【データ】コロナ禍における働く人たちのメンタル面の変化


 ドクタートラストは6月24日、コロナ禍における働く人たちのメンタル面の変化に関する分析結果を発表した。

株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦、以下「ドクタートラスト」)のストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者103万人のデータを活用し、さまざまな分析を行っています。

今回は2020年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、およそ24万人の結果を分析し、コロナ禍における働く人たちのメンタル面の変化を導き出しました。

 

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【解説】コロナ禍で働く人のストレスに意外な変化が!?2019年度と2020年度のストレスチェック結果を比較してみた

https://youtu.be/ZZjU7lor8oU

 

 

 【結果の要約】

 

2020年度のストレスチェックでは、2019年度と比較して次の変化が見られました

① 職場環境が快適になっている

② 疲労感が軽減している

③ 報酬面での納得感が増している

④ 経営層からの情報への信頼度が増している

⑤ 人事評価の説明が十分にされていると感じている

 

 【はじめに】

 

ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促すこと、また、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定されました。2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられています。

ドクタートラストが提供するストレスチェックサービスは、設問数80項目と57項目の2種類を用意し、ご利用いただく法人さまに、どちらを使用するか選んでいただいています。設問数80項目のストレスチェックは職場環境改善の参考とするべく作られたものですが、今回の調査では、2020年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した方のうち、240,275人の最新結果と、2019年度の結果を比較分析いたしました。

 

 【全体の概要】

 

1. 受検率と高ストレス者率

図1 受検率、高ストレス者率

 

図1は、2019年度、2020年度の受検率および高ストレス者率です。受検率とは対象者に対して何人が受検をしたかを表した割合です。たとえば100人の事業場でストレスチェックの受検者が10人であれば受検率は10%となります。

図1の受検率では、2020年度株式会社ドクタートラストでストレスチェックサービスを利用した685社それぞれの受検率の平均と、2019年度575社それぞれの受検率の平均を示しています。2020年度は、2019年度の88.3%に対し、90.5%と2.2%増加しています。

ストレスチェック制度も始まって5年が経過し、受検者の皆さんにも制度が浸透してきたことがうかがえます。また、企業側でもこのトレスチェックの結果を利用して職場環境改善に役立てるため、受検率を上げようと努力している企業も見受けられ、これらが好影響を及ぼしていると考えられます。

次に高ストレス者率は2019年度が15.4%であるのに対し、2020年度では14.1%でした。高ストレス者とは、ストレスチェックの結果、ストレスの自覚症状が高い、自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪いとされた人を指します。2020年度はコロナ禍ということもあり、高ストレス者率も例年より上昇すると予想していましたが、1.3%減少しています。

 

2.  各尺度の経年変化

ストレスチェックは、各設問に対して「そうだ」、「まあそうだ」、「ちがう」、「ややちがう」の4択形式で回答し、設問数57項目版は20尺度の状況を、80項目版では、満足度やワーク・エンゲイジメント(やる気)など22尺度が追加された計42尺度の状況を算出します。

 

図2

 

図2は、ストレスチェック57項目版で算出する20尺度の年代別平均値です。数値は大きいほど、不良(好ましくない)の傾向を示しています。新型コロナウイルス感染症の影響から、ストレスチェックの結果は2019年度よりも2020年度のほうが悪化すると予想していましたが、実際にはやや良好に変化しています。

次に、ストレスチェック80項目版で追加算出する22尺度を見ていきます。

 

図3

 

 【経年で特に差が生じた5つの尺度】

 

2020年度の結果は2019年度の結果よりも多くの尺度が良好に変化していました。その中でも差の大きかったトップ5尺度は以下の通りです。括弧内の数値は各設問が何%良好に変化したかを示しています。

 

① 職場環境(1.7%)

② 疲労感(「ひどく疲れた」2.0%、「へとへとだ」1.5%、「だるい」2.5%)

③ 経済・地位報酬(3.9%)

④ 経営層との信頼関係(2.9%)

⑤ 公正な人事評価(2.8%)

 

以下では、それぞれについて解説します。

 

1. 職場環境

職場環境は、設問「私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、換気など)はよくない」への回答状況から算出します。

 

図4

 

図4のとおり、「ちがう・ややちがう」が1.7%増えました。在宅勤務制度の導入により自宅で働く人が増え、自分好みの環境で就労できている人が増えている可能性がうかがえます。

 

2. 疲労感

疲労感は、設問「ひどく疲れた」「へとへとだ」「だるい」の回答状況から算出します。(図5~7)

 

図5

 

図6

 

図7

 

コロナ禍のため従来と就業環境が大きく変わった人も少なくありません。慣れない環境のため疲労感は大きくなると予想していたのですが、2020年度の結果では疲労感は少ないほうに変化していました。仕事量が減ったことも考えられますが、在宅勤務によって通勤がなくなったことに伴う疲労軽減、あるいは社内コミュニケーションが億劫な人にとっては気疲れが減った可能性も考えられます。

 

 

3. 経済・地位報酬 

経済・地位報酬は、80項目版の設問「自分の仕事に見合う給料やボーナス」への回答状況から算出します。

 

図8

コロナなど関係なく報酬が多くなった可能性もありますが、株式会社帝国データバンクの出した「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210102.html)では、2020年冬季賞与において以下のような調査結果が報告されています。

 

「2020年冬季賞与(ボーナス、一時金なども含む)の従業員1人当たりの平均支給額について、新型コロナウイルスの影響で2019年冬季賞与と比較して変化があったか尋ねたところ、「賞与はあり、増加する(した)」が15.0%、「賞与はあり、変わらない」が36.4%となった。一方で、「賞与はあるが、減少する(した)」企業は32.5%となった」

