インバウンドが再開したらすぐに戻るのはまずリピーターだろう、という予想が完全に外れた。コロナ禍前と比べた2023年の傾向は、（1）滞在日数の増加（2）初訪日の割合の増加（3）三大都市圏での滞在者の増加―の三つが挙げられる。
まず、滞在日数の増加については、長期間、旅行できない時期があったことの反動で一時的に消費が活発になったこと、2019年比で為替が30％程度円安になったことなどが要因にあると思われ、これが定着するかは分からない。一方で、ＪＮＴＯの訪日外客統計と観光庁の宿泊旅行統計を月ごとに比較してみると、6月以降（特に8月）の1人当たりの滞在日数が40％程度伸びている。英国市場の課題である夏期の需要拡大が十分に実現可能であることが確認できた。
初訪日の増加は、2019年からの4年間で訪日旅行への関心がいかに高まったかをよく表している。消費者の関心に敏感なメディアは次々と日本の特集記事を出している。2023年9月には大手旅行雑誌『ナショナルジオグラフィックトラベラー』が別冊で100ページにわたる日本特集号を発行した。インバウンド再開直後はリピーターが中心になると予想していたところで、初訪日の増加はうれしい誤算だった。今回初訪日の旅行者は翌年以降のリピーターとなってくれるはずで、英国市場の伸びはさらに加速するだろう。
三大都市圏への滞在の集中は今後の大きな課題だ。観光庁の宿泊旅行統計によると、地方部に滞在する割合は2013年から2018年にかけて1.5倍に伸びたが、2023年は特に東京、京都、大阪、つまりはゴールデンルートでの滞在に逆戻りしている。初訪日の割合が増加したことに加え、関西国際空港への直行便が復便していないことなども影響している可能性がある。秋以降は地方部での滞在が復活する気配があるが、いずれにしても、大幅に増加した滞在日数を地方部に十分に取り込めていないのはもったいない。オーバーツーリズム対策の観点からも地方誘客に一段と重点を置く必要がある。
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