富山福祉短大、国際観光学科開講記念シンポジウムを開催


有識者らが意見交換した

 来年4月に国際観光学科を新設する富山福祉短期大学は10月29日、「国際観光学科開講記念シンポジウム ツーリズムで成功する地域創生 そのための人材育成とは」を同短大内のホールで開いた。当初定員60人の設定だったが、旅行会社、旅館・ホテルなどの観光業界を中心とした地元企業、地域の観光行政担当者、地域の中学校校長など約100人が参加した。

 観光庁観光地域振興部長の村田茂樹氏が「日本が期待する地域創生―その必要性と、観光の果たす役割―」と題して基調講演。続くシンポジウム「成功する地域創生の手法、そのための人材育成」では、同学科長・教授の藤本幸男氏をモデレーターに、富山県観光・交通振興局長の猪俣明彦氏、JTIC.SWISS代表で同学科非常勤講師の山田桂一郎氏、美ら地球CEOで同学科非常勤講師の山田拓氏、同学科准教授の齋藤望氏が登壇した。

 村田地域振興部長は、観光地域のマネジメントに関する課題として(1)交通、宿泊、農林漁業等の関連事業者や地域住民等の多様な関係者の巻き込みが不十分(2)地域が観光客に提供するサービス等の開発および品質管理・改善が不十分―の2点を指摘。データに基づくマーケティングに関する課題については(1)来訪者に関する継続的なデータの収集・分析が不十分(2)データに基づく「顧客視点」の発想に立脚した戦略策定が不十分(3)効果的なブランディングやプロモーションが不十分―の3点を挙げた。

 その上で「地域の多様な関係者を巻き込みつつ、科学的アプローチを取り入れた観光地域づくりを行うかじ取り役となる法人として、観光地域づくり法人(DMO)が求められる」と説明。DMO形成、確立の必要性を強調した。

 「観光カリスマ」として有名な山田桂一郎氏は、自身が立ち上げから運営まで関わっている気仙沼地域戦略(地域DMO)の取り組みについて「水産業の町である強みを生かし、市民一体となって水産漁業関連の体験プログラムや名産品を開発。ポイントカード『クルーカード』の運用により収集したデータをデータべース化し、戦略的な観光振興を行っている」と紹介。DMOの一つの成功事例を示した。

 岐阜県飛騨市古川町で、「SATOYAMA EXPERIENCE」のブランド名で主に欧米人インバウンド客を対象に「飛騨里山サイクリングガイドツアー」「飛騨地域の食文化に触れるウォーキングツアー」などの着地型ツアーを実施している山田拓氏は、元経営コンサルタントの経験を生かし、企業経営の手法を地域経営に当てはめ、住民や地域の事業者らと一体となって旅行者を受け入れる体制を時間をかけて構築してきたと報告。地域の存続に寄与するサスティナブルツーリズムの必要性を説いた。

 コンサルタントとして、JICA案件で直近の3年間、ウズベキスタンの観光開発に取り組んできた齋藤氏は、同国観光業の現状を紹介した。「日本同様、ナイトタイムエコノミーの充実で旅行者の地域消費額を上げようとした結果、歴史的建造物の建て替えなどの事例が散見された。外観はそのままに内部を近代的にリニューアルしたナイトクラブの方に、旅行者はより魅力を感じる」と指摘。無秩序な開発は地域の魅力を損ねかねないことを示唆した。また同国が日本より進んでいる事例として、政府が関与して構築したタクシーアプリを紹介。タクシーを呼び、決済するだけでなく、翻訳ソフトが内蔵されていて、旅行者が全く不安なく現地のタクシーを利用できるとした。

 猪俣局長は、「DMOは、地域づくりの司令塔だ。取り組みの企画立案、関係者への合意形成、必要な資金の調達、予算執行管理、スケジュール管理、PCDAサイクルの実施などを行わなければならない。地方公共団体は、政策等により必要な側面支援を最大限行っていく」と述べた。


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