一般財源充当の事業分は252億円
観光庁の2019年度予算の概算要求額は、具体的な使途が決まっていない国際観光旅客税を充当する予算480億円を除くと、一般財源を充てる事業、施策の予算が252億1800万円となる。19年度に要求している事業、施策の主な内容を紹介する。
訪日 重点市場追加へ調査
「戦略的な訪日プロモーションの実施」に126億7500万円(日本政府観光局〈JNTO〉運営費交付金、一部はMICE誘致の促進費)を計上した。重点20市場への市場別プロモーション、新たな市場からの誘客促進に充てる。
重点20市場への市場別プロモーションでは、現状では訪日外国人旅行者数の1割程度にとどまっている欧米豪からの誘客を強化するため、アクティビティなどのコンテンツを中心としたプロモーションに注力。アジアからの誘客もさらに強化し、リピーターに地方の魅力などを訴求する。誘客事業などを担うJNTOの体制も強化する。
新たな市場からの誘客促進では、重点市場候補として10市場を設定し、市場調査や試行的なプロモーションを行う。候補市場は、重点20市場に次いで訪日旅行者数が多いマカオ、ニュージーランド、メキシコ、オランダ、スウェーデン、スイス、ブラジル、イスラエル、ベルギー、ポーランドなどを中心に検討する。
DMO 広域周遊促進に補助
宿泊業 生産性向上など推進
継続事業の「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」には77億6千万円を計上した。訪日外国人の受け入れ態勢の整備に向けて、旅館・ホテルのインバウンド対応やバリアフリー整備のほか、公共交通機関の利便性向上への取り組みを支援する。
「広域周遊観光促進のための観光地域支援事業」には25億円を計上した。18年度予算に引き続き、DMOが中心となって取り組む広域的な周遊観光を後押し。調査・戦略策定、滞在コンテンツの充実、受け入れ環境整備、プロモーションなどの経費を補助する。
継続事業の「宿泊施設を核とした地域の活性化促進事業」には1億5千万円。旅館・ホテル業の生産性向上、宿泊施設の連携による人材活用や体験プログラムの開発などにつながるモデル事業を実施する。また、後継者の不在に悩む旅館が多くなっていることから、事業承継のニーズや課題の分析、優良事例などを取りまとめ、産業界に周知する。
民泊 ヤミ物件排除にシステム
「健全な民泊サービスの普及」に2億900万円を計上。民泊制度のシステムやコールセンターの運用費以外に、違法民泊物件を特定するシステムの構築費を盛り込んだ。民泊仲介サイトには物件の詳細な住所などが掲載されず、違法物件の特定が難しい。現在は自治体や関係省庁が人手をかけて確認しているが、ICTなどを活用することで、違法性が疑われる物件を抽出、一覧化できるようにする。複数の自治体での試行などを含め、2カ年かけてシステムを構築する。
「観光産業における人材育成事業」には4億2100万円。従来に引き続きトップレベルの経営人材、中核人材、実務人材の3階層に分けて育成プログラムを展開する。また、政府が検討している新たな在留資格の創設を踏まえ、外国人材受け入れに関する制度やノウハウの周知に向けた事業も実施する。
新規の事業では、訪日外国人旅行者の満足度アップに向けてアクティビティなどの体験型観光のガイドを養成する「テーマナビゲーター育成事業」に7千万円。観光資源の発掘、観光へのニーズや満足度の把握にAI(人工知能)などを活用する手法を探る「AI等導入による旅行サービスの高度化事業」に5千万円。若者の「海外体験」をテーマに海外旅行のモデルを創出する「相互交流の拡大に向けた若者の海外体験促進事業」に5千万円を計上した。