【私の視点 観光羅針盤 156】フェリー旅への期待 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三


 アジアのクルーズ人口が増え続けている。2005年に76万人であったが、15年には208万人に増加している。特に近年、中国人のクルーズ人口が急増している。

 13年から年平均で33%増加しており、20年までに中国のクルーズ人口は450万人に増加すると予想されている。

 それに対して、日本人のクルーズ人口はそれほど増えてはいない。10年に18万8千人であったが、16年には24万8千人に増えている。政府は訪日クルーズ旅客数を16年の199万人から20年には500万人に増加させることを目標にしている。その背景には、中国人クルーズ旅客の激増への期待がある。

 日本ではシニア層を中心にしてフェリー旅を楽しむ人たちが増えている。北海道と本州を結ぶフェリー航路で新造船の投入が相次いでおり、全12航路・29隻のうち、11隻の新造船が投入されている。豪華な個室でのんびり過ごせ、乗り換えの煩わしさのない船旅の良さがシニア層に好まれている。

 商船三井フェリー(東京)は昨年、苫小牧―大洗(茨城県)航路を走る4隻のうち2隻を新造船に替えた。いずれも専用バルコニー付きのスイートルーム、ペット同伴で泊まれる個室、サウナ付きの浴場などを新設しており、飛行機や新幹線にはない魅力を提供している。

 クラブツーリズムは、4隻のフェリーに乗って日本を巡るツアーを企画している。宮城県の松島、京都府の天橋立、鹿児島、小樽などを訪れるツアーだ。全航路、船室は個室が用意され、ゆったりとした船旅が楽しめる。料金は大人1人17万円(2人1室利用)となっている。

 今年6月に北海道室蘭市と岩手県宮古市との間に、川崎近海汽船(東京)の定期フェリー(宮蘭航路)が就航した。この航路は片道10時間で、7千トンのフェリーが1日1往復する。フェリーの収益は7割が貨物によるものとされているが、観光面での活用も期待されている。

 宮古港を起点にして、世界文化遺産「平泉」、景勝地の浄土ヶ浜、東日本大震災で甚大な被害のあった田老地区での防災学習、遠野ふるさと村、花巻温泉などの観光コースがおすすめである。

 半島に囲まれた室蘭港は良港なので、90年代には大洗や八戸など5航路で本州と結ばれていたが、次々に撤退し、札幌圏に近い苫小牧港にフェリー航路が集約された経緯がある。今回の宮蘭航路は室蘭港としては10年ぶり、岩手県としては初のフェリー航路であり、東北と北海道の物流と観光の活発化が期待されている。

 新航路の開設は真にめでたいことであるが、宮蘭航路を着実に発展させるのは容易ではないので、観光・旅行業界も含めて各方面のサポートが必要である。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 

 
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