【体験型観光が日本を変える 104】見て見ぬふりはやめよう 体験教育企画社長 藤澤安良


 「平成」最後の新年を迎えた。名残惜しむかのように「平成最後」の言葉が目立つ。天皇陛下が新年の祝賀を受ける一般参賀も、平成最多の約15万5千人になった。大震災に大洪水と自然災害はあったが、戦争で多くの犠牲者が出た昭和と比べ、二つの時代を生きた者は平成は平和であったとの認識があるのだろう。

 そんな平和ムードの陰で、山積する社会問題を解決していかなければ真の平和とはならないことも確認しなければならない。来年に迫っている東京五輪・パラリンピックは、首都圏一極集中にさらに拍車をかけることになる。中でも、地方創生に絡む40億円の2分の1以上が東京のコンサルタントやシンクタンクなどの事業者に外部委託をし、東京へ環流しているという報道があった。人材の集中は同時にノウハウやスキルの集中となり、お金の集中へとつながっている。

 地域人材の育成にも注力しなければならない。18年の訪日客が3千万人を超えた。外貨獲得で経済的にはありがたいことだが、ルールやモラルの点で目に余る光景は、旅先で不快な思いをすることとなり、日本人のモラルも疑わしい。日本人まで低いレベルに引っ張られてはいけない。

 新幹線に乗って座席に着くや否や、前の客の弁当の空き箱が放置されているではないか。旅ががっかりから始まる。ホテルでスリッパや部屋着のままレストランには入れないと案内カードに記載されているにも関わらず、部屋着を着たままの若い女性がいる。スリッパは何人かいるが、入り口のスタッフはなぜ見て見ぬふりをしているのか。

 航空機の機内持ち込み手荷物で、明らかに規定より大きい物を持ち込む客がいるが、なぜ検査ゲートで厳格にできないのか。満員電車の「座席に荷物を置かないで」と車内アナウンスが流れても素知らぬ顔で置いている人、どういう了見で生きているのか。

 多客時の空港で荷物を預けるには時間がかかる。過日も、長蛇の列に並び1時間もかかった。その時、航空会社のスタッフは、「○○時までに搭乗予定の方はお知らせ下さい」と言っているのだが、客は数百人もいるのに、周りの数人にしか聞こえないような小さな声である。「私は言ったんですがおられなかった」と後から言い訳するためのアリバイなのか、言ったという動作ではなく、伝わったという結果が必要であり、それが対処したという仕事である。

 いざ仕事で必要な場面でも、大声を出す者が絶滅危惧種である。シャイだの恥ずかしいからなどと言っている場合ではない。それらは全て自分の場所や場面での無理難題やクレームやトラブルは避けたいと思う気持ちの表れでもある。

 自分がスルーしてしまえば、次の場面でのトラブルがより大きくなることを肝に銘じる教育をしなければならない。多くの観光客を気持ちよく迎え、地方に経済を環流させるためには、日本人の地方人材や観光人材の育成に力を注ぐべきであり、それには実践型体験教育が不可欠となる。

 
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