環境省、「新・湯治」で温泉地を活性化 


大沼伸治氏

東鳴子、四万などから事例発表

 環境省は、現代のライフスタイルに合った新たな温泉地滞在を提案する「新・湯治」に関するセミナーを7月21日に東京都内で開いた。温泉地の旅館経営者らが施設運営や地域づくりを通じた新たな湯治の在り方を提案した。現代社会において心の不調を癒やす場としての湯治場、さまざまな滞在の選択肢を備えた世界に通用するリゾートとしての湯治場など、多様な可能性が提言された。

■宮城・東鳴子温泉

 宮城県・東鳴子温泉の老舗湯治宿、旅館大沼の5代目湯守、大沼伸治氏が「現代社会における心の拠り所としての湯治場」と題して発表した。「湯治の本質とは、大自然の恵みである温泉に入り、癒やされること。日本全国には約3千所の温泉地がある。この癒やしのインフラをどのように現代に生かすかが課題」と指摘した。

 旅館大沼は、東京都内の支援サービス会社と連携し、うつ病などから職場復帰を目指す人を「湯治インターン」として受け入れている。数週間にわたって宿泊しながら旅館業務を手伝う。もちろん業務時間以外は温泉に入って湯治を行う。職場復帰する人もいれば、調子が悪くなり、再び湯治に来る人もいるという。

 大学生らと連携して若者に湯治を紹介する試みも実施した。コロナ禍で生活に大きな影響を受ける学生のメンタルヘルスに着目し、東鳴子温泉の旅館で湯治を体験してもらう。昨年11月と12月に計8人が参加。2泊3日の滞在だったが、心身の健康に好影響があったとする感想も聞かれた。

 また、「事情にかかわらず、全ての人を受け入れるのが湯治場」として、人に優しい温泉地も目指している。乳がん手術を経験した人、トランスジェンダーなどの性的マイノリティーの人などに、もっと温泉を楽しんでもらおうと、各旅館にある貸し切り風呂の利用をPRしている。

 現代の新たな湯治について大沼氏は「まずは2泊3日から。そうすれば、1泊2日とは違う世界が見えてくる。何もしないことで、余白みたいなものを感じ取ってくれるのではないか。普及へのハードルは高いが、2泊3日のムーブメントを起こしたい」と語った。

大沼伸治氏

■群馬・四万温泉

 群馬県・四万温泉で旅館、グランピング、ゲストハウスを手掛けるエスアールケイ社長の関良則氏は、「SHIN湯治~現代の新しい湯治場づくり」をテーマに講演した。「SHIN湯治とは地方創生。新しい温泉文化の利用を探り、地域のにぎわいを創出する。宿ビジネスは展開次第。若い人が入ってくるようなもうかるビジネスにしたい」と意欲を語った。

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