観光業界、東電の損害賠償基準に反発


 東京電力福島第1原子力発電所事故による観光業への損害賠償をめぐり、関係自治体、観光関係団体の反発が強まっている。東電が示した賠償額算定基準は「実態を全く反映していない」「減収の20%分を補償の対象外とする根拠が明確に示されていない」などとして、福島や群馬、栃木の3県は相次いで見直しを求める要望書を東電に提出した。11日現在、東電からの回答は来ておらず、関係者の1人は「誠意のかけらもない」と手厳しい言葉を吐いた。

 福島県旅館ホテル生活衛生同業組合は9月29日に基準の見直しを求める要求書を東電に送った。旅組は会員施設に対し、東電から回答が来るまでは賠償手続きをしないよう呼びかけている。

 東電は、原発事故以外の地震や津波、景気低迷などの影響もあるとして減収の20%分を対象外としたが、同旅組が旅行会社から提供されたデータを基に試算したところ、減収分は5%程度となることが分かり、5%にするよう求めている。

 東電の姿勢自体への不信も強く、県内のある旅館関係者は「(宿泊施設が置かれている)状況を見ようともせず、金で解決がつくなら早く出して、払ったら後は知らないという感じさえ受ける」と憤慨する。

 旅組では「いずれにしろ県に最初に回答が来るだろう。納得できる内容でなければ、他の3県とも連絡を取り、合同で再度要求書を出すことも考えたい」と話している。

 栃木県は7日、福田富一知事名で、基準の見直しやさらなる制度の周知、説明会の開催などを求める要望書を東電栃木支店に提出。

 要望書は、(1)20%の具体的かつ明確な説明を行うとともに、速やかに所要の調査を実施し、地域の実情に応じた算定方法とする(2)損害賠償額の基礎となる逸失利益の計算に関しては3月11日から8月末での通算とせず、月単位での計算とする(3)貢献利益率で用いる業種別の平均利益率については、観光関連事業者の業態や規模が様々であることを考慮し、事業者の規模にあった細かな区分を設定する──など。

 時間がかかる場合は、「速やかに仮払いを行うこと」とし、請求手続きの簡素化も求めた。

 9月29日に要望書を出した群馬県。県が重視するのは、「20%」の問題はもちろん、基準が3月11日から8月末までの通算となっている点だ。

 県内観光業者の売り上げは、経営努力に加え、県で実施した「宿泊割引プラン」などの緊急支援策、7~9月の群馬デスティネーションキャンペーン効果もあり、5月以降は回復基調にある。通算すると、風評被害による損失分がこの回復分で相殺されてしまう恐れがあるため、賠償額の計算は月単位とすることを主張。県観光物産課は「主張が認められるまでは、こちらからアクションは起こさない」と強調する。

 
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