前回は、スマホと無料アプリを使った動画づくりの基本を紹介した。今回はさらに一歩進めて、生成AIを活用した新しい動画制作の方法について、筆者の実体験を交えながら紹介したい。
筆者も実際にいくつかのAI動画ツールを試してみた。Googleのジェミニが提供する「Veo」では、古い旅館・ホテルの写真を高解像度化したり、人の動きを自然に加えたりといった処理が高品質で行えた。しかし、実在する人物を映像化しようとすると「ポリシーガイドラインに抵触する」との警告が表示され、生成できなかった。人物のプライバシーや肖像権に配慮した制限が設けられているためである。
同様の傾向は、ChatGPTで知られるOpenAIの「Sora2」にも見られた。こちらも人物を含む写真の動画化ではエラーが出るものの、操作は非常にシンプルで、短い文章(プロンプト)を入力するだけでSNS映えするユニークな動画が自動生成された。ナレーションや効果音、背景音楽も自動で挿入され、生成後すぐにSNSへ投稿できる設計になっている。操作性の高さは特筆に値する。
中国の「Kling AI」は有料サービスながら、生成される映像のリアリティと品質が群を抜いていた。特に白黒写真の動画化が優れており、静止した古い写真の人物が自然に瞬きをしたり、表情を変えたりする映像が生成できた。
横浜の日本新聞博物館(ニュースパーク)で開催された特別展「報道写真でたどる戦後80年」では、戦前に新聞社のカメラマンが撮影した白黒写真をKling AIで動画化する企画が行われている。報道写真を扱うプロの現場でも採用されるほどの品質であることが裏付けられたといえる。
この技術を活用すれば、旅館・ホテルに残る昔の記念写真や創業当時の外観写真を、息づく映像としてよみがえらせることができる。「歴史と物語のある宿」として印象的に発信でき、SNSや自社サイトでの紹介にも活用できるだろう。見る人の感情に訴え、宿の魅力をより深く伝える手段として大きな効果が期待できる。
生成AIの進化によって、動画制作はもはや専門知識を必要とする作業ではなくなった。動画制作の目的やテーマを明確にし、宿の個性を映し出す素材を選べば、誰でも短時間で完成度の高い映像を作ることができる。パソコンやスマホの操作に慣れていない方でも簡単に扱えるので、まずは気軽に試してみてほしい。
(アルファコンサルティング代表取締役)




