KKdayグループ 創業者兼最高経営責任者 陳明明氏に聞く


陳氏

世界から見た日本の体験市場

デジタルシフトでの課題解決 下半期での渡航緩和が好機

 ――KKdayを創業したきっかけは。

 「最初は、2000年にOTAを台湾でスタートアップとして始めた。当時は、交通、宿泊などパッケージツアーを販売していたが、FITはツアーとアクティビティを予約する形へと変貌していった。12、13年ごろには、KKdayのようなツアー&アクティビティのプラットフォームがまだなく、FITにもストレスがかかっていた。私はそこに着目し、14年からはKKdayという一つのプラットフォームに集約し、全世界の旅行者に提供を始めた」

 ――世界から見た日本市場について。

 「日本はインバウンドが急成長するなど、大きな市場となった。観光の質や安全性が高いほか、交通の利便性も高く、海外からは居心地の良い国と認識されている。コロナ禍のアンケートでは、全世界から一番訪れたい場所として選ばれている。われわれは、19年に海外から約160万人を日本に送っており、今も重要なマーケットとして位置付けている。現在は、円安が続くなど、行きたいという声は大きくなっている」

 ――海外市場の回復について。

 「ワクチン接種者の比率が上がり、オミクロン株のピークは過ぎた。特にシンガポール、韓国の回復は早い。台湾も夏ごろには隔離をなくす話もあり、他の国も門戸開放へ加速するはずだ。中国はゼロコロナ政策を採用しており、再開は遅れるものと見込んでいる」

 ――日本市場がコロナ前に戻る時期の見込みは。

 「今年の第4四半期(10~12月)ごろには隔離がなくなり、旅行ビザが回復し、従来の形に戻ることを期待している。一方で、供給不足が懸念材料だ。コロナ禍で観光を生業に働く多くの人が転職するなど離れている。また、航空会社の座席も減少したままだ」

 ――日本の体験事業者のデジタルシフトの進捗(しんちょく)はどう見ているか。

 「コロナ禍でデジタルシフトが大きく進んだが、日本全体を見渡すと、まだデジタル化は遅れているといえる。インバウンドが再開した際に想定される多言語や人的対応の課題は、デジタルシフトで解決できる。われわれは、体験事業者のDXを実現する基幹システムとして『rezio』を提供している。これは、(1)発券システムの統一による業務プロセス改善(2)在庫・価格の統一管理による売り上げの拡大(3)会計システムなどの自動連携による負担削減―を行うものだ。KKdayを通じて全世界に販売できるほか、携帯のモバイルシステムを経由して予約対応もできる。デジタルシフトを遂げることは、人件費といった固定費も大きく圧縮できるなど、メリットは多い。韓国ではQRコードを使った支払い、入場は定着している。今後、利便性による差別化は、より顕著となるはずだ」

 ――日本のデジタル化の進み具合は。

 「中国、韓国、台湾はかなり高い。日本は遅れているタイ、ベトナム、東南アジアより少し高いぐらい。参考だが、KKday全体では半数以上のチケットがオンライン化されている」

 ――今後、注力していくことは。

 「海外のFITに、日本人のように日本を遊べる旅を提供すること。例えば、沖縄でダイビングを楽しんだ後、横浜で釣りを楽しむ、台湾の登山愛好家が日本で富士山に登ったり、グランピングを楽しむなど。従来は、団体客が決まった場所を巡ることが多かったが、デジタルが普及することで、多くの場所に巡り、消費することとなる。これは、多くの事業者が裨益することにつながる。このほか、台湾で展開している富裕層向けのプログラムを日本にも展開していきたい」

 ――このほか、体験事業者にアドバイスがあれば。

 「商品をセットで提供することだ。レストランでの活用が分かりやすいが、QRコードで商品を提示することで、スマートフォン内で売りとなる商品を多言語で理解し、購入してもらえる。日本では、サービスの多様化、複雑化が進むが、選択肢が多いほど、選択、判断が難しくなる。セットは、FITや店舗にとっても分かりやすく、利便性を高めるものだ」

 ――理想には達したか。

 「まだこれからだ。業界全体のデジタルシフトを目指しており、まだ10年、20年かかる可能性がある」

 ――投資について。

 「人材への投資には力を入れている。今は約600人の社員がいるが、3分の1はIT人材だ。日本も現在は約60人だが、年末には100人、3年後には200人まで増やしていく」

 ――日本における今年度の目標は。

 「今は国内に注力している。下半期は海外渡航の緩和を追い風として、アグレッシブな目標を設定している。日本の事業者のため、地方創生のため、また下期以降に世界各国とどのような形で連携を図るかは検討を重ねている」

チン・ミンミン=台湾の連続起業家。台湾初となるオンライン旅行会社「易遊網(ez Travel)」の創業メンバーであるほか、台湾で複数の会社を上場させる。2014年に同社を創業。

【長木利通】

 

 
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