 

このことから、報酬の減少した企業が一定存在していることも確かです。ストレスチェックは「自分の仕事に見合う給料やボーナスをもらっている」という設問の性質上、報酬の増減ではなく「仕事に見合う」報酬を得ているかを尋ねています。そのため、報酬についてきちんとその理由を説明し従業員が納得することが重視されます。上記を踏まえ今回のストレスチェックの結果については、コロナ禍であることで例年よりも給与面での説明をしっかりと行った企業が多くなった可能性が考えられます。

 

4. 経営層との信頼関係

経営層との信頼関係は、80項目版の設問「経営層からの情報は信頼できる」から算出します。

 

図9

図9のとおり、2019年と2020年を比較すると、「そうだ、まあそうだ」が2.9%増えました。平時にくらべてコロナ禍ということもあり、会社から情報発信をする機会自体が増えた可能性が挙げられます。

 

5. 公正な人事評価

公正な人事評価は、80項目版の設問「人事評価の結果について十分な説明がなされている」への回答状況から算出します。

 

図10

 

「経営層からの情報は信頼できる」で挙げた可能性と同じく、平時にくらべて従業員に対する説明機会が増えた可能性が挙げられます。会社としては従業員を不安にさせたままではなく今の状況を踏まえどのような評価をしているかを説明していくことで従業員からの信頼を得る機会を増やしていたのかもしれません。

 

 【さいごに】

 

2020年度と2019年度のストレスチェック結果を比較すると、職場の環境や疲労感、会社についての信頼感で良好な変化が見られました。ストレスチェックの結果は、個々の従業員や職場の現在のメンタルヘルス傾向を知るうえで、非常に重要なデータです。

ストレスチェックの結果に変化がある場合は、その原因を検討するとともに、ぜひとも職場環境改善に活かしていただきたいです。

 

 【調査対象】

 

調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2020年度受検者、ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2019年度受検者

調査期間:2019年4月1日~2020年3月31日(2019年度)、

、2020年4月1日~2021年3月31日(2020年度)

対象受検者数:240,275人(2020年度)、199,290人(2019年度)

 

【全80項目一覧】

(01)非常にたくさんの仕事をしなければならない、(02)時間内に仕事が処理しきれない、(03)一生懸命働かなければならない、(04)かなり注意を集中する必要がある、(05)高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ、(06)勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない、(07)からだを大変よく使う仕事だ、(08)自分のペースで仕事ができる、(09)自分で仕事の順番・やり方を決めることができる、(10)職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる、(11)自分の技術や知識を仕事で使うことが少ない、(12)私の部署内で意見のくい違いがある、(13)私の部署と他の部署とはうまが合わない、(14)私の職場の雰囲気は友好的である、(15)私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、喚起など)はよくない、(16)仕事の内容は自分にあっている、(17)働きがいのある仕事だ、(18)活気がわいてくる、(19)元気がいっぱいだ、(20)生き生きする、(21)怒りを感じる、(22)内心腹立たしい、(23)イライラしている、(24)ひどく疲れた、(25)へとへとだ、(26)だるい、(27)気がはりつめている、(28)不安だ、(29)落着かない、(30)ゆううつだ、(31)何をするのも面倒だ、(32)物事に集中できない、(33)気分が晴れない、(34)仕事が手につかない、(35)悲しいと感じる、(36)めまいがする、(37)体のふしぶしが痛む、(38)頭が重かったり頭痛がする、(39)首筋や方がこる、(40)腰が痛い、(41)目が疲れる、(42)動悸や息切れがする、(43)胃腸の具合が悪い、(44)食欲がない、(45)便秘や下痢をする、(46)よく眠れない、(47)どのくらい気軽に話ができますか?(上司)、(48)どのくらい気軽に話ができますか?(職場の同僚)、(49)どのくらい気軽に話ができますか?(配偶者、家族、友人等)、(50)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(上司)、(51)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(職場の同僚)、(52)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(配偶者、家族、友人等)、(53)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(上司)、(54)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(職場の同僚)、(55)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(配偶者、家族、友人等)、(56)仕事に満足だ、(57)家庭生活に満足だ、(58)感情面で負担になる仕事だ、(59)複数の人からお互いに矛盾したことを要求される、(60)自分の職務や責任が何であるか分かっている、(61)仕事で自分の長所をのばす機会がある、(62)自分の仕事に見合う給料やボーナスをもらっている、(63)私は上司からふさわしい評価を受けている、(64)職を失う恐れがある、(65)上司は部下が能力を伸ばす機会を持てるように取り計らってくれる、(66)上司は誠実な態度で対応してくれる、(67)努力して仕事をすれば、ほめてもらえる、(68)失敗しても挽回するチャンスがある職場だ、(69)経営層からの情報は信頼できる、(70)職場や仕事で変化があるときには、従業員の意見が聞かれている、(71)一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ、(72)人事評価の結果について十分な説明がなされている、(73)職場では(正規、非正規、アルバイトなど)色々な立場の人が職場の一員として尊重されている、(74)意欲を引き出したりキャリアに役立つ教育が行われている、(75)仕事のことを考えているため自分の生活を充実させられない、(76)仕事でエネルギーをもらうことで自分の生活がさらに充実している、(77)職場で自分がいじめにあっている(セクハラ、パワハラを含む)、(78)私たちの職場ではお互いに理解し認め合っている、(79)仕事をしていると活力がみなぎるように感じる、(80)自分の仕事に誇りを感じる


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