と関連付けも視野

 ――墨田区観光協会は、江戸東京博物館のリニューアルを教育旅行誘致にどのように生かしますか。

 森山理事長 当協会では、江戸東京博物館から得た学びを街中でリアルに感じて体験していただく、そうした新たなプログラムをつくっていきたいと考えています。例えば、江戸時代の握りずしは今より大きなサイズだったという展示を見た後で、現代の握りずしづくりを体験するとか、浮世絵の展示を見てから実際に浮世絵の製作手法を体験するとか、そうしたプログラムの開発を検討しています。すでに屏風(びょうぶ)や人形の製作体験、江戸文字を書く体験など、伝統工芸、伝統文化を学ぶ体験プログラムは手掛けていますので、それらを江戸東京博物館の展示と関連付ける工夫を考えていきたいですね。

3月31日にリニューアルオープンした江戸東京博物館の外観
3月31日にリニューアルオープンした江戸東京博物館の外観

 ――最後に、学校、旅行会社で教育旅行を担当している皆さんにメッセージをお願いします。

 山本区長 墨田区は、区民には地域への愛着と誇りを、来訪者にはあこがれと共感を持っていただける都市を目指しています。江戸東京博物館のリニューアルにより、両国エリア、墨田区が大きく変わり、修学旅行生の来訪が増えることを期待しています。観光、体験、学びのメニューを拡充、ブラッシュアップし、にぎわいと地域経済の活性化につなげたい。墨田区は、多様な学び、体験ができる場所です。ぜひ墨田区での教育旅行をご検討ください。

 藤森館長 江戸東京博物館のリニューアルのテーマの一つは「没入感」です。江戸・東京の街に実際に入り込んだような体験を通じ、観賞、学びの質が高まる文化創造拠点を目指していきます。隅田川沿いに広がる文化、生活、産業、そして東京スカイツリー、江戸東京博物館。観光、学びの資源にあふれる墨田区にお越しいただければうれしいですね。

 森山理事長 当協会は、教育旅行の各種サービスをワンストップで提供しています。情報提供から問い合わせ対応、申し込みの受け付け、施設見学や体験の調整、宿泊・会場の手配、当日の運営まで、一連の流れを観光協会が窓口となって行います。学校や旅行会社の皆さまが教育旅行を組み立てやすく、円滑に実施できるようサポートしています。特に、安心、安全には十分配慮し、現地でのサポートも行いますので、ぜひ墨田区を訪れていただきたいと思います。お待ち申し上げております。

(写真右から)墨田区の山本区長、江戸東京博物館の藤森館長、墨田区観光協会の森山理事長が握手
(写真右から)墨田区の山本区長、江戸東京博物館の藤森館長、墨田区観光協会の森山理事長が握手

 
 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第39回「にっぽんの温泉100選」発表!(2025年12月15日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2025年度「5つ星の宿」発表!(2025年12月15日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第39回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング 」(2026年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト50を発表!

2025年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング」(2026年1月12日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