【焦点課題】観光カリスマ 山田桂一郎氏に聞く


山田桂一郎氏

世界水準のDMOとは

地域力で地方創生を 自立存続可能な組織

 ――観光庁「世界水準のDMOのあり方に関する検討会」に委員として参加。今年3月末に「中間とりまとめ」が発表された。着目すべき重要ポイントは。

 「同とりまとめには『DMO・自治体をはじめ地域の関係者全体の役割分担及び取組内容を明確化すべき』と明記された。例えば、役所や役場の縦割り組織の中で、観光課以外の企画課や農林水産課までもが、観光関連の事業があったとしても横連携ができていない。また、役所と観光協会・観光連盟、商工会・商工会議所、農協・漁協・JCなどが個別に観光関連イベントなどを開いていて、相互に内容を把握していないケースもある。同じ市・町なのに複数の観光情報ウェブサイトがあったりもする。観光案内所に行くと、さまざまな団体が似たような地図やパンフレットを作り並べている。まず、そこから整理してくださいという意味。各団体・組織が、ムダ、ダブリ、モレのないように役割分担をする体制化が重要だ」

 「以前は、DMO自体が稼いで自主財源を確保しなさいという方向性だったが、そこは変わった。『DMOの財源について、安定的かつ多様な財源の確保を目指すべき。その観点から、国が一律の方針を示すのではなく、地域の実情を踏まえ、条例による特定財源(宿泊税、入湯税など)の確保を目指すことが望ましい。DMOは受益者負担の観点等から各財源の特性を踏まえ、それらの地域の多様な財源をマネジメントし、活用することが重要』と明記された。DMO法人は、旅館や飲食店など地域の事業者が稼ぐための支援をするということだ」

 「日本の入湯税は一般財源化されてしまうこともあるが、欧州では宿泊税などお客さまから頂いたものは顧客に還元するという大原則がある。またマーケティングコストについては受益者負担が常識だ。欧州には観光促進税を持つ自治体があり、各事業者の観光依存度によって税率が異なる。観光局はこれを財源にマーケティングを行っている。地域と地域の事業者が自ら稼ぐことに対して使う」

 ――宮城県気仙沼市のDMOのアドバイザーもされている。

 「DMO法人の(一社)気仙沼地域戦略は、B2Cを中心とした顧客データベースマーケティングを担っている。地域を一つの会社組織のようにとらえ、市役所が総務部、商工会議所が人事部として人材育成を担当、観光コンベンション協会がB2Bセールスを行う営業部といったように役割分担を明確にしている。また、市内の事業者が協力して、地域のお店でポイントが貯まる『気仙沼クルーカード(乗組員証)』を発行。店舗は顧客の利用額の3%をDMO法人に支払い、1%は顧客に還元、2%はDMOのマーケティング費用として使う仕組みだ。欧州の観光促進税に似た受益者負担を実践している。地域一体の魅力的な“感幸”地域づくりと一元的なマーケティング・ブランディングにより、域内経済循環が向上する。そこに、地域力による地方創生が生まれる」

 ――「世界水準のDMO」とはどのようなものか。

 「唯一無二のポジショニングができていること。来ていただきたい顧客層にターゲットを絞り、訪問客の満足度を最大限に高める努力をする。誰でもいいから1人でも多く来てほしいという日本的発想は、競合を増やすだけで意味がない。自立・持続可能な運営体制が確立されていることも重要だ。公金、補助金目当てでは存在価値がない」

 ――北海道大学、和歌山大学、奈良県立大学で客員教授をされている。来年4月、富山福祉短期大学に新設される国際観光学科でも教鞭を執る。

 「1年次8月末から2月末の半年間、オーストラリアでインターンシップ実習を行い、即戦力の人材を育て、観光業界に送り出す。企画型グローバル人材を養成する全く新しい学科だ」

 やまだ・けいいちろう=1965年三重県津市生まれ。87年スイス・ツェルマット観光局日本人対応インフォメーション、セールスプロモーション担当。92年JTIC.SWISS(日本語インフォメーションセンター)設立、代表に就任。観光カリスマ(内閣府・国土交通省・農林水産省認定)。内閣官房地域活性化伝道師。総務省地域力創造アドバイザー。内閣官房クールジャパン地域プロデューサー。環境省環境カウンセラー。北海道大学観光学高等研究センター客員教授。和歌山大学南紀熊野サテライト客員教授。奈良県立大学客員教授。とやま観光未来創造塾主任教授。

【聞き手・江口英一】

 
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